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白亜達の進路!

 冬休みも終わり、1月。


「寒!」

「雪降ってますねー」

「積もってるねー」


 白亜たち三人は、二学期のテスト成績で全員卒業資格を取ってしまった。これは、白亜の希望であり、白亜の全科目1位分の単位が二人に分け与えられたからだ。教師がどれだけ白亜を早く学校から出したいのか、わかる気がする。


「白亜!雪だるま!雪だるま作りたいぞ!」

「ジュード!チコも!チコも!」

「子供かよ……」


 この中で一番の子供に言われたくはない。


「はぁ……行ってこい」

「「イェーイ!」」


 ダイとチコは早速小さな球を転がし始めた。


「寒くないのかよ。あー、霜焼けになりそう」

「師匠寒いの駄目なんですね……」


 寒いのが駄目というか、霜焼けが駄目というか。


「ねぇ、私達卒業なんだよね?」

「そうみたいだな……1年経ってないけど」

「これからどうする?」


 リンが兎のぬいぐるみ(リン命名・サクラちゃん)を抱き締めながら話す。


「そうだな……ジュードは王族としてなんかやれって言われてるのか?」

「いえ、僕の場合は第2王子とはいえ、母上が妾なので継承権は6位なんです」

「は!?じゃあ5人姉がいるのか?」

「はい」

「まじか……子沢山だな」


 産めるだけ産んでしまえ感がしないわけでもないが、5人の姉と1人の兄、計6人産んでいるわけだ。異世界パネェ感が拭えない。


「だから、好き勝ってやってもいい訳でして」

「良くはない気がするけど……」

「まぁ、全員方針は決まってないんだな。要するに」


 白亜はまさか1年で、というか半年で卒業できるとは思ってなかったので、判断に困る。


 窓の外では体の小さいチコは魔法で転がしはじめて、ダイの雪玉はダイの腰ほどまで大きくなっている。


「……やりすぎじゃないか?」


 白亜の呟きなんか聞こえてない。





「師匠は?」

「俺?んー。冒険者を一応続けてみる」

「そう言えば加入してましたね。ランクは?」

「ん?13」

「え?13?それって一流レベル?」

「らしい。なんかギルドの対応が優しくてな。最初は塩だったけど」


 そんなことではへこたれない白亜だからこその発言だ。


「じゃあ僕も師匠と一緒に冒険者しようかな」

「え。別に俺にあわせる必要は全くないぞ?」

「いえ。師匠がいるところに僕ありですよ」

「なんだそれ」


 ジュードの冒険者コースが確定した。


「私は……」

「まぁ。今決めなきゃいけないわけでもないし。追々考えていけばいいよ」


 サクラちゃんを抱き締めながら考えを巡らせるリン。


「ううん。私も行く」

「え?」

「私も、冒険者になるよ」

「い、いや、だから別に今決めーーー」

「なるったらなるの!」

「お、おう」


 リンも冒険者コースが確定した。




「本当によかったのか?」

「勿論。私が決めたんだもん」


 あっさり決めてしまったが、大丈夫なのか。そんな感情がわいてくる白亜だった。因みに、ダイの雪玉は二メートルを越えていた。



「そう。冒険者をやるの」

「はい。とは言ってもまだどうなるかは不明ですけど」

「ハクア君たちなら問題ないわよ」


 ライム先生がクスクスと笑う。


「異端児三人組」

「え?」

「貴方たちそう呼ばれてるわよ?」

「なんですかそれ……誰が考えたんですか?」

「さぁ?誰からともなくそんな話が出てたわよ?」


 異端児三人組。確かにぴったりな名前ではある。ネーミングセンスは放って置くとして。


「いいわよ。こちらからギルドに通達しておくわ」

「あ、私はもう一応冒険者なんですけど」

「そうだったの?でも、所属は消さないといけないでしょ?」

「あ、ランバート学園って書きましたもんね……」

「それもこっちから言っておいてあげる。ランクは?」

「13です」

「13!?やっぱり天才ね……」


 話しながら手続きの書類を書き終える辺り、やはり先生が向いているのであろう。


「はい。手続きは完了。もうこれでいつでも卒業できるわよ」

「ありがとうございました」





ーーーーーーーーーーーーーーーーー





「情報班。どう?」

「いくつか候補は出ました。絞りこみに時間がかかっているところです」

「そのまま続けて」

「はい」


「戦闘班」

「なんの情報も出ません」

「ダメ元だったので良いでしょう。情報班に何人か組み込んでください」

「了解」


「今日は会議の日よね?いつもの場所に召集をかけてちょうだい」

「はい」


 統制されまくったハクアファンクラブは卒業祝いに渡すプレゼントを全力で考えていた。誕生日に渡せなかったので余計に。




 ある部屋にハクアファンクラブの各班代表と、ファンクラブ設立者のリーダー、副リーダー(二人)が集まっていた。


「ハクア君はどうやら冒険者になるそうです」


 情報班の代表から告げられて、少しざわめく。


「成る程。ではそれも考慮して考えましょうか」


 リーダーの声により一瞬で静かになった。ファンクラブで軍隊とか作れるのではないかとも思える統率力。


「それでは候補を」

「はい。資料をご確認ください」


 副リーダーが告げると、全員が手元の紙に注目する。


「我々の資金力もよく考えて発言をしてくださいね。それでは候補を出した理由を情報班。お願いします」

「はい。まず1つ目のーーーーー」





「以上です」

「ありがとうございます。何か質問は?」

「はい。三番なのですが、ここまでのーーーー」






「絞れてきましたね」


 後ろのホワイトボードに絞りこまれたものが書いてある。


「それではこの中から多数決をとりましょう。異論があるものは?いませんね。それでは何が良いか書いてこちらの箱にいれてください」


 まるで選挙である。



 開票されて、圧倒的多数で決まった。


「それでは、これの結果を各班伝えるように。情報班は引き続き調査を。戦闘班も参加してください」

「「はい」」

「その他の班はまた後で役割を個別に説明するので、この場は帰っていただいて構いません。それでは会議を終わります」


「起立、気を付け!礼!」




「リーダー。決定しましたね」

「はい。役割分担はもう決まりましたので、書類の手配を」

「了解しました。リーダー、いや。サヒュイ・レイルさん」


 サヒュイ・レイル。特殊クラスに1日で入った理由は、白亜に一目惚れしたから。女であることを知りながら、その背を追いかけ、手を抜いて入ったはずの学校で熱心に勉強し、すぐさま実力が認められた。


 サヒュイにとってはそんなものどうでも良かったが、白亜が自分から話しかけたりするタイプでないことを見抜いていたため、特殊クラスに編入した。


 サヒュイの情報網は蜘蛛の巣のように白亜の周りに張られており、どんなことでも白亜の障害となりうると判断したとき、とんでもなく狂暴になり、戦闘班が全員かかっても抑えられない相手となっている。



「ふふ。ハクア様喜んでくれると良いなぁ」


 サヒュイは今日も教室で白亜と話す機会を探っているのであった。




ーーーーーーーーーーーーーーーー




「やりすぎだろう。これは」

「だ、だって!楽しかったんーーー」

「言い訳無用!」


 ダイの頭にチョップをいれる白亜。白亜の本気のチョップは頭蓋骨なんて簡単に破壊できるような威力を持っているのだから、軽くでも痛みはかなりなものだ。ダイが頭を押さえて悶絶する。


「壊すか……溶かすか」


 ダイの雪玉は全長5メートルをこえていた。そんなに雪が積もったわけではない。ダイが足りなくなったら魔法で追加していたのだ。魔法の無駄遣いである。


「全く……俺が何とかしないといけない雰囲気じゃんか……」


 大きな欠伸をして雪玉に構えをとる。


「この!」


 真上からの白亜の踵落とし。キュウビを一撃で沈めたあれを雪玉にぶつけると、雪玉は綺麗に吹き飛んだ。というか、爆散した。


「ぬおおおおぉぉぉ!某の努力の結晶があぁぁぁ!」


 ダイの叫びが響き渡っていた。

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