初めての王都へ!
白亜は魔眼のページを開く。白亜の左目、つまり緑色の魔眼の説明があった。
ーーー暗視・明視・遠視・透視眼ーーー
・緑色の魔眼で極めて珍しい
・幾つもの魔眼の性質を持ち合わせているので最上位の魔眼と呼ばれている
・普段は魔眼の力は発揮されないが魔力を通すことで使うことができる
・最も便利だが、使い心地はあまりよくはない
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「使い心地はあまりよくはないって‥‥‥」
白亜は作った椅子の上で呟く。
「まぁ、チカオラートがくれたんだし使えるようにならなきゃな‥‥‥‥宝の持ち腐れは嫌だし」
魔眼は普通常時発動だ。ただ、遠視などが常時発動だと片方の魔眼ではない目との情報の照らし合わせができなくなり、精神が狂う場合があるので普通は眼帯を嵌める。
白亜の場合、珍しく複数の能力が付いている魔眼なので常時発動しない。練習が必要なのだ。
「魔力か‥‥‥左目に流してみるか」
左目に徐々に魔力を流していく。
「お?」
段々視界が広がっていき、遠くを見渡せる。それどころか、太陽を直視しても目が痛くならない。もっと流すとその状態から見えていた家々の様子が丸見えになる。
「すげぇ!お、あそこは‥‥‥‥見なかったことにしよう」
白亜はとんでもないスピードで魔眼をコントロール出来るようになった。
「次ぎは問題の右目だな」
ページを捲っていく。魔眼のページの最後まできた。右目の情報は、なかった。
「どうなってる?」
赤い目も調べても無い上に、本来白いはずの部分が黒く染まっている現象も載っていなかった。
「新種ってことなのかな」
原因不明ではあるが、白亜はこの際気にしないことに決めたらしい。
「早速使ってみればわかるか」
少しずつ魔力を流していく。
「‥‥‥‥‥これは」
そこには、大量の情報が示されていた。この椅子が何でできているか、この木はなんという名前なのか、そんな情報がびっしり書いてある。
白亜が気になっていたのはそれではない。この目には幾つか能力がありそうだとはじめから踏んでいた白亜はその辺りは気にしていない。
「これに名前をつけるなら、動視・情報視・魔法視かな。まだまだありそうだ」
「一番怖いのは、魔法視と動視かな」
ーーーー魔法視ーーーーー
・魔法がどんなものか見破ることが可能
・また、その魔法の反対魔法が詠唱つきで表示される
・どんな魔眼封じにも有効
・魔法陣の場合、何処をどう書き換えればいいのか表示される。これは、使用者の意思に左右される
ーーーー動視ーーーー
・相手の動きがまるで止まっている様に見える
・相手の武器の弱点を表示
・相手の格闘の弱点を表示
・相手を威圧し戦闘不能に持ち込むことも可能(ただし、格下の者に限る)
・どんな魔眼封じにも有効
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因みにこの説明文は情報視によるものである。
「右目だけ、どんな魔封じにも有効ってあるな‥‥‥黒い部分がそうなのか?」
ーーーー黒曜眼ーーーー
・どんな魔眼封じにも有効
・この魔眼は普通の魔眼とは違い、本来白いはずの部分が黒く染まる
・魔眼封じ可能
・魔眼全能力アップ
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・現在この魔眼を持っているのは『揮卿台・白亜』のみ
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「俺の名前出てるし‥‥‥」
とにかく便利ではあったのでほっとする白亜。
「この*****ってなんだろう?」
数秒考え、
「まぁ、いいか。お風呂入ろ」
相変わらずの自由人である。
「ハクア。こっちよ」
「す、少し待ってください。迷子になりそうです」
あれから二年後、春。いよいよ王様への謁見の日だ。
「ここに通うのよ」
「大きいですね‥‥‥」
白亜は相変わらず目が死んでいる。が、言葉遣いは何とかしようと両親が頑張ったお陰で今では普段から敬語である。
「さ、行きましょう」
「はい」
「おい、置いてくなよ」
少し遅れて父親が走ってくる。
「はい、通行証。これがないと入れないからな」
「ありがとうございます」
「あら、ありがとう」
母親はかなり楽観的らしい。
「それじゃ、粗相の無いようにな」
「判ってますよ。そんなミスは犯さないつもりですので」
城の城門へ向かう三人。因みに、白亜は女らしい行動などにいまだに抵抗があり、髪も男子並みのベリーショートだし、服装もメンズだ。それと、目立ちすぎる右目を隠すため、右の前髪は顔が半分隠れる位まで髪が伸びている。両親は気にしていないが。
「通行証を」
門兵に言われたので両親は直ぐに通行証を取り出そうとするが、白亜は動かない。
「ハクア。通行証を出さないと」
「はい。でも‥‥‥この人、門兵でしょうか?」
「え?どういうこと?」
「転職なされたんですか、山賊さん?」
門兵の顔がみて判るほどに驚愕の色に染まり、逃げ出そうとする。が
「‥‥‥させませんよ?」
白亜が行く手を阻む。
「ハクア!危ないわよ!逃げなさい!」
母親が叫ぶが白亜は聞く耳を持たない。
「さぁ。素直にお縄にかかりましょう?」
白亜の赤い目が光を帯びる。
「グッ‥‥‥!」
そんな声を発したと思ったら、山賊は腰の剣を地面におき、座り込んでしまった。
「ハクア!なんて無茶するの!この人が切る気満々だったらあなた今ごろ真っ二つよ!?」
「まぁまぁ。無事だったんだし」
怒る母親を父親が宥める。
「‥‥‥ごめんなさい。つい‥‥‥」
素直に謝る白亜。すると、城から本物の門兵が何人か出てきた。
「すみません。この方なのですが‥‥‥」
「ああ、判っている。協力、感謝する」
「それと、これをお願いします」
「む、客人だったか。すまない」
「いえいえ。こちらも無傷、あちらも無傷ですから」
白亜は三人分の許可を取り、両親の元へ戻る。
「すみません。出すぎた真似を‥‥‥」
「今回のは奇跡みたいなものだからね。絶対にもうあんなことはしないこと。いいね?」
「はい。少なくともあんなことはもうしません」
と、いうか白亜は威圧を発動しただけである。人に使ったことがないのでぶっつけ本番ではあったが。
「こちらだ」
先程の門兵に案内されながら謁見の間へ進む。
「「「「‥‥‥‥‥‥」」」」
全員無言だ。あんなことがあったからこそ話すに話せない状況が出来てしまっている。
「せ、説得力が無いかもしれんが、王都は中々治安のいい街でな。腕っぷしの強い奴が集まるんだ。治安維持のためにね」
あんなことがあったので本当に説得力皆無だが、ここに来るまでにそれっぽい人がさっきの山賊くらいなので本当に治安がいいのだろう。
「解っていますよ。あの人が偶々そうだったってだけだって皆解かってますので」
フォローを入れる辺り、空気が読めるようになったのだろう。微妙に。
「ここが謁見の間だ」
通行証等を確認されて謁見の間に入る。そこは一言で言えば、豪華な部屋だ。一定の間隔でガラスケースが並んでおり、その中には大粒の宝石や時計などが入っている。宝石店のショーケースに見えないこともない。奥には国王らしき人物が座っている。国王なのに未だとんでもなく若い。18歳位だろうか。国王というより王子と言った方が正しく思える。
中央まで進み、大きく頭を下げる。
「面をあげよ」
そう言われたので顔を上げる。
「名を申せ」
「白亜と申します」
「ハクア‥‥‥そなた、先程山賊を捕らえておったな?」
「私の力ではございません。偶然あの山賊が逃げるのを止めただけの事でございます」
「そうか。それならよい」
あながち間違っていない。白亜は、威圧を使って逃げるのを止めるように思わせただけだし、白亜の力というより目の力と言った方が正しいからだ。
「では、私と模擬戦をしろ」
「‥‥‥はい?」