表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
437/547

『今見ている状況、しっかり報告書に書いておいてくださいね』

 シアンから話を聞いて、何度か考え込む白亜。


「なんだか、聞いてた話と少しズレがある気がする」

『そうですね。この世界の人間は案外気付けていないのかもしれません』


 まず、この世界の人々にはあまり危機感がないらしいということがわかった。


 マレビトの存在も「来るべくして来た人々」ではなく「なぜか一定周期で現れる異世界人」という扱い。白亜が聞いていた話では、マレビトを送らなければならない理由があり、マレビトには役目があるはずなのだが。


 以前訪れたというマレビトの話を聞いても、やるべきことをやっていない気がする。


『そもそもマレビトがどんな役割を持っているのかを、この世界の住民は知らないのだろうな』

「多分な。だから定期的に送り込まないといけなくなってしまっている」


 マレビトとは本来、世界の浄化を行う人のことだ。送り込むだけである程度は浄化できるが、実際に行動に移さないとそれ以上の効果は表れない。


 世界の浄化、というより土地の再生といった方が近いかもしれない。勇者は少しだけ扱える神気を使い、それを行えるが勇者じゃないマレビトも多少は浄化できる。


 ちなみに白亜の場合は属性魔法を使わないとなると極端に苦手だ。白亜の属性魔法は枯れた湖を簡単に蘇らせることができるほどの再生力を持っているが、魔法以外の手段である神の力がほとんど使えない。


 練習はしている。たまにエレニカに見てもらったりしているのだが、どうにも上達しない。


 なぜなのかとエレニカに聞いてみたりもしたが「俺はなんとなく最初から出来てたからなぁ……」と天才肌な返しが来たのであまり期待していない。


 それから白亜は軽くシャワーを浴び、監視対象の前田の部屋を魔法で覗き見してから報告書に記述し、そのまま寝た。






 次の日、陽も上がりきらないうちに目を覚ました白亜は軽く伸びをして小さくあくびをした後、顔を洗う。


 そして部屋に戻ってきて数秒、ここはどこだろうか、と考えてそういえば仕事中だったと思い出す。


 寝ぼけているのか、本当に頭からすっぽ抜けているのか。白亜に関してはどっちもあり得そうである。


「前田は……まだ寝て……? なんで個人で部屋持ってるはずなのに二人で寝てるんだ……?」


 前田の部屋には、女性が寝ていた。シアンにも見覚えがないのでこの世界の住人であることは間違いないだろう。


 だが、驚くべきことに白亜はびっくりするくらいの天然である。自分が仕事をするためにこの世界に来ていることを一時忘れるくらいには今を生きている。


 なぜ自分が前田を監視することになっているのかすら、覚えていないのか。それとも白亜にとっては同じ部屋に二人寝ている状況=部屋がなかったから仕方なく同じベッドで休んでいるという答えしか導き出せないのか。


『……マスター』

「何?」

『今見ている状況、しっかり報告書に書いておいてくださいね』

「わかった」


 シアンがいなければ本当にこの仕事、成り立たない気がする。


 白亜が報告書に細かく部屋の状況なども書き写したところで、前田が起きた。シャワーを浴びに行ったのを見てからとりあえず監視を中断する。


 その後暫くぼーっとしていると扉が数度ノックされた。白亜が扉を開けると、


「お食事の準備が整いました。こちらへどうぞ」


 と案内され、食堂らしき大部屋に着いた。ビュッフェスタイルで、好きなものを好きな量取っていくことができるらしく、小食な白亜としては助かった。


 普通にフルコースとか出てくると、前菜で腹が膨れる。


 その後も続々と人が集まってきた。白亜は自分の盆を持って端に座り直す。


 部屋に戻ろうとすると食事の後に話があるので残っていてほしいと言われ、仕方なく壁際に立って気配を消す。


 前田もやっとその頃には食堂へ入ってきたが、どうも眠そうだ。


(しっかり寝ていたのに)

『『………』』


 もう二人は突っ込むのをやめた。


 前田を監視しつつ時間が過ぎるのを待っていると、車椅子に座った女性が部屋に入ってきた。車椅子を押しているのは黒スーツ……ルシェードだ。女性の方は昨日会ったセーラという覚者である。


「皆様、よくお休みになられましたでしょうか。マレビトのあなた方にお話ししたいことがあります」


 セーラは全員の注意が向いたことを確認してから話し始めた。


「この国、クスクルは過去にいらっしゃったマレビトがお作りになられた国です。そのため、マレビトが現れた際には国が保護することが法で定められておりました」


 しかし、とセーラは少しため息をついて、


「今代の王……アムレシア陛下がその法を廃止してしまいまして、実のところ、あなた方は不法侵入者という立場になっています」

「「「……は……?」」」


 これに関しては白亜も予想外の言葉だった為にほんのすこし目を見開いている。


 セーラは小さく頭を下げた。そして言葉を続ける。


「初代のマレビトであるレージ様が残されたマレビト用の資金も心許無く、皆様を一ヶ月ほどお世話するとなくなってしまうくらいの金額です。その為、大変心苦しいのですが、皆様にはご自身でお金を稼いでいただく必要がございます」


 皆呆然としている。見ず知らずの土地で、一ヶ月後には放り出されることが確定したのだ。


 白亜は一ヶ月で帰るつもりなので正直そこに関してはどうでもいいのだが、あまりにもな話である。


「一ヶ月の間は、衣食住、私が責任を持って面倒を見させていただきます。ですが、そこから先は……申し訳ありません」

「か、勝手にこの世界に連れてこられて、あとは放置かよ⁉︎」


 一人が不満を漏らすと、また一人、また一人と不満を口に出す。


 収拾がつかなくなってきたことに、白亜も大きくため息をつく。


「どうなってんだよ、この国は……」


 とりあえず、天照大神にはすこし文句を言いたくなった。

 新型コロナで大変なことになっていますね……。私の通っている大学も先日からオンラインで授業が始まりましたが、先生もやり方がよくわかっていないからか、出席課題のほとんどがレポートの提出になっています。


 コロナのせいでお仕事が出来ない方、逆にお仕事に行かなければならない方、学校がお休みになって不安を感じている方(特に今年受験生の方)、たくさんいらっしゃるかと思います。私も来年の就活がどうなるのかかなり不安です。


 私の書いている小説が、少しでも息抜きの一助になっていればと思います。くだらないと鼻で笑っていただいて結構です。ほんの少し、辛い現実を忘れられるお時間を作ることができるのなら、それが何より嬉しいです。


 これから先も皆さんが楽しく小説を読めることを祈っています。


 龍木 光

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ