「未来―――破滅」
「話を聞かせて貰いますよ!」
「今仕事中なので後にして貰っていいですか?」
「よくありませんよ!」
巫女をほぼ無視してジュード達と連絡を取る白亜。
「そっちは?」
「はい。同じです」
「リン」
「こっちもだよー」
「ダイ」
「全く同じだな」
「ルナ」
「以下同文」
神託はリュウホウという人が勇者になるという物だった。これは全てのところで確認済み。報告をするために白亜は一旦ギルドへ向かう。
「あの!」
「仕事終わってからにしてくれます?」
「逃げない保証が無いじゃないですか!」
「じゃあキキョウと一緒に居てください。後でどうせ戻って来ますので」
報告は絶対だ。そんなことに時間を割かれたくないという白亜の考えは至極真面目だ。真面目すぎる。
さっさとギルドへ行き、情報を全部伝える。
「それだけか?」
「此方が確認している分は。別のところで何かあったとかは把握しきれませんので」
「そうか。明日また来てくれ」
「はい」
白亜なら信頼できる。そんな噂が流れつつあった。簡単に言えば白亜は天然過ぎるあまり嘘がつけない。とぼけるのは上手いが。
「聞かせてもらいます!」
「はい、どうぞ」
「チカオラート様とはどういう関係なんですか!」
「なんでそんなこと聞くんです?」
「貴方が変な部屋でチカオラート様とお話ししていたのを聞いていたからです」
「ふーん。で?」
確かに、で?と言いたくなる。だからなんだって話だ。
「神様の使徒は教会に勤めるべきです」
「何言ってんの?」
「神様の使徒でしょう?」
「なんで?」
「は?」
「ん?」
妙に話が噛み合わない。
「チカオラート様とお話しできるのはその使徒だけです」
「そんな人いるの?」
「過去に何人かいます。全員教会に入っていますが」
「ふーん」
『どうする?』
『この感じだと一部始終見られていた可能性が高いですね。妙に探られるよりかは今ここでお話しした方がいいかと』
『やっぱり?まぁ、いいか』
「んー。誰にも言わない?」
「い、言いません」
「そう。じゃあ言うけど俺使徒じゃないから」
「なんでですか?」
「俺あの人の言葉に従うつもり一切ない。暇がなくて此方にも利益がない場合無視する」
巫女、唖然。
「そう言うわけだから俺関係ない。判った?」
「判りません!なんでお話しできるんですか!」
「此方から話しかけてる訳じゃないし。あっちが気まぐれで話しかけてくるだけだし」
「そ、そうかもしれないけど!」
「だったら、何?」
「か、神様のお声を皆に届けるお仕事をした方がいいと思います!」
白亜はほんの少し巫女に目を向ける。目は死んでいるが。
「俺信仰とかしてないし。正直に言ってあの人苦手だし」
「なんとおそれ多い……」
「俺は面倒事なんてごめんだ。そう言うわけだから」
白亜は巫女の頭に触れる。
「ちょっと面倒なことになりかねないんで弄らせてもらうよ」
「!?!?!」
白亜はそのままそこから立ち去る。顔を真っ赤にした巫女を置き去りにして。
「ハクア様。大丈夫でしたか?」
「うん。ちょっと弄ってきた」
「またですか?あんまりやると御体に負担がかかりますよ?」
「大丈夫。これぐらいならちょっとダルいくらいだから」
白銀の髪が月の光を反射してより一層幻想的な色合いになる。
「勇者も決まったし、俺達は暫く適当に過ごせば良いんだよ」
「そうでしょうか」
「あんまり良い結果出ないけどね」
懐中時計を振る。かなり使っているのに新品同様の美しさだ。白亜の魔法が聞いている証拠だ。
「当面は大丈夫かもしれないけど、そこから先がどうとも言えないかなぁ」
ピアスの真珠石が白く光る。
「なにか来たらすぐに対応できるようにしないとな」
「そうですね。はい、皆さんのところへ戻りますよ」
「はいはい」
路地裏に入った瞬間、白亜達の姿が消えた。
「ただいまー」
「お帰りなさい」
リン達が待っている部屋へ到着。実は、冒険者になってお金もたまったので家を借りようという話が出たのだが、それなら家にすめば良いと国王が城の各部屋を貸してくれている。
シェアハウスみたいな感じだ。ただそれだと悪いので家賃はちゃんと納めている。白亜らしい。
「師匠。僕師匠が勇者になるのかと思っていました」
「ん?本当はそうだったらしいよ?」
「え?」
「嫌だって言ったらじゃあ良いけどって」
「あ、そんな感じなんですねー」
喧嘩ばかりしている幼馴染みみたいな雰囲気ではある。
「それでさ、俺達に護衛依頼が来ているっぽいんだ」
「護衛?」
「これ見てみろ」
白亜が取り出した紙を皆が覗き込む。
「公爵家のお嬢様ですか」
「ジュード知ってる?」
「噂だけなら。なんでも変わり者らしくて冒険者だとか騎士だとかに憧れているんだそうで。魔法の腕は10歳ながら上級を使うことが可能だとか」
「あれ?リンもそんな感じじゃなかったっけ?」
全員の視線がリンに向く。
「これでも私ニンフのなかでは結構期待されてたんだからね」
「そうだったんだ」
「師匠は論外ですけどねー」
論外というより規格外だ。
「公爵家と王族の方の関係は?」
「良好ですね。敵対もしていませんし」
「受ける?止めとく?」
「某は構わぬぞ」
「妾も問題なく」
「僕も大丈夫だと思います」
「私も良いよ」
「チコも!」
「ハクア様に任せます」
ほぼ全員受ける、と言う結論を出した。
「そっか。じゃあこれ受けよう。明日ギルドに持ってくな」
護衛依頼。白亜達はこの手の依頼が指名されることも少なくない。腕がたつと言われていればいるほど増えるものだ。
「指名依頼また来たんだって?」
「護衛依頼ですけどね」
「【象徴】の噂はスッゴいことになってるもんな」
「あれ本当勘弁してほしいんですけど」
「俺に言うなよ。おっと。これ昨日の依頼報酬な。次も頼むぜ」
「貴方に買われると安いから嫌ですよ」
「ふふーん。これぞ人脈だよ」
アシルさんと世間話をかわし、ジュード達のもとへ戻る白亜。
「師匠。そう言えば公爵家の護衛依頼っていつからでしたか?」
「えーっと。明後日だな」
「そうですか………明後日!?」
「急すぎるぞ、これは」
今頃気付いた白亜達。
「まだ申請してないけど?」
「どうします?でもどうせ明日だろうが明後日だろうが問題ないんですよね」
「ぶっちゃけな。皆。受ける方向で良いか?」
「「「はい」」」
次の日。武器の手入れ等を済ませるためにお休みになった。白亜も部屋で村雨などの手入れをする。手入れしなくて良い刀を手入れする必要があるのか。
勿論旅の準備もする。護衛の旅は人に見られると困るので創造者は使えない。なので物は鞄に詰めて持ち歩く必要がある。
懐中時計はかなり高価なものなのであまり人前には出さない。ギルドでは有名になってしまっているので心置きなく使っているが。
懐中時計を磨く。殆ど汚れていないが、これは白亜の癖だ。
「風は、南西。魔力の流れ、東……」
磨き終わった懐中時計についているツマミをくるくる回す。
「未来ーーー破滅」
これは占いの様なものだ。簡単に言えば未来を予測する。これは古代技術なので肌身離さず持っている懐中時計にこの機能をくっ付けた。正直要らないがあれば大分気がまぎらわせられるらしい。
タロットカードなんかにも良く似ていて言葉で運勢なんかを判断する。
出た言葉は、破滅。何がどう破滅なのか判らないし、破滅でも何でもないかもしれない。簡単に言えば、破滅と言う言葉は、白亜にとっては悪運。
白亜の悪運が何か仕出かす危険がある。
「まぁ、占いだから大丈夫だよな」
その占い結果を一番気にしている人が何をいっている。




