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白亜は卒業資格を!

「ライム先生」

「ハクア君たち。どうしたの?」

「迷宮攻略しました」

「へ?」


 ライム先生に報告しに来た白亜とその一行。


「それ本当?レベル10のボスって何だった?」

「砲弾装備したロブスターでした。あれ?なんて名前だったっけ?」

「バズーカロブスター」

「あ、そう。それ」


 僅か二日で攻略してしまった。しかもあっさりと。


「へ、へぇー……」


 ライム先生も言葉が出ない。


「証明書貰いに来ました」

「あ、うん。ちょっと待っててね」


 ライム先生が机の上の書類をガサガサと漁り、一枚の紙に何かを書いた後、それを水晶で保存する。


「はい、これ。無くさないように気を付けてね」

「ありがとうございます」


 この学園迷宮の攻略というのは結構珍しいことで、将来の職業選びの時に役に立つ……つまりは資格の1つとして認められる。


「それとハクア君。少し残ってくれる?」

「はい。皆、今日は解散で」

「「「はーい」」」


 進路指導室に連れていかれた白亜。


「ハクア君。君、この学校の卒業の仕方って判ってる?」

「単位制ですよね?」

「そうそう。でね、ハクア君の単位がもう取れちゃった」

「はい?」


 一枚の紙を見せられる。そこには単位を取る方法と、何をすれば単位を何れだけ取れるか、が書いてあった。


「テストで全科目1位、迷宮レベル10攻略。この二つを完全にとった君はもう卒業資格があるんだよ」

「うっそ」


 つい、素で話してしまう白亜。前世ではどれだけ成績が良かろうが年数を重ねないと上がれない制度だったので、驚いている。白亜は半年で学校卒業の資格を取ってしまった。


「あ、でも高等部も有りますよね?」

「あるけど、君の場合は免除の可能性が高いんだよね……」

「え」


 高等部とは中学校だ。初等部が小学校、高等部が中学校。高校や大学はこの世界にはない。


「どう言うことですか?」

「高等部っていうのは初等部で単位がとれなかった子のために有るようなものなの」

「ふむふむ」

「そこに君が入ったらその分上位に入れない子が増えるでしょう?」

「そうですかね?」

「そうすると結局意味がなくなっちゃうのよ。だから君はもう卒業しなきゃいけないかも」

「あ、強制的なんですね……」


 してもいい、じゃなくてしなきゃいけない。


「君の場合はジュード君もいるし、どうなるかは判らないけどね」





 教室に行くと、ジュード達が待っていた。


「ハクア!何言われた?怒られた?」

「チコ。俺は別に叱られてない。これだよ」


 全員にさっき貰った書類を見せる。


「え!師匠卒業するんですか!?」

「わからんが。単位は取ったらしい」

「凄いね」


『マスターなら当然です!』


 シアンは誇らしげだ。


「どうするんですか?」

「んー。判んない。一先ずはこのまま。ジュード達を待つよ」


 白亜は史上初、半年で単位をすべて取ってしまった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーー





「ねぇ、聞いた!?」

「聞いた聞いた。まさか卒業資格を取っちゃったなんてね」


 流石はハクアファンクラブ会員だ。情報がとんでもなく回るのが早い。


「私達、解散?」

「ハクアファンクラブは不滅よ!」

「そんなことより、もうハクア君を見れなくなるのよ!?」

「無理!私そんなの耐えられないわ!」


 やはり修羅場になるのは彼女達のせいなのか、白亜のせいなのか。


「それにしても二日で攻略なんてねぇ」

「あれ?ハクア君の誕生日っていつ?」

「……いつだっけ」

「私知らない」


 情報量が多すぎて混乱している。


「でも、二日連続で入ったってことは」

「昨日……?」


 その瞬間、空気がガラッと変わる。


「私!なんにもしてあげてない!」

「うっそ……そんな大事な日を知らなかったなんて……私ちょっと屋上に行ってくる……」

「はやまらないで!皆知らなかったのよ!」

「いやー!なんてバカなの私は!」


 修羅場が余計に激しくなった。


「どうしよう!知らなかったよ!」

「私達、ファン失格ね……」


 そんなとき、一人の会員が白亜の耳元に目をやる。


「あれ?ハクア君ってピアスしてたっけ?」

「「「え!?」」」


 全員で窓に貼りつく。


「あ、ほんとだ!」

「しかもあれ、真珠石よ!?」

「うっそ!ってことは調節もしてあるんだ……」

「きゃーっ!格好いい!」

「あれって多分……」

「うん。あそこのハクア君の取り巻きグループがあげたんだろうね」


 ジュード達の扱いがひどい。


「あれっていくらくらいの物かしら……」

「1000エッタは確実にいってるでしょうね……下手したら10000越えてるかも」

「確かジュード君って?」

「王族だったわね……」

「「「………成る程」」」


 全員の息がピッタリなのも、ハクアファンクラブ会員の特徴だ。類は友を呼ぶとはまさにこの事なのだろう。


「私達は確実に敵わないだろうけど、ハクア君を思う気持ちは一級品だってこと、見せつけてやりましょう!」

「そうね!大仕事だわ!」


「情報班!」

「「「はい!」」」

「ハクア君の周りを徹底的に洗って、ハクア君が欲しいものを調べなさい!」

「「「了解!」」」


 情報班。そんなものがあったとは。しかも見事に統制されている。


「戦闘班!」

「「「はい!」」」

「今までガキ供がハクア君から隠したものなどを徹底的に聞き出してちょうだい!ハクア君には絶対にばれないようにね!」

「「「御意!」」」


 戦闘班。要は、白亜に悪戯した男子を制裁という名の殲滅で叩き潰す為に剣術などの戦闘系授業を取っている女子達だ。その強さは折り紙つきで、戦闘系テストになると上位に食い込む程の猛者たちである。


「各班代表とリーダー、副リーダーは今日の夜会で緊急会議をするわよ!各々収集をかけてちょうだい!」

「「「はい!リーダー!」」」





ーーーーーーーーーーーーーーーーー





「さてと。やることが一気に無くなったな」

「白亜の専攻授業も今はやっておらぬしな」


 白亜はダイたちと一緒に教室で本を読みながら話していた。半分サボりだが、やることがないのも事実なので古代文字の解析しかやることがないのだ。


「何を読んでいるんですか?」

「んー?多重召喚とか?」

「相変わらずさらっと言いますね……」


 召喚術は基本一人につき、一体しか使えない。古代魔法の栄えていた頃は、勇者とかの歴史に名を刻んだ英雄位の事をした人は2体同時に召喚したとか。その技術はもう既に滅んでいるが。


「やっぱり人がやったことないことをやれるって面白くない?」

「それを見守るこっちの立場になってから言うべきだとは妾は思うがの」

「うぐ……」


 こういう話をしながら読み続けるのはある意味すごい。


「いいじゃん。面白そうなことはやれるだけやっておいた方が後々後悔しないだろうし」

「「「………はぁ」」」


 配下組の苦労がため息で察することが出来る。




「今日はこれで終了!皆、気を付けてね!さようなら」

「「「さようなら」」」


 学校が終わった。いつも通り訓練場へ向かう白亜たち。


「明日と明後日は休みにしようか」

「「「………へ?」」」

「ん?」


 一同が唖然とする。


「うっそ。ハクア君が……休み?」

「師匠。もしかしてご病気に……?」

「なんでそういう話になるんだよ」


 休み。白亜がそんなことを言うなんて日が来るとは、と全員が思っていた。


「なんで突然?」

「ん?いや、深い意味はない。ジュードのそれも大分痛んできたし、そろそろ替え時だろ?多分イジトさんに頼んであるだろ。受け取りは明日か?」

「なんでそんなこと知ってるんですか!?」

「勘。あの人、自分で作った武器の限界を読むのが半端なく上手いからな。明日、明後日位で間に合わせるんじゃないかなって思って」


 白亜の言うそれとは、ジュードの両手剣の事で、たまにイジトさんに作り替えてもらっている。それを知っている白亜だからこそのこのタイミングの休みと言うわけだ。


「一応迷宮攻略したし、キリがいいからな。新品の刀身が馴染むのも時間がかかるだろうし」


 と、いうことで。白亜たち一行は学校が休みの要は土曜日と日曜日に本格的な休日を過ごすこととなった。

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