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「頼んだ。素性がわかれば、あとはこちらで何とか調べよう」

 ヴォルカのパーティでの役割では罠の発見や解除、地形の把握などが主なものだ。


 それ故に白亜が魔法を使って一瞬でマッピングされたのを見た時は、かなり落ち込んでいた。ただでさえ戦闘はあまり得意ではないのに、唯一の特技を魔法一つでサラッと再現されてしまったのだから、立場が無い。


 あまりの落ち込みように、流石に人の感情に疎い白亜でも気がついてその時ばかりは白亜も申し訳なさそうな声になった。


 だが、白亜の魔法では分からないことがある。それが『罠を張ったものの意思を読む』ことだ。


 魔法ではあくまでも『ここにある』という事しかわからないので、それが自然に出来たものなのか、誰かが悪意を持って作ったものなのかの判別はつかないのである。


 ヴォルカの場合は『自分ならどこに罠を仕掛けるか』という所から考えて感覚的に罠を見つけていくやり方なので、その技術は自身の経験から得ている。その技術の一つには視線を感じる力がかなり高いというものがあり、周りの環境を肌で感じ取る能力は傭兵団の誰よりも優れていた。


「……俺ら、気付かれとらんみたいや。あんま警戒心なさそうやわ」


 依頼の貼られているボードを見ながら、真後ろの人物の様子を探るという器用なことをやってのけるヴォルカにダイはかなり感心した。白亜は魔眼で似たようなことができるが、なんのアクションも起こさず自然に周囲を把握することはできない。白亜の場合はほとんど全ての能力を魔力で動かしているので、魔力がなければ大半の知覚能力が下がることになる。


 魔力などを一切使うことなく、自分の感覚だけで同じことをやってのけられる人間などヴォルカ以外に居ないだろうと思えるほどに、特殊な力なのだ。


「よし、声をかけるぞ」

「ちょ、ちょっと待って。なんて言って声かけるんや」

「………考えていなかった。だが、ハクアの街に行ったことがあるかを聞こうかと」

「それじゃあ警戒されるだけやん。……俺に任してくれん?」


 ヴォルカは何か考えがあるらしい。ダイは交渉が得意な方ではないので、可能であればヴォルカに任せたいとは勝手ながら思っていたのではあるが。ヴォルカはハクアの街とは無関係と言えなくとも、別に住んでいる訳ではない。今回同行してくれているのも、ヴォルカが偶然手を貸してくれているというだけで本来ならダイ側から賃金を払わなければならないものである。


 その為あまりダイの方からあれこれ頼むとは言えない立場なのだ。ヴォルカもそれを察して自分から言いだしたのかもしれない。どちらにせよ、願ってもない言葉にダイは即答した。


「頼んだ。素性がわかれば、あとはこちらで何とか調べよう」

「最低限は素性やな。可能な限り引き出せるように頑張ってみるわ。時間かかるかもしれんし、適当な依頼受けといてくれん? 流石にここで依頼を受けずに出るのは怪しすぎるで」


 確かに怪しいかもしれないが、ヴォルカに任せすぎで大丈夫だろうか。もう今更ではあるが、彼は部外者である。ここまで手伝ってもらうのは気が引けた。


「ええって。ルナさん経由で連絡取れるやろ? 交渉がうまくいったら合流しようや」


 ヴォルカは早速その場を離れて侵入者の背後からそっと近付き、なにやら一言二言会話した後でそのまま二人で店の外へ出て行ってしまった。恐ろしい手際の良さである。


『ダイ。今、ヴォルカ殿と例の者が連れ立って出て行ったが……追えばいいかの?』

「ああ、追ってくれ。こちらも手頃な依頼を受けてから直ぐに向かう」

『任せて良いのか? 相手は危険な輩かもしれぬ。妾も合流する方がいいのではないか?』

「いや、とりあえず追跡だけでいい。勿論、何かあれば援護を」

『……承知。それでは追うとするかの』







 ダイは直ぐに片付きそうな幾つかの討伐依頼を受け、そのままの足で依頼を達成した。


 ちなみに、ダイが受けた依頼はランク10以上推奨の依頼が三つ。それぞれ周辺の生態系を荒らしていた強力な個体の撃破である。ランク10とは訓練された兵士と同等か、それ以上の強さの指標だ。この辺りではやはり人手が足りていないらしい。ランク10はそれほど多くはないものの、珍しくはない。15を超えるあたりになってくるとそこそこの有名人レベルになるが、ランク10であれば才能があまり無くとも努力でなんとかなるレベルなのだ。


 そのあたりのこの国全体の戦闘力の低さが、ダイは少し気になった。


 この程度の敵ならば、文字通り秒速で片付けるのは難しくない。


 きっちり50秒で依頼を全て片付けて街へと向かう。完了受付の方が圧倒的に時間がかかった。


「ルナ。どんな状況だ?」

『うむ。楽しく会話しておる。話の内容は聞き取れないが』


 こちらも順調なようである。というより、ヴォルカのコミュニケーション能力の異常な高さに驚きを隠せない。最も身近な存在である白亜は、その点びっくりするほど苦手にしているので、どこか新鮮に映った。

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