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「師匠顔がいいんですから、見映えさせたいんじゃないですか?」

 白亜の仕事は主に街の防衛と他国への対応に関することだ。


 とはいえ、どちらも白亜自身はあまり参加していない。


 なぜなら防衛に関してはダイ達召喚獣が強すぎるのに加え、レインという森全体の状況の把握を一瞬で行えるメンバーが増えた為に白亜が出ることは殆どない。「侵入者がきました」という報告が「捕まえました」という報告と一緒になって上がってきてしまうくらいには白亜の出番はない。


 他国への対応も殆どジュードに丸投げである。白亜がやるのはジュードがまとめてきた話に許可を出すだけだ。


 本来なら白亜がもっと外交関係はしっかりするべきなのだが、如何せん天然記念物である。いくらジュードに教わってマナーが完璧になろうとも、元が白亜なので失言の可能性が大いにある。


 頭がいいのに「これを言ったら相手はどう思うだろうか」という先読みが全くもってできない。できないというより、しない。


 根本の考え方からして素直なので嘘をつくのが下手である。もちろん、相手を持ち上げるような『おべっか』もマトモに使えない。


 これに関してはジュード達もよく理解している。だからこそ重要な人物との対談は白亜抜きで行われるのだ。普通に考えたらそんなトップなどあり得ないとブチ切れられてもおかしくないのだが、そこはそこ。ジュードがうまいこと収めるので全く問題がない。


 他者の感情の機微を敏感に感じ取って最適解を導き出すことができるジュードの交渉能力はずば抜けている。


 リグラートの王が個々の能力で選ばれるようなものだったのなら、ジュードは王としてリグラートを支えていたかもしれない。リグラートの場合は完全に世襲制で、しかも男女関係なく長子から順番に継承権が与えられる制度であるが故にその能力が発揮される場はなくなってしまっているが。


 リンやファンクラブの会員達含めて、この街の人々は本来ならこんな小さな街に留まっていられるような存在ではない。もしここに留まらずいろんな国を回っていたら先々で英雄と謳われる、そんなポテンシャルを秘めた人材がこの街に異様な密度で集まっているのだ。


 そんな理由があるせいで他国からちょっかいを掛けられやすい。


 ほぼ身内で構成されていると言っても過言ではない経営体制のおかげでスパイが入り込む余地は殆どないのが救いではあるのだが、その影響なのかはわからないがやたらと『普通に』攻撃されやすい。


 内から崩せないのなら普通に襲ってやれ、という考え方になるのが謎だ。ここに観光で訪れる人は知らないだろうが、実は結構な頻度で日々どこかが攻撃されている。


 森に入った瞬間からレインが察知するし、街は外から見えないように白亜が隠している。隠しているとはいえ、ランニングコストがかかり過ぎるので本気で隠しているわけではないので腕の良い索敵系の技術を持っている人ならば見つけることは出来るかもしれないが。勿論本気を出せば下手をすればチカオラートからすらも隠すことは可能である。


 ただ、そんな『頑張らないと』見つけることはできないハクアの街を探し当てた時点で何か怪しいので、白亜配下の誰かが動き出す。初動がやたらと早いので街に対して攻撃した瞬間に確保することも難しくないのだ。


 しかもたとえ攻撃が当たったところで内部にダメージが行くことはほぼない。


 白亜製の防壁はドラゴンの全力の体当たりでもビクともしない頑丈さを誇っているのだ。流石に試そうとは全く思わないが、核爆弾でも壊せないだろう。


 一歩森から出れば襲われかねない外とは違い、いつも街は平和である。


 それ故にありとあらゆる雑務を取り上げられた白亜は暇なのである。平和が一番だし、慌ただしく仕事するよりもゆっくりしたい。どちらかと言えばそう考えるタイプである。


 だが、よくわからない上に中途半端に手が空いてしまう仕事は嫌いである。


「……これ、やらなきゃダメか?」

「駄目ですね。はい、次」


 現在白亜はリンとジュードに連れ出されてリグラートの城下町に居た。日本に時々戻ったりすることはあるものの、近頃は完全にハクアの街……それも自分の家に引き篭もっていた白亜だが、わざわざそこから出てきたのには理由がある。


「ほらもっと顎引いて、ハクア君」

「……ああ、うん……」


 現在白亜は写真を撮られていた。


 場所はリグラートの城下町、ジュードも昔はよく写真を撮りにきたという写真館である。


 別に写真くらいハクアの街でも撮れるのだが、写真を撮った後に大量印刷できる機材が揃っていたのがこの店だったのだ。


 白亜は写真を撮られるのが苦手である。揮卿台 白亜だった頃に顔が良かったからか勝手にカメラを向けられることが多々あり、ウンザリして嫌いになった経緯があるからだ。


 だから普段は写真を撮りたがらないのだが、今回はそうもいかなかった。


「なんで街の紹介で俺の顔が要るんだ……」

「師匠顔がいいんですから、見映えさせたいんじゃないですか?」

「……あんまり嬉しくない」


 撮りにきた理由は『雑誌に取り上げられたから』というシンプルなものである。


 たかが雑誌でと思う白亜だが、この世界の雑誌の力はかなり強い。


 娯楽の少ないこの世界、庶民が気軽に楽しめるものとして雑誌や新聞の文化が根強い。貴族の間でも流行っているくらいだ。


 しかも今回取り上げられた雑誌は世界中にファンが多い(らしい)有名な旅行雑誌だそうで、一度そこに宿が載れば20年は安泰と言われているほどである。実は一度ハクアの街にも視察があったらしいのだが、宿を専門にしている雑誌なのでその時は宿が少なく予約が取れにくいのでお声がかからなかったそうだ。


 だが、最近建てた旅館が好評だったので改めて、ということらしい。


 最初は「雑誌の表紙にハクアさんを!」と依頼がきたが、流石にそれは白亜が全力拒否。ジュードの全力交渉の結果「表紙にしないけど写真は使わせて」という話になったので渋々撮りにきたのである。


 正直白亜は断りたかったが、雑誌の影響力を知るジュードとリン、ついでにシアンに大反対されたのでそこからは黙った。


 自室で暇をしていたところ「師匠、いま暇ですよね?」と聞かれて「暇だけど」と答えたのが運の尽きである。白亜の仕事量は基本的にジュードが管理しているのでジュードに「忙しい」なんて言えないのも充分理解しているが。


「はぁ……帰りたい」

「ハクア君、足閉じて」

「はいはい……」


 撮影時間は計五時間にも及んだ。

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