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【最早ひとつの国家勢力並になってますよね】

 三人が連れだって歩いて行ったのは小さな道具屋だった。


【ここが新しい店とやらですか?】

「そうだ」


 中に入り、品物を見て回る。


「これ、見たことない薬だね」

「そちらは毒消しポーションの新商品になっております。これまで不可能と言われた食中毒にも効くんですよ」


 食中毒を治す方法は実はこれまで確立されていなかった。白亜なら勿論治せるが、そもそもポーションというものは怪我に効く生命力を活性化させる薬のことなので病気全般には効果があまりでないのだ。


「中々面白いものが多いみたいだね」


 それからも店員を連れ回しながら商品の説明をしてもらった。


「某はこれを貰おうか。それにしても、珍しい商品が多いのだな?」

「そうなんですよ。これはこの道具を卸していただいている商家の娘さんが考案したものだそうです」

【凄いですね。考え方がリシャットさんみたいです】


 そう、ここにある商品どれもこれも白亜が作っていそうなものばかりなのだ。病気に効くポーション、剣を手入れするための不思議な繊維の布、インクの補充が楽なペン。


 意外と地味に便利なものを作るのが白亜流だ。あの固定転移装置……というかドアノブも外から見たら変な取手だが内部構造はあり得ないほど難解である。だが、華美なものを好まない白亜は作るものでさえシンプルなものを好む。


 ここの商品はまさにそれっぽい。見た目は他とちょっと違うが普通に見える物ばかりなのに、性能的にはかなり便利。


「なんでも、その娘さんがどうしてもここに出店したいと言って聞かなかったそうですよ」

「そうか……」

「へぇ………」

【そういうことですか……】


 もうその一言でどういう理由でここにあるのかわかった。


(((ファンクラブの会員か……)))


 会員なら、白亜が好みそうなものを作るし、ここに出店したいと言い張るのも当たり前だ。


 日本からこっちに来てからほとんど外に出ていないライレンでも、十分過ぎるほど彼女らのことは知っていた。


 何せ白亜が庭に出たりする度に馬鹿でかい記録水晶を持ち出しては数百メートル先からただ写真を撮るだけというスナイパー顔負けの技術者がうようよしているのだ。


 しかも写真の腕もいいので文句なしの一枚をバシャバシャ撮る。


 しかも彼女たちが凄いのは白亜が外に出てくるタイミングを事前に予知してスタンバイしていることだ。


 そういう感覚が研ぎ澄まされているのだろうか。ある意味では白亜より恐ろしい相手なのかもしれない。


 勿論白亜は気付いているものの悪意はないとわかっているので基本無視している。流石の天然記念物ぶりだった。


【流石、というべきなんでしょうか】

「どうだろう? まぁでもハクア君だから愛されてて当たり前みたいな気がするけどね」


 白亜は他人と頻繁に関わろうとしないが、別に避けているわけでもないので普通に性格は悪くない。空気が読めないだけで。


 寧ろ本質は優しい人柄だ。……空気が読めないだけで。


 何故かいざこざが起きて、それに巻き込まれてしまうのも割りと日常茶飯事だ。……空気が読めないので。


 そういうことを未然に防いでくれるのがファンクラブ会員達だ。町の治安は彼女たちの助けあってこそのものだ。警備担当のキキョウが出向く間もなく相手を瞬殺(殺してはいない)している。


 ハクアの街に居る会員は会員の中でも更に厳選された、会員の中の会員なのだ。カメラの腕と戦闘力はずば抜けて高い。白亜愛は言うまでもない。


 神にも等しい白亜の作った街、彼女たちからすれば聖域と呼べるここを荒らす者は白亜以外には許されない。というか許さない。


 何か問題が起これば一瞬でハクアファンクラブの情報網によって全世界に広まり、敵対した相手の社会的抹殺が始まる。ハクアファンクラブ会員には何故か権力の高いものが非常に多い。


 貴族なら、最悪家格を下げられるか没収されることになる。平民なら会員のいる商家の物を売ってもらえなくなる。しかも白亜はこれを知らない。


 本当に恐ろしい。白亜本人と敵対すれば物理的抹殺が待ち受けているのは言うまでもない。


「まさか、ただの子供の学校組織からここまで逸脱した勢力になるとは思わなかった」

「最初は学園の中のファンクラブだったらしいねー」

【最早ひとつの国家勢力並になってますよね】


 さしずめ架空国家ハクアといったところか。あながち間違ってない気がしないわけでもない。


 三人は店を出て、適当な店を探し始めた。


「雨、大分小降りになってきたね」

「そうだな。外套を着るかどうか迷う程度のものになってきたな」


 ライレンは実体がないので雨なんて意味ないが。


 その後も幾つかの武器屋や商店を回ってみたところ、恐ろしいことが判明した。というか気づいてしまった。


「まさか、全部、なのか?」

「全部かもねぇ」

【完全に牛耳られてません?】


 どの店に行っても、ファンクラブの面影を感じずにはいられないのだ。


 ダイはこれでも白亜が初めて召喚した召喚獣で、普段から隣に立っていたのでファンクラブ会員には顔馴染みの存在なのである。だからなのだろうか、どの店に行っても「領主のハクアさんは今何を?」と聞かれる。


 そして店を出るときは「ハクアさんに宜しくお願いします」と言われるのだ。


 領主に対する反応ではない。明らかにそれ以上の感情が透けて見える。食べ物を扱っている店なんて、白亜が苦手な食べ物が全く見当たらなかった。どれもこれも好物ばかりである。白亜の。


 一体どこでそんな情報を手に入れたのか。まぁファンクラブ会員なので白亜のことならなんでも知っているだろう。情報源がどこかなんてもう考えるのすら面倒くさくなるほど考えたがさっぱりである。


「商業区、全て乗っ取られていたな……」

【もしかしたら、領主区くらいなんじゃないですか。会員いないのって】

「多分そうだろうねぇ」


 元々商業区には会員がいなかった店の方が多かったのだ。なのに、今は全ての店に会員の息がかかっている。着々と人数を増やしているのか、送り込まれているのか。


 不当な方法で追い出すのは白亜が嫌うことなのでやってないだろう。いや、断言できる。やっていない。


 どうやってハクアの街の市場を牛耳ったのか、それを知るのは彼女たちのみである。

 なんか三人のこと書くつもりがファンクラブののことになってしまった……

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