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告白!

「いい!あなた達スッゴい良いわ!」

「えっと。これは一体」

「こっちにならんで!」


 水晶で撮られる。


「すみません。説明をお願いします」

「あ、ごめんなさいねー。ここはコスプレショップなのよ」

「コスプレ……」

「カップル衣装を用意していたのがまさにヒットしたわね!」


 向こうの人達がはしゃいでいる。


「あの、私一応女なんですが……」

「知ってるわよ?初等部のハクアでしょ?試合見たもの。本当に凄いわよね」

「え?あ、ありがとうございます……?」

「君なら全然男装似合ってるから!」


 白亜とリンの衣装は完全におとぎ話とかに出てきそうな王子とお姫様だった。恥ずかしいことこの上ない。


「脱いでもいいですか……?」

「もうちょっと待って。いい写真とらせてよ!」


 恥ずかしがっている白亜とリンを他所に撮影会が始まってしまった。


「ハクア君。こっち向いて!」

「駄目よ!私が先よ!」

「え?私でしょう?」


 だんだん人が集まり始め、ついには教室内を埋め尽くした。実はここに誘い込んだ呼び込みの人と、最初からここにいた何人かはハクアファンクラブ所属で、ファンクラブの会員が大量の人を連れてきた訳だ。


「恥ずかしい……」

「私もいなきゃダメですか……?」


 中には先生も混じっていたらしく、コスプレショップは大盛況となった。主に、白亜とファンクラブ会員によって。




「やっと解放された……」

「疲れたね……精神的に」


 再び外に出てボーッとする二人。リンの膝の上にはサクラちゃんがちょこんと座っている。


「どうしようか。前王都に出かけたとき見たいに適当にブラつこうか」

「そうだね」


 屋台の回りを適当に歩き、たまに買い食いをする。


「私ね、ハクア君に感謝してるんだ」

「ん?」

「ここに来たときは私、人間の事は何にも知らなくて、里を襲う野蛮なやつらだって思い込んでた」

「間違ってないだろ?」

「うん。確かにそうする人もいる。けど、そういう人だけじゃないんだってことも良く判ったよ」

「そうだな」


 リンがわたあめを持ったまま立ち止まる。


「私はハクア君が好きだよ」

「?俺も好きだよ?」

「ううん。そうじゃなくて、恋愛感情として好きなの」

「?」


 告白されたことはあっても、付き合いと言うことをしたことがない白亜はいまいちピンときていない。


「変なこと言ってるね。私。女同士なのに。でもね、ハクア君だから好きなんだと思うの。他の男の子にはこんなこと思ったことないもの」

「リン……」

「私今まで考えたこと無かった。好きな人ができるとか、恋人とか。ここに来てから毎日そんなことを考えるようになったんだよ。やっぱり私、ハクア君が好きなんだって」


 そこまで言われて始めて理解したらしい。白亜の顔が赤くなっていく。


「い、いや。そんなことないよ。リン。俺は前世の記憶があるから男っぽいのも自覚してるし、その……リンが思っていることは、大体わかる」

「……うん」

「ありがとう。リン」

「……なにが?」

「なんとなくだよ。……俺はどうしたらいいのかな」


 少し上を向く白亜。


「リンは気づいてるかもしれないけど、俺は魔族に気に入られる体質みたいでね。しかもそいつには今の俺じゃ全く敵わない」

「聞いたよ」

「俺はあんまり生きていける自信がない」

「私を巻き込みたくないからそういうんでしょ?」

「え、あ……うん」


 完全に図星だ。


「じゃあ、私がハクア君を支えてあげる」

「え?」

「ハクア君の自信の無い所を私が埋めてあげる。クラスメイトとかパーティメンバーとしてじゃなくても。もっと近くで一緒にいたい」

「………」

「別に付き合えなんて言わない。だけど、私がそう思ってることぐらいは知ってほしいな。はい!以上!」


 リンも顔を真っ赤にして先に歩き出す。結局ハッキリしないまま暗くなったので部屋に戻った。


 リンは色々考えていて中々寝付けなかった。白亜もほんの少しいつもより寝られなかった。数秒が数分になっただけだが。






 次の日、訓練場なども卒業祭で使えなくなっているので暇をもて余した白亜は適当に楽器を練習していた。


「さっきアコギやったから次はチューバでいいか」


 楽器を弾く順番は謎である。


「あ、そう言えばあれ作ってないな……今の内にやっておこう」


 半透明のクリスタルのような気力を出し、蚤で削り始める。


「一通りやってしまった……」


 とにかく白亜は今暇なのだ。キキョウ達は卒業祭に遊びに行っているし、リンもサヒュイ達と回っている。白亜は留守番だ。暇である。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「どうするの!?間に合わないわ」

「そう言われても今急に出れる人なんて……」


 卒業祭ではメインとサブがあり、メインの中には余興である卒業式前の試合やダンスパーティー等があり、サブには有志で集めた人達が魔法を披露したりする場になっている。


「一組出られなくなるなんて」


 突然、吟遊詩人が来られなくなった。音楽は毎年なにかしらやることになっていて、もはや伝統になっている。


「楽器が弾ける人なんてそうそういませんよ」

「そこなのよね……」


 楽器を弾けるのは王族などの富裕層か、吟遊詩人位しかいない。王族などの富裕層はやっている可能性があるだけで、やっているという確率は極めて低い。


「チーフ。セッティング終わりました」

「そう。出演者を出してちょうだい」

「?元気ないですね?」

「吟遊詩人が来られなくなったのよ……少しでも楽器が弾ける人が誰かいないかしら」

「……駄目元で宜しければ」


 女の子は白亜の名前を出し、楽器を弾けるという噂が流れている事を伝える。


「成る程。駄目元で行ってみるわ」

「そうですか」


 この女の子、ハクアファンクラブ所属だ。情報班の一人である。


「いいなぁ。チーフ」


 舞台で漫才を披露しているグループを見ながらポツリと呟いた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「ふぁ。疲れたな」


 完全に暇している白亜は日向ぼっこをしていた。


「ん?リン?……じゃないな」


 近くに置いてあった村雨を帯刀する。警戒しすぎだ。コンコン、と軽くノックされる。


「はい。どちら様でしょう?」

「卒業祭舞台演出委員、チーフのミーナと言います。ハクアさんですか?」

「はい。どうぞ」


 鍵を開けて中に通す。


「わー!広いわね。流石は特殊クラスの部屋だわ」

「えっと、ご用は?」


 紅茶を出す白亜。


「ハクアさん。あなた楽器弾けるって本当?」

「え?あ、はい」

「お願い!弾いてくれないかしら?」

「………なんで?」


 白亜はミーナからある程度の説明を受ける。


「あー、成る程。そういうことなら別に暇だから問題はないですけど……」

「けど?」

「楽器をどこから調達したとか売ってくれとか言われる可能性ってありますか?」

「あ、それはあるわね」

「非常に困るんですけど」


 白亜の楽器は全て創造者クリエイターで作ったもので、譲る事などはできない。というより、白亜は自分の楽器をかなり大切にする性格なので扱いを知らない人間になんか渡してはいけない。とまで考えているからだ。


「なんとかなりませんか?」

「そうね……顔を隠して……も無理よね。君有名すぎるもの」


 背丈なんかでも十分に気付かれる気がする。ハクアファンクラブの中では白亜が楽器を弾けるという噂は広まっている。会員は非常に多いので隠れるのは無理だろう。


「あ、じゃあ干渉なしですって大々的に言いましょうか」

「んー。じゃあそれで」


 本当にそれでいいのか疑問ではあるが、今のところ回避できないので仕方がないわけだ。


「あ、楽器どうしますか」

「?」

「どういうのご希望ですか?」

「何種類もあるの?」

「ええまぁ。知ってる楽器は大抵弾けます」


 何がいいのか、と討論になり、結局持ち運び等も簡単なヴァイオリンになった。


「ちょっと聞かせてくれない?参考に」

「構いませんよ。こちらへどうぞ」


 白亜は自分の部屋に案内した。


「凄い……これクリスタル?」

「秘密です。他の方々にも内緒でお願いします」

「わ、判ったわ」


 棚の奥から取り出すようにヴァイオリンを出す。


「それが?」

「ヴァイオリンです」


 軽く弾きながらチューニングする。


「綺麗な音ね」

「ありがとうございます」


 適当に一曲弾く。曲はG線上のアリアを選択したようだ。


「凄いわね……」

「これで大丈夫ですか?」

「十分よ。あっと、そろそろ時間ね。一緒に来てちょうだい」


 そのまま白亜はステージの方に引っ張られていった。





「ここで弾ける?」

「問題なく。っていうかもう出番なんですね……」

「急でごめんなさいね。あ、行ける?」

「はい」


 白亜が舞台に上がると、観客がざわつく。吟遊詩人が来ると思ったら7歳の子供が出てきたのだから当然だ。そんな視線も白亜は完全に気にせずにお辞儀をする。


 観客がざわつく中、ヴァイオリンを構える。ただのチューニングなのだが、それで一瞬で静かになる。


 ほんの少し白亜が手首の位置を動かして右手を動かし始めた。最初は明るい曲がいいと言われていたので、ヴィヴァルディの四季の春だ。


 弾きながら、あ。これ何曲弾けばいいんだろう。と白亜は考えていたが取り合えず一曲仕上げることに集中する。


 弾き終わると、試合の時のような歓声が浴びせられる。そのまま白亜は視界をスライドしてミーナを見るが、どうやらまだやらなければならないらしい。


「何を弾けばいいの……?」


 誰にも聞こえない白亜の独り言だった。

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