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「えっ、僕居候なの?」

 受験終わったテンションで書きました。切りのいいところで終わらせたのでちょっと短いです。

「暇だ」

「ああ。そう」


 カチャカチャとドアノブを弄る白亜。その横でダイがジト目をしてもう一度言葉を区切って言う。


「暇、だ」

「そう」

「なんかやることないのか」

「ない」


 あっさりとしている白亜の返事に大きな溜め息で返すダイ。ここ数日、“行先指定簡易転移具(仮名)”をずっと作っているのだが。


 主な作業は白亜の担当だし、白亜が勝手に弄りまくっているので手伝おうにも理論がさっぱりだ。一応これの中の魔方陣の案を組んだのはダイなのだが、白亜が使いやすいようにと手を加えた結果殆ど原型がない。


 ダイはダイで実は結構有用だったりする。忘れられているかもしれないが、一応黄龍なのだ。四神の纏め役なのだ。


 腕は立つし知識量も豊富。戦闘力だけで見るならジュードを超える。


 ジュードの指導もたまにしてやっているのである意味では二番目の師匠と言えるだろう。


 本来ならば、崇められるべき存在なのだ。


 だが残念ながら呼び出しているのが白亜なのだ。当然のように常識が通じない。


 しかも死んで数年帰ってこないと思っていたら人間をやめて神になっていた。これだけでも十分有り得ない。


 それが普通にこうやって生活魔法道具を作っているのも中々おかしな話だ。生活魔法道具は日本で言う家電に近い役割をもつ道具のことだ。


 神が作った家電製品などなんのことやらさっぱりだろう。そもそも神はそんなことしない。


「白亜。暇だ」

「うん」

「本当に何もないか? 某がなにかしてやるぞ」

「ない」


 一応白亜も相手してやるのだが、ひと言で会話が終了する。結局暇なのは変わらなかった。


「では某は外に出てくるとしよう……」

「行ってらっしゃい」


 扱いがとにかく雑い。雨が降っていたので外套を来て外に出る。


 この世界では傘はあまり需要がない。いつ魔物が襲ってくるのか解らないので片手が塞がる傘は不人気なのだ。魔物に襲われる心配のない場所ではさしている人もいるが、やはり外套を身に付ける人が殆どなのである。


「ちょっと、もう少しだけでいいから!」

【そう言って何日拘束するつもりですか⁉ そろそろ離してください‼】


 玄関に程近い庭で、悪魔と魔王が取っ組み合いをしていた。


 関わりたくないのでさっさと離れることにする。


【あ、ちょっとダイさん! 助けてください!】


 見つかった。


「ダイ! そっちを押さえて‼」


 こっちはこっちで取り押さえることに協力しろと言ってくる。


「……はぁ、離してやれ。レイゴット。そろそろ止めておいた方が白亜も文句は言わないだろう」

「ハクア君が? そうかなぁ。『あっそう?』とかって言いそうじゃない?」


 確かにそうかもしれないが、ここまでくると流石にライレンが可哀相に思えてくるのだ。


「ライレンも白亜の配下なのだ。居候扱いのレイゴットとは少し立場が違う」

「えっ、僕居候なの?」

「それ以外になんなのだ?」


 まぁ、そうである。レイゴットは特に仕事もしないし、勝手に住み着いて食っちゃ寝しているだけである。


 一応は白亜の恩人(?)なので白亜が滞在を許しているだけだ。別に魔王一人養うくらいの事は造作もない。財力的にも、権力的にも。


【あ、ありがとうございます……】


 なんとかレイゴットから逃げ出せたライレン。疲れることは基本無いはずなのだが心なしかグッタリしている。


 レイゴットが悪魔などという謎生物を研究しないということはまず有り得ない。研究に熱が入ったせいでここ数週間ずっと拘束されっぱなしだったのだ。


 それを指摘しない白亜も白亜だが。


「それより、今から出掛けるのかい?」

「うむ」

「どこ?」

「特には決めておらんが、商業地区に行くつもりだ」

【……ご一緒しても? この街の事、あまり知らないのです】

「僕も行くー」


 返事していないのだが、なんだか三人で行くことになってしまった。レイゴットの独断である。


 ダイとしても断る理由も無いので結局行くことになった。


【先程商業地区と聞きましたが、幾つの地区に分けられているので?】

「ここは真ん中の広場を除いて町が五等分されている。正面の商業地区から時計回りに学園区、娯楽区、居住区、領主区となっている」

【領主区、ですか?】


 ダイが自分達の屋敷を指差して、


「ここだ。某等の家や白亜の研究機関、この街の戸籍管理をこの地区で行っている。外からの交渉事や要人の対応なんかもな」


 つまりは白亜達の居住区なのだが。


 真ん中の広場には一応役所があるが実務自体は領主区で行われている。


【ここってそんな感じになってたんですね。五角形だということは知っていましたが】

「そうだよ。その五角形の尖っているところに門があって、ハクア君が作った結界で出入りが制限されているんだよ」


 危険なモノを通さないように白亜が作り上げたシステムだ。門を護る人達は白亜の直接的な配下で、彼らの独断と偏見で出入りが決められている。


 それで文句がでることも勿論あるが喧嘩で彼らが負けるはずがないし、口喧嘩でも強いのだ。普通に問題ない。


 そのために何度か各国の要人を追い返して面倒なことになってしまった事もあるが、まぁ白亜達には些細なことである。


 本来であれば自国の面子などを気にしなければならないところだが、この街は一応リグラートに所属しているがほぼ独立状態でなにかしら庇護を受けているわけではない。気にする必要皆無なのだ。


 それに権力の面でもジュードがいるので問題ない。どの方面でも完璧だった。


「ねぇ、ダイ。最近新しいお店ができたって本当?」

「……あぁ、そうだな」

「折角だしそこ行こうよ!」


 ぐいぐいとダイを引っ張っていくレイゴット。


【……なんのお店に行くつもりなんでしょうか】


 ライレンは一人完全に置いてきぼりになっていた。

 娯楽の街ハクアの上から見た図をTwitterに上げます。


 私が物語を書く上でメモっている設定画なので雑ですが、作中の説明で分かりにくかったらそっちをご覧ください。

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