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「丁重にお断りさせて頂きます」

玄武(スターリ)さん。さっきの人は?」

「ジュード・フェル・リグラート。主の、弟子」

「弟子いたんだ」

「ん。中々強い。ハーフエルフ」

「「「うっそ!」」」


 ハーフエルフという単語に反応する日本組。


「エルフって、あの、森に住んでて耳が長くて魔法が上手いっていう………あれ?白亜さんじゃん」


 ガッツリ白亜の説明みたいになった。


「エルフ、耳普通。魔法は巧い。長寿」

「どれくらいなんですか?」

「1000歳まで」

「すげー!」


 ファンタジー談義しながらサロンへ。サロンとは食堂の前に集まったりする場で、要は食事前にダラダラするところである。


「ひろーい!」

「おお、すっげぇ」


 日本組が感動しているなか、配下組は椅子に座って行儀よく待っていた。意外とこう言うことは確りしているようだ。


「ダイさん!」


 バン!と音をたてて扉を開け、少女がダイに抱き着く。


「あ、可愛い……」


 日本組の誰かがそんなことを呟いたが近くにいた徒手空拳をレイス(ウラノス)から習っていた女子が一発腹パンを喰らわせた。余りの痛さに悶絶していたが、割りといつもの事なので誰も気に止めなかった。


「ダイ!」


 再び誰かが入ってきた。精霊。日本組はパッと見てそれを直ぐに考えた。


「ハクアは!ハクアはどうした!」

「ハクア様は!」

「ルナ、キキョウ。それについてはジュードが来たら話す」


 なんとか精霊の二人を宥め、ジュードが来るのを待つ。






「お待たせしました。全員集まっていますね」

「超格好いい………」


 男子がリンを可愛いと言うと成敗されるのに女子がジュードを格好いいと言ってもスルーされるだけという差別。


「ダイさん。あの後の事を詳しくお願いします」

「うむ。あの後白亜を連れて逃げたのだが――――」


 一通り事情を話したダイ。


「………そうでしたか」

「ハクア君が負けるなんて……」


 心なしかリンの手にあるサクラちゃんも元気がないように見える。


「ジュード。そちらはこの一ヶ月何をしていた?」

「はい。その事なのですが、これをご覧ください」


 何枚か薄い紙が束になったものがダイに手渡される。新聞の切り抜きを纏めたもののようだ。


「うむ?――――何だと!?」


 ドスの効いた声で叫ぶように言うダイ。


「白亜が魔王の手先!?人間はそんな事を広めて何がしたいんだ!」

「ちょ、落ち着いてください!」


 リンがダイを宥めている間に配下組が新聞を見る。


「……殺す」

「だ、駄目ですよ!玄武(スターリ)!そんなことしたら一発でお尋ね者です!」

「構わない。主侮辱した罪、その場で償わせる」

「駄目ですって!そんなことしたら若様の立場がもっと危うくなります!」


 何とか冷静に判断できるものが実力行使しようとする人を宥め、なんとか事なきを得た。


「これって、なんでこうなっているのでしょうか?」

「私が調べました。勇者の立場を崩すことが出来ないという考えからハクア様に全ての罪を擦り付ける様ですね」

「………なんてこと」


 ざわざわと配下組がざわめきだす。


「でもよぉ、若旦那も一流の冒険者だろぉ?冒険者ギルドにも影響はなかったのか?」

「あったの。これは妾が集めた物だが、ハクアの冒険者権利を剥奪しようと何人かの教会上位者が動いた。止められたものの、もし実行していたらと思うと恐ろしくて夜も眠れぬ」


 何人かの名前と顔写真が貼られた書類だ。


「それと、協力者も居たんです」

「協力者?」

「ハクアファンクラブの方々です。ハクア様はそんなことしないと、いい噂を流し続けてくれているようで」


 こんなところで白亜のイケメンが役に立った。


「それで、今はジュード様の精霊なので………ハクア様に会ったらその場でまた契約するつもりです」


 白亜が突然戦場でジュードにしたキスは、実は契約精霊を引き渡す為の物だった。


 事情を知っていなければかなり突然の驚き行為だろう。現在ルナ、キキョウの二人はジュードと仮契約していて、白亜と会ったら自動的に解除、白亜と再契約という事になる。


「そうか。では、我々も動くことに致しましょう」

「そうだな。俺は海上を重点的に捜そう」

「ええ。若様の居場所を捜すのが先決ですね。私は小さな島を」


 白亜配下組はかなりの結束力で誰がどこを探すか直ぐに決まった。


「僕達はどうすれば……?」


 完全に忘れられていた日本組だった。







「やはり家は必要ですね。買ってきます」

「「「え?」」」


 朱雀カーロが出ていって数時間後。


「買ってきました」

「うっそ」


 契約書のようなものを持って帰ってきた朱雀カーロ。事務的なことを任せるならその才能はピカイチである。


「豪邸!」

「これいくらですか……?」


「68万エッタです」


「68万円?」

「違うわよ。1エッタは100円でしょ?」

「ってことは……」

「「「6800万円!?!?!?」」」


 それなりのお値段だった。


「高い!って言うかその金何処から!?」

「若様から預かっていました。100万エッタです」


 100万エッタ、1億円である。


「金持ちなのか……?」

「100万エッタの支度金です。これで32万エッタです。これを当面の生活費に当てましょう」

「は、はい」


 白亜はこのお金で支度し、後は自分で稼がせろ、と言ったそうだ。相変わらずの放任主義である。いや、面倒くさがりやなだけだろうが。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「ハクア君。これでいいかな?」

「ああ、これだけあればそれなりに見付かるだろうし」


 白亜は研究室で大量の本を同時に読みながら何かをノートに書き進めていく。


 日本語がたまに混じるそれは、常人には理解しがたい計算式や文字がノートを黒く染め上げていた。


「いや、まさか遺跡に解き方があったなんてね……」


 レイゴットは目から鱗だったらしく白亜のペンの動きを見続けている。


「多分お前には解けないぞ、レイゴット」

「だろうね!全然わかんないもん!」


 あははっと軽快に笑うレイゴット。


「っと。?」

「どうしたの?」

「計算が合わない………何処かでミスったか、解き方が違うのか」

「僕には判んないや」


 もう全部丸投げのレイゴットだった。







「ハクア君。もうこんな時間だよ」

「そうだな」

「寝ないの?」

「キリの良いところまでやる」


 猛烈なスピードでノートが黒く染まっていく。よく手がつらないものだ。


「魔法は計算か……考えたことなかったな」

「計算をしなくても撃てるならそっちの方が楽だろ」

「それでも結構アバウトだよ。こんな感じかな、って撃つだけだしね」


 白亜は四枚の羽で器用に本を捲ったり別の資料を取ったりしている。便利そうだ。


「ふーん………。俺には関係ないけどな」

「関係あるよ。君はもう僕の家族なんだから」


 白亜の手がピタリと止まった。


「どうしたの?嬉しかった?」

「丁重にお断りさせて頂きます」

「酷い!」


 口調は堅かったが白亜のノートに向かう顔にはほんの少し、緊張が抜けていた。








「痛………」


 次の日の朝、耳を噛まれる痛みに起こされる白亜。赤い蜘蛛が耳をまた噛んでいた。


「もうこれ病的なものなのかよ……?」


 耳を浄化し、蜘蛛を引き剥がして文字通り羽を伸ばす。


「はぁ、面倒だな…………」


 言葉とは裏腹に死んでいる目にはうっすらと光が見えていた。

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