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無気力超能力者の転生即興曲  作者: 龍木 光
白亜という英雄
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白亜という英雄の言葉だそうです!

エピローグ的なものです。

ーーーーーーーーーーーー


 これを読んでいる人へ。と言うか、多分いつもの二人。


 俺は、多分もう死んでいる。亜人戦闘機ノン・ストッパーに喧嘩売りにいったんだ。実力はそんなに差がないけど、消耗戦で殺られると思う。


 最悪、自爆する。


 二人には話してなかったね。俺の親が何で死んだのか。


 小学生の時にな、俺の家族は亜人戦闘機ノン・ストッパーに殺られてるんだよ。


 この力を手に入れたときもその時だ。


 正直、死にたかった。何で俺だけが堂々と生き残ってんだよって、そればっかり考えていた。


 そのうち、俺のことを信じてくれない大人やいじめてくる子供に失望した。


 そんなときに楽器をやり始めたんだ。


 俺が楽器を弾くのはただの現実逃避なんだ。もう、何も考えたくなかった。楽器を演奏しているときだけは何も考えなくても好きに生きていける、そう思えた。


 楽器をやり始めた時に一緒に格闘技もやった。


 金は、絵で稼いだ。たまに、道端で演奏したりもしたけど。


 格闘技をやったのは言わなくてもわかると思うけど、あいつらに復讐するため。どんな格闘技が効くのか分からなかったから兎に角片っ端からやった。


 気弾も使えるように練習した。フェンスをぶち抜いちゃったのはいい思いでかな。


 こんな感じだよ。俺の事は。


 俺は君達に感謝している。あのまま大学でただ楽器弾いて時間を潰しているより、確実に良かったと今なら言える。


 俺は、いつか奴等を殺しにいこうとは決めていたけど、俺以外に気弾をつくることのできる人間は居なさそうだからね。


 後継者が出来て良かった。


 ここからが本題だ。俺が死んだら毎年、ある一定確率で気力持ちの子供が産まれてくるように力を放出させる。自爆をするのもこの気力を遠くまで飛ばすためだ。


 ああ、日本にしか効果は無いから安心してくれ。日本国籍の人が対象だ。国籍を変えると気力は消えて二度と戻らなくなるからその辺りも。


 兎に角、俺の願いはその子供たちに気力の使い方を教えてやってくれ。学校を作って。


 金なら俺の貯金を使ってくれ。今まで貯め続けてたからそれなりに残ってると思う。後で確認してくれ。


 それと、この力を嫌がる子が居たら、力を消してやってくれ。二度と戻らなくなるが、その子の意志を第一に考えてやってくれ。消し方はこの金庫の奥の隠し扉に入ってある冊子に書いてあるから。


 それと、二人がよければ冊子にかいてある住所の場所に行ってくれ。


 俺の遺産みたいなものがあるから。土地は一応俺名義だから問題ない。


 最後に。今までありがとう。


 俺は多分死んでるけどこの20年で一番楽しかった。


 どうか、俺の


ーーーーーーーーーーーーーーーー



 そこから先は、なぜか書かれていなかった。


「あいつ‥‥‥‥!勝手なことを」

「こんな風に思っていたんですね。関心が全くないように見えましたが」

「あいつなりの優しさだろう」

「多分そうですね」


 二人は何故か書いていない一番最後の手紙の行を指で優しくなぞる。


「消されたって訳では無さそうだな」

「白亜なりのヒントなんでしょうか」

「兎に角、この住所に行くぞ」

「了解です。それにしてもここ、長野の山中ですね」

「遺産って‥‥‥まだ死んだとは解ってねえぞ!」

「ひょっこり帰ってくる気がしますけどね」


 そんなことを言いながら二人は出掛ける準備をする。


 白亜の手紙と隠し扉にあった冊子を握りしめて。二人の目には涙が流れていた。





「ここか‥‥‥」

「ここに入っていくんですよね‥‥‥」


 鬱蒼と繁る森の中を二人は度々転びながら登っていく。険しい山道。救いなのは雨などが降っていないことだ。こんな中で降っていたら鉄砲水の被害も有り得るだろう。


 彼らは黙々と山を登っていく。あまり疲れた様子がないのは白亜のスパルタに慣れて体が強くなったからだろう。


「ここ‥‥‥ですかね」


 そこには、断崖絶壁が広がっていた。


「まさか、登れってか?」

「いや、でもここの崖の上って白亜の土地じゃないですよ?」

「だとしたら、あの辺りか」


 そこにはチョロチョロと流れる滝があった。滝と言うよりただ水が流れっぱなしの水道位の水しか出ていないが。


「此処から湧いてるんですかね?」

「ん?なあ、見てみろ‼」

「え、何もないですよ?」

「気力を使ってみてみろ‼」


 気力を使うと動体視力や目そのものが良くなる。眼鏡だった警察官が8まで視力が上がるほど。それと、気力の流れも見えるようになる。基本的に訓練にしか使えないが。


「ああああ!ここ‼光ってます‼」


 二人は気力を使い、白亜の残したと思われるマークを見つけた。白亜が彫刻品を作るときに使う紋章が付いている。


「ここに、気力流してみます?」

「流すぞ」


 先輩警察官は戸惑うことなく気力を流す。周囲に人が居ないのは確認済みだ。


 気力を流すにつれて何処からか音がしてくる。


 ズズズズズズ‥‥‥‥


 と音が鳴って隠し階段が出てきた。見た目だけでは絶対に判らない仕掛け。


「白亜らしい秘密基地だな」

「確かに」


 二人は階段を降りていく。降りるにつれて階段の入り口が閉まっていく。


「自動ドアだな」

「ドアって言うかなんていうか‥‥‥」


 ピピ‥‥‥と電子音がなり、真っ暗だった周囲に明かりがつく。


『侵入者ですか?』

「わ!」


 突然横の壁から女性が出てきた。


『侵入者確認。直ちにはいじょーーーー』

「「侵入者じゃないから‼」」


 息の合ったツッコミをいれる二人。


「俺たちは白亜にここに来てくれと言われて来たんだ」

『少々お待ちを‥‥‥‥ああ、失礼いたしました。そんな命令が出ていたようです』


 何て適当なんだと二人の考えがシンクロした。


『申し訳ございませんでした。改めて。ここは白亜様の隠れ家でございます。貴殿方にも使う権利があります。これからよろしくお願いいたします』


「ここが、隠れ家‥‥‥君は?」

『私は18988番。ヒカリとお呼びください』

「18988番‥‥‥?」

『はい。私の製造番号でございます』

「「製造番号!?」」


『白亜様に作られたしがないアンドロイドです』


 白亜はアンドロイドまで作っていたらしい。


「どんだけ博識なんだよ‥‥‥‥人工知能まで作りやがった」


 先輩警察官の呟きは正しい反応だろう。


『貴殿方がここに来られたということは‥‥‥‥白亜様』


 機械なのに涙を流す。と言うか、まず機械なのに息をしている。


「泣けるの!?」

『私は人間に限りなく近いので』

「近くないのも?」

『いますよ。戦闘兵器だってありますし。全部自我がありますが』


 なんで?と言う顔をする二人にヒカリが説明する。


『悪意をもった者が使えば地球が確実に滅びますので』

「「どんなもん作ってんだよ‼」」




『さて、貴殿方に遺産をお渡しします。といってもこの家全部です』

「「全部!?」」

『管理は私を含めたアンドロイドでいたしますので特にやることは増えないと思います』


 良かったと心から思う二人。もう白亜が死んだ事など忘れているようである。いや、なるべく考えないようにしているといった方が正しいだろう。たまにどちらからともなく目を伏せる。


『しかし、テストにクリアできたら、です』

「なんかあるんですか‥‥‥」

『難しくはありません。問題は、白亜様の最後の言葉(・・・・・)です』

「最後の言葉‥‥‥手紙のか?」

『残念ながらヒントは無しです。こちらからお選びください』


 植木バチに花がそれぞれ何本か刺さっている。


「花?」

「いきなりメルヘンになったな」


 そう言いながらもスマホを取りだしてなんの花なのか調べ始める二人。


「花言葉ですかね」

「多分な。判るやつあるか?」


 二人は判る花を別の場所にまとめ始める。


「赤いバラは愛。定番ですよね」

「クローバーは幸運だな」


 わけていく二人を見つめるヒカリ。その顔には機械らしくない優しい笑みが浮かんでいた。


『いいご友人に出会えたようで何よりです。白亜様』


 誰にも聞こえないくらいの声で呟くヒカリ。その顔はまるで子を心配する母親のようだった。




「これで判るのは分けましたね。判んないやつを徹底的に見ていきましょう」


 二人はスマホを片手に目の前の草花を調べるのに必死だ。なんとなく微笑ましい様子である。


「ヒヤシンス‥‥‥遊び。違うなぁ」

「アサガオ‥‥‥はかない恋。無いな」


「全然わからねえ」

「隠し方が巧妙なんですよきっと」


 二人がここに入ってからゆうに三時間は経っている。


「疲れた‥‥‥」

「これ、見つかるんでしょうか」


 二人がだいぶ疲れてきたようだ。


『食事がありますが、いかがですか?』

「食事?」

「食べたいです!」

『畏まりました。ご用意いたします』



「うっめえええぇぇ」

「こんなに旨いとは」

『恐縮です』


 ヒカリの料理に舌鼓をうつ二人。完全に目的を見失なっている。


「探してもわかんねぇ」

「あああああ!!!!これ!違いますか!?」

「勿忘草?ああ!確かに文面に合う」


 勿忘草。花言葉は、私を忘れないで。

 あまりにメジャーだったので気づかなかったようだ。


『正解でございます』

「なんか以外と簡単だったような」

「疲れましたね‥‥‥」


 かなり分かりやすいヒントを白亜が残したのにも拘わらず全く気づかない二人もある意味凄い。


『此方です』


 ヒカリは奥へ二人を案内する。


「こんなところになにが‥‥‥?」

「兵器とかだったら扱いに困るな」

『全て人工知能が搭載されておりますので大丈夫かと』


「「怖すぎだろ‥‥‥」」


 ヒカリが扉を開ける。


「すげえ‥‥‥」

「こんなにあったなんて‥‥‥‥」


 白亜の彫刻類や気力について書かれた書類、亜人戦闘機ノン・ストッパーについて書かれた書類や模型等が大量に並んでいる。


『この施設はもう貴殿方の物です。ですが、悪用されないよう、我々が管理しますので、悪しからず』


 ここにあるものを全て持ち出し使ったなら滅びるのは地球所ではないだろう。


「これは?」

『それは気力持ちか確かめる道具です。大量にありますので全ての市区町村に配ってください』


「あー。たしか一定確率で気力持ちの子供が産まれてくるんだっけ?」

『はい。三年後からです』

「準備期間を作るのも白亜らしい」




「白亜がなんで突然魔獣の王を倒しに行こうとしたか分かりますか?」

『はい。昔から仰っておりました。20歳になったら復讐すると』

「白亜って19じゃなかったっけ?」


『今日が、20歳の誕生日なのです』


「うっそ!知ってました?」

「初耳だ」

『白亜様は気にしないお方ですので。その辺りは』





「それじゃあまたくるよ」

「さよなら!」

『くれぐれも道に迷わないようお気を付け下さい』



 各々思うことはあったが二人は一旦帰ることにした。白亜の死は未だ伝わっていない。

 因みにここにいる三人は既に白亜の死を受け入れている。


 手紙に書いてあった言葉、書けなかった言葉をしっかりと理解し受け入れた。


「これから、忙しくなりますね」

「だな。学校作りなんて面倒なことを押し付けやがって、白亜め」


 二人の顔は晴れ晴れとしていた。不謹慎ではない。それが、白亜の願いだと言うことは白亜を知っている者ならば誰しもが納得がいくであろう。


「さて。報告書書きますか!」







ーーーーーー俺が一番嫌いなのは人を嫌う心だ。人を助けたいと思うなら、まず人を好きになれ。心は行動に出る。世の中に失望しても、人を好む心だけは絶対に忘れるなーーーーーー

ーー揮卿台白亜ーー


10月31日生まれ10月31日死去(20)


 首席で名門音楽大学に入学。2年の時に亜人戦闘機対策部隊に入るため、大学を中退。その後、亜人戦闘機対策実行部隊を作り、僅か3ヶ月で一人前に育て上げた。20歳の誕生日の日、両親の敵討ちに向かい、自爆により死亡。


 彼の作った彫刻品や絵画などは高値で取引され、マニアのなかでも特に騒がれているのは彼が実際に使った車椅子。オークションに出された場合、数十億の値が付くとも言われている。


 彼の死後、彼の遺言から警察が主体となり私立小学、中学、高等学校が1つになった、気力持ちの子供のみが通える学校を設立。


 彼の残したアンドロイドや破壊兵器などもあるが、全てに自我があるようプログラムされているので誰も使えないとされている。


 彼の作曲した曲は200曲におよび、現在もなお親しまれている。

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