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「さぁ?人魚の七不思議って言われてるけど」

「ハクア!覚えた!ハンバーガー!」

「はやっ。……はい」

「わーい」


 一時間程で話せるようになった。滅茶苦茶なスピードだ。


「ハクア。この蜘蛛ちゃんって名前は?」

「無いらしいけど」

「付けてあげないの?」

「ネーミングセンスないんだよ」

「じゃあ私がつけたい!」

「付けて付けて!」


 キラキラ目を輝かせて待っている。白亜は動物番組の餌待ちのトイプードルを思い出していた。シアンとアンノウンが吹いていた。


「プリティちゃん!」

「ありえねぇ」

「それは、ちょっと……」

「ハクア!ありえねぇってなによ!」


 プリティちゃんはないだろう。流石に。


「じゃあハクアならどうするの?」

「俺だったら?そうだな……」


 暫く考える。勿論蜘蛛は期待の目で見守る。


「そのまんまでいいなら、スピン」


 オランダ語で蜘蛛だ。まんまだ。


「うん!それがいい!」

「プリティちゃんの方がいいと思うけどな」

「それはない」

「それはちょっと……」

「なんでよ!」


 結局スピンで落ち着いた。








「それじゃあ、全員一応見えるようにはなったんだな?」

「一応だけどね」

「うっすらでしかないですが」

「それでいい。元々見えにくいものだから認識さえできれば問題ない」


 白亜はアンノウンを一本にくっ付けて地面に降り下ろす。


「地脈よ、竜脈よ。我に力を。濁の力を退け清の力を」


 アンノウンの模様が美しく発光する。白亜はその状態のまま上に振り上げ、


「ブライト」


 眩い光を放つ。


「こんだけ?」

「今ここで大規模な破壊魔法放ってどうする。光らせるくらいでいいんだよ」


 ただ光るだけの魔法だった。


「やる!えっと、地脈よ、竜脈よ?あれ?なんだっけ?」

「カンペないとキツいか……?」


 上半身人間でも所詮中身は蜘蛛である。


「地脈よ、竜脈よ。我に力を。濁の力を退け清の力を」


 一番早くできたのは意外にもサラだった。


「おお。出来てるじゃん」

「やった!なんか土魔法使う時と似てるんだよね」


 白亜は魔晶属性、ラグァは火属性、レイゴットは闇属性、サラは土属性、スピンは風属性である。


 因みにスピンの属性は先程発覚した。


 次に出来たのがスピン、その次がラグァ、最後にレイゴットである。意外にも弱い順だった。


「ま、このまま頑張っていけば使えるようになるだろうしな」

「むぅ……」


 ラグァに先を越されたのがよっぽど嫌だったのか、レイゴットが面倒くさいことになっていた。








「これも違う。これも」


 白亜はうす暗い部屋で何かを周囲に投げたり集めたりし続けている。


「これも、これも」


 ぶつぶつ言いながら何かをメモ帳に書き込んでいく。


「後はあれだけ……。……もう少しだから」


 眠たそうな目を上に向け、そのままベットに潜り込んでいった。








「いたたた……」

「ハクア!?何があったの!?スピンちゃん!」

「スピン起きたときにはこうなってた」


 白亜が腹部を押さえてベットから出てこない。食あたりにでもあったのかと考えるのが普通だが、食べ物は全部出来立てである。食あたりの起こしようがない。


『マスター』

『シアン……なにこれめっちゃ痛い……』

『生理ですね』

『え?』

『おめでとうございます』

『正直全く嬉しくないしおめでたく感じられないんだけど……』


 白亜は痛み止を飲んだが効いてくるのが最低でも30分掛かるので悶絶している。


 生理痛が酷いタイプのようだ。


「ハクア。大丈夫?」

「問題はないらしい……っ!」

「ハクアァァ」


 情けない声を出すサラ。こうしていると忘れそうだがサラは齢180歳越えなのである。十分年は食っているのだ。


「ハクア君!大丈夫かい?今から検査できる?」

「なんでいまだよ……」

「そんなの、今体がどうなってるか知りたくない?」

「断る!」


 レイゴットはレイゴットだった。研究欲に忠実なやつだった。


 15分経った頃。


「あれ?さっきよりは……?効くの早くないか」


 15分やそこらで効いてくるならかなり強めの痛み止だと思うのだが、白亜が飲んだのはどこにでも売っている日本の市販薬だ。


「ハクア!大丈夫?」

「治った……って言うか一旦おさまった」


 ベットが血だらけだった。布団を被っていたので誰も気付かなかったが。


「ぅわぁ……すげぇ……」


 半ば呆然としながら浄化する白亜。もう無意識である。


「痛くない?痛くない?」

「ああ。またくるかも知れないけどな……」


 シアンに色々と教えられながら(あえて何がとは言わない)やっと部屋の外に出る白亜。


「ハクア。痛みはどうだ」

「もう大分おさまった。っていうか生理痛って恐ろしいな……ナイフで刺されるとかとはまた違った感じの……」


 スピンは比較対象が刺されることというのはどうかと思った。ラグァはあっさりと「そうか」で終わらせたが。


「毎月これは正直キツいぞ……。女子って凄い」


 因みにリンは未だである。


「ハクア君!検査しよう!」

『腹部を冷やしてはいけませんよ。今日は検査なしです』

「そんなぁ」

『当然です』


 この中で一番若いのは実はシアンなのだが、一番の常識人だ。いや、能力ではあるから人ではないのだが。


『今日は訓練止めた方がいいかもしれません』

「えー……」

『初日ですから、なれない部分も多いでしょうし。今日は一先ず安静にしましょう』

『私もそれに賛同する。今日は動かない方が得策だ』

「アンノウンまで?」


 白亜から訓練と魔法研究を抜いたらなにも残らない気がする、とポツリと言ったのはサラだった。


「そうだよ。今日は動かず様子見!はい!ベットに戻れー!」

「ちょ、わっ!」


 サラに車イスごと背中を押されながら部屋に戻っていった。


「さて。僕らは研究に入ろっか」

「はい。レイゴット様」


 二人を邪魔しては悪いと、ニヤニヤしながら去っていった。正直気持ち悪い笑みだった。スピンは白亜の後ろについていった。


「はい!おやすみ!」

「眠く無いのに寝られないんだけど……」

「寝るべき、だよ。ハクア」

「ほら。スピンちゃんもこう言ってるでしょ?寝れなくてもせめて立っちゃ駄目よ」


 白亜はむぅ。といいながらベットに座り、布団を腹部にかける。


「そう言えば……人魚って生理ないのか」

「無いわよ?排泄物がまずないし」

「え?じゃあ食べたもんどこにいってるんだ?」

「さぁ?人魚の七不思議って言われてるけど」


 精霊と同じようなものだろう。無いものは無いのだ。


「ん?……じゃあ子供ってどうやって産まれるんだ?」

「いきなり踏み入った話題ね……卵よ?」

「まさかの卵生かよ」

『メモします』


 人魚は外界とほとんど接触しない。唯一接触する種族が魔族なのだ。近いから、というだけなのだが。資料がないのでこうやってシアンがメモを取る必要がある。


「どっから?」

「どっからって……人魚はね、魔力で作るの」

「魔力?おねーちゃんもそうなの?」


 いつの間にかスピンがサラのことをおねーちゃんと言っているが、白亜は特に気づかない。気付いていても指摘しないと思うが。


「そうだよー。男と女で各々魔力を毎日毎日じっくり溜めていくの」

「へ、へー……」


 今返事したのは白亜だ。


「それだったら子供作り放題じゃないか」

「それはないわよ。魔力総量が余程多くないと。それに、一人作るだけで魔力総量が幾らか減るらしいわよ」


 子供を作れば作るほど弱体化してしまうわけだ。


「そうなのか。スピンは?」

「んー、わかんない!」

「まぁ、虫の一種なら卵だろうな」

「そういえば……スピンちゃんから出てきたあの子蜘蛛ちゃん、どこ行ったんだろうね?」

「あったことないからわかんなーい」


 その後も暫く話し続ける三人。


「……暇だな。それにしても」

「仕方無いわよ」

「そうなのー?」


 白亜はふと、暇潰しの方法を思い付いた。といっても、いつものやつなのだが。

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