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白亜の休日の過ごし方!

「で、白亜は結局鍛練か」

「ダイ。別に付き合うことは無いぞ?」

「いや、某も特訓せねばと思ってな」


 ルナとキキョウの精霊コンビは王都観光中だ。ジュードは自分の新しい剣を取りに行き、リンはショッピングに出掛けるらしくただ今部屋で服を選んでいる。デートでもないのに。


「白亜はセンスは悪くはないのだが、やる気がない」

「お洒落のか?」

「ふむ」

「俺の場合は服なんて着れれば良いと思ってるだけだしな」


 白亜は一応今は女子だ。忘れてはいけない。本人がたまに忘れるが。


「リンは年頃の女の子だからな。俺とは違うだろ」

「白亜もそう変わらぬがな」

「中身は27のオッサンだぜ?むりむり」


 色々と突っ込みたくはなるが、この際無視しておこう。


「ハクア君」

「ん。リン」


 リンが可愛らしい服を着て白亜たちに近付いてきた。


「この服どう?」

「可愛いと思うよ。そうだな」


 白亜はピアスの箱に巻いてあったリボンを取ってきて、リンの腰につける。男子がやっているように見えるのは気のせいだ。


「ん。これでいい」


 ピンク色のワンピースの腰の部分にレースのリボンが巻かれ、より一層服が際立つ。


「ふむ。やはりなかなかセンスはあるのだな」

「そりゃどうも。リン。気を付けてね」

「それなんだけどさ、ハクア君も一緒にいかない?」

「俺と?」

「うん。行きたいなーって。駄目かな?」


 すると横で見ていたダイが悪戯っ子のような笑みを浮かべる。


「白亜。行ってこい。某はここで鍛練を積んでいよう」


 強制的に出掛けることになった。


「わかった。着替えてくるからちょっと待ってて」


 リンを待たせるのは不味いと判断したのか転移で移動した。


「すまぬな、リン。白亜は空気が読めぬ故」

「判ってるから」


 白亜が私服に着替えて再び転移で帰って来た。


「早いね」

「転移使ってるからな。ダイ。留守番頼んだ」

「了解。楽しんでこい」





「王都をこんなゆっくり歩いたの初めてだよ」

「よく考えたら俺も初めてだな」


 雰囲気が完全にデートなのだが、残念ながら白亜は女だし、雰囲気を感じ取れるほど空気が読める訳でもない。


「あ、リン。お腹すいてない?」

「ちょっと空いたかな」

「そっか。じゃあ何処かで食べようか。奢るよ」

「え、良いよそんなの」

「いいっていいって。冒険者の方で結構お金が入ってきたし」


 そんなことを話している二人を尾行する影が二つ。


「ハクア様とリン様がデートしてますよ」

「これは追わぬと面白くないの」


 精霊コンビだ。歩いている二人を見付けて尾行している。いつもの白亜なら気が付くだろうが、現在は馴れない人混みを歩くのに精一杯で気付かない。




「ここであってると思うんだけど」

「ここは?」

「夕陽亭っていう定食屋さんなんだけどね。この辺じゃとっても有名なんだよ?食べるところが全部個室になってて」

「へー。俺はそういうの疎いからなぁ。助かる」


 意外にも情報通のリンに連れられて中に入る二人。


「わー。混んでるね。別のところにする?」

「いや、リンがここに来たかったんだろ?この時間帯じゃ他のお店もこんなもんだろうから変えなくてもいいだろう」


 会話は完全にデート中のカップルだ。紙に名前を書き、順番を待つ。リンが白亜の肩を借りて寝始めた。大胆すぎる。

 周囲の視線が集まるのも気にしない白亜。やはり大物だ。


「リン様」

「あ、はい。行くよ、リン」


 まだ半分夢の中のリンを連れて個室に入る白亜。


「焼肉屋みたいだな……」


 焼き肉と定食屋はまた違う気がするが。


「ん。起きろー」

「ふぁあー。あれ?寝ちゃってた?」

「寝てたよ。順番待ちの時に」

「うぅ……恥ずかしい」

「くく。さぁ、なに頼むか決めよう」


 リンはパスタ、白亜はパエリアを注文した。


「そう言えばリンって夏休みって何やってたんだ?」

「私、ニンフじゃない?」

「ニンフだね」

「ニンフって精霊魔法が使えないから迫害されてるって聞いたことない?」

「ない」


 意外と怖いことをさらっと言うリン。しかもそれをさらっと流す白亜。


「ニンフの里って人間にばれないようにね、何度も場所を替えるの」

「大変だな」

「うん。それの手伝いしてた」

「成る程」

「ハクア君は?」

「遺跡にいってね」


 この夏のことを全部話した白亜。目が黒くなったのってそういうことだったんだ……。とリンは呟く。


「そんなに強い魔族かぁ……攻められたらお仕舞いだね」

「ああ。あっちが興味があるのは人間じゃなくて俺一人だからなんとかなるかもしれないけど」

「それってハクア君が自分であっちに行くって事じゃないよね?」

「………」

「それだったら私は反対だよ」


 リンは白亜の目をじっと見て、


「ハクア君は、ハクア君だけのものじゃ無いんだよ?」

「それ、キキョウにも同じこと言われた」


 白亜は手元の村雨を優しく撫で、耳についているピアスに軽く触れる。


「ハクーーーー」

「お待たせしました!魚介パスタとチーズパエリアをお持ちしましたぁ!」


 この部屋には防音魔法が張ってあり、内緒の話にはもってこいなのだが、運んでくる人のノックなんかも無いので心臓に悪い。


「あ、ありがとうございます……」


 話が強制的に中断したのでまた話しにくい雰囲気になってしまった。


「い、頂きます」


 なんてタイミングだ、と二人は思っていたが、話せる雰囲気ではないので二人揃って無言で食べ進める。気まずい。


「「………」」


「……ハクア君」

「えっ?あ、なに?」

「ハクア君は勇者じゃ無いんだよ?」

「あ、ああ」

「騎士団長とかでもないんだよ?」

「うん」

「なんで周囲の為に死にに行くようなことするの?」


 唐突にリンから言われた言葉に白亜は一瞬言葉が浮かばなかった。しばらく無言になり、


「判んない」


 そう、一言ポツリといった。


「そっか……」


 その返答は予想していたのか、リンは特に追求しなかった。


「じゃあ、1つ約束して」

「?」

「これから、死なないで」


 パスタを食べながら話すようなことではない気がするが、リンは真剣だった。


「……ああ。死なないよ、俺は。約束する」


 小さな声だった。だが、その声はリンに確り通じた。





「何を話しておるのかさっぱり判らぬの」

「防音魔法張ってありますもんね……」


 完全に野次馬と化した精霊コンビは二人の会話をなんとか聞き取ろうと必死だ。変質者に見えないこともない。精霊だが。


 諦めたらしく、大人しく観光戻った二人。入れ違いに白亜たちが出ていったのを知らない。見事にすれ違い、その後少々迷子になるのは二人が白亜の精霊だからなのか、元々の性格なのか。





「本当にいいの?」

「お金はあるから」


 俺からすると胃袋がブラックホールの召喚獣はこの三倍は食べるからな、と頭のなかで付け加えた。


「あ、これ可愛い!」


 兎のぬいぐるみだ。フワフワしている。


「へー。そういうの好きなんだ」

「可愛いでしょ?」

「確かにな」


 リンはそれをじっと見つめていたので、白亜が代金分を払う。


「へっ?いいの?」

「ん。一昨日の礼だ」


 兎をギュッと抱き締めるリン。


「ありがとう!」


 その後、可愛らしい兎のぬいぐるみを持った小さな可愛らしい女の子と少し言葉数の少ない、強膜が黒いイケメンの男の子のカップルが町中で目撃された。これにより、ハクアファンクラブ会員は全員悔しさで涙を流したとか、なんとか。






「ジュード。新しい剣どうだった?」

「結構馴染むんですよ。ほら」


 新しい剣を鞘ごと一閃するジュード。


「ん。馴染んでるね」


 一目見ただけで判断できる白亜も流石だが。



「今日はどうしますか?」

「そうだな、ジュードの授業は?」

「今日はないんです」

「ん。ちょっと付き合ってくれないか?」


 白亜はジュードを連れて図書館に来た。


「おう、小僧。また来たのか」

「いい加減小僧はよしてくださいよ……ビューさん。こちら、同じ特殊クラスの」

「ジュード・フェル・リグラートです」

「ふむ。ワシはここの管理人のビューじゃ。よろしく」


 いつも通りビューの鼾を聞きながらトロッコに乗り込む白亜たち。


「師匠。なんで図書館に?」

「ちょっと気になることがあってな……っと、こっちだ」


 大量の本の中から何冊か取り出す。


「これ……無属性の?」

「ん。ちょっと気になってな」


 白亜のちょっとは、ちょっとではない。古代魔法の勉強も、ちょっと気になったからとかであることが多い。


「無属性にも種類があるだろ?」

「はい。空間系や生産系等が」

「それ、その素質がないと使えないだろ?」

「え?はい。僕は強化系ですが」

全部・・使えるようになったら面白いと思わないか?」

「へ?」



 白亜がジュードに見せた本は、全て古代文字で書かれたものだった。白亜がそれを読み、ジュードが実践する。それが何度か繰り返される。


「んー。全部は難しいかなぁ」

「3つ覚えただけでも十分な気がしますけど」


 ジュードは空間系、強化系、念力系を扱えるようになった。軽くこなしている辺り、ジュードも十分化け物だ。


「まぁ、これで一通りかな。後で復習しておくといいだろう」


 白亜の後ろではキキョウ達が一生懸命古代文字を翻訳して紙に書き続けている。


「おわりました」

「お疲れ」


 キキョウが一番に書き終えた。ダイは右手で書くのが辛くなったのか、ペンを魔法で浮かせて書いている。


「まぁ、師匠に追い付くために、せいぜい頑張りますよ」

「ククク。頑張れ」

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