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「先々週にご友人の国が潰れまして……」

 まだまだやりますよリクエスト番外!


 ハクアファンクラブのお話です。が、書き終わって気付きました。台詞がほぼないことに!


 要約しますとほぼ説明回です。

 サヒュイ・レイル。その名はとある地域では知らないものがいない程の有名人で魔法の腕、剣技、そして魔術理論や数学などの勉学の成績は素晴らしく、また平民にも親しげで敬意を持つ珍しくも民に愛される思想。


 まさに、理想。歴代の王族の中でも類を見ない能力の高さに誰もが期待をした。


 彼女も無難に平凡に学生生活を終えて国を継ぐつもりでいた。


 だが、彼女は今まで過大な期待と畏怖の目に晒され続け俗に言うストレスが溜まりに溜まってしまっていた。


 それが、本人にとっては最高の。周囲にとっては最悪の形で発散されることになってしまった。


 無難にそろーっと過ごすはずだったのに、彼女はわざわざ目立つクラスに入ってしまった。それも、自分から。


 理由は至極単純。ある生徒に憧れてしまったからだ。


 惚れてしまったと言ってもいいだろう。誰にも染まらず一歩間違えば孤立してしまいそうな性格なのに、無意識に皆を引っ張っていく悪く言ってしまえば自己中心的な考えの人間。


 それでも孤立しないのは行動に垣間見える優しげな態度と面倒くさそうにしつつも世話焼きだからだろう。


 珍しい目も髪も、その存在を飾り付ける道具でしかない。


 人形のような儚い美しさを持ちながらも誰にも負けることのない強さが、嫉妬と羨望をただひたすらに集め続ける。


 サヒュイは一目見たときからその人間から目が離せなかった。その人のことを知りたくて、本来の目的と身分そっちのけで同じクラスに入り、接触を図った。


 その人の周りの精霊や隣にいる弟子は兎も角、本人はどこまでもマイペースでガードが相当緩かったので接触は容易だった。


 そして何度かやり取りをして気づく。マイペースなのは自分自身を守るためで、きっとそれが壊されてしまえばこの美しさは無くなってしまう、と。


 無理矢理に従わせようとして傷つけようとでもすれば直ぐに粉々に砕け散ってしまいそうだった。


 最初からボロボロで今にも割れてしまいそうなガラス細工を必死に超硬度の金属で覆って守っているようだと。


 それを遠くから眺めているだけだから美しさという表面的なものしか見ることが出来ないのだ。


 サヒュイは少しでも傷をつけないようにと周りの嫉妬に駆られた馬鹿共を殲滅し始めた。


 傷つけさせる前に引き剥がしてそれ相応の罰を与える。正直、過剰過ぎるような気もするのだがサヒュイは本気だった。


 それを見た同じ思想の者が集まってとある……軍隊のようなものを造り上げたのである。


 そう。これが『ハクアファンクラブ』なのだ。


 このファンクラブ、普通のファンクラブとは大分異なり目的は『ハクアを見守ること』ではあるのだがそのための障害になりそうなものは片っ端から排除していく恐ろしい戦闘集団である。


 サヒュイはあまりにも自分が有能に見られることを避けるために剣術が使えることを隠していたのだが、排除という名目さえあればどんな方法も厭わず戦う鬼神と化すのだ。


 そして白亜が卒業してからも当たり前のようにそれが継続されていた。


「サヒュイさん。とりあえず『不届き者(ヴィラン)』の一派を潰してきました」

「例のパーティね? ご苦労様」


 白亜の邪魔になりそうな不届き者を秘密裏に排除するのが今の彼女らの役目である。


 不届き者を悪役ヴィランと呼んでいるところを見ると、白亜は物語の主人公的な役割なのだろうか。


 白亜の所属するギルドは年齢制限さえ満たせば誰でも加入出来るので荒くれ者がどうしても多くなってしまう。


 ある程度文句を言ってくるやつなど白亜が気にするはずもなく、武力で捩じ伏せるなど不可能なのでそのところは心配要らないのだが。


 ギルドのそこそこのベテランのパーティになると突如現れたルーキーに嫉妬して白亜本人ではなくギルドに圧力をかけて依頼を受けさせなくしたり買い取りの値を明らかに下げさせたりという苛めが可能になってしまうのだ。


 明確な敵対行為ではないので白亜も反応しづらいし、報酬額を大幅に減らされて怒り狂うほど短気でもないのだがやはりいい気分ではない。


 そこでハクアファンクラブ会員が役に立つ。


 ギルド内部に入り込ませた密偵に不正を発見させたり、場合によってはなにか仕掛けられる前に出向いて制圧する。


 彼女らはただの女性ではないのだ。そもそも会員になるのは簡単なのだがサヒュイが直接動かせる部隊に入るにはそれ相応の試験がある。


 弱いはずがないのだ。


 因みに試験内容は戦闘力、どれだけ隠密行動が出来るか、写真の腕、ハクア愛を示す。の四つである。


 後半の二つで前半のインパクトが消え去るがどれも高得点を出さなければ幹部にはなれない。


 幹部になった場合、何があるのか。実は、ほぼなにもない。


 白亜との接触時間を許されるくらいである。それだけでも十分だという人も大勢(というか、ほぼ全員)いるのだが、ハッキリとした特典は精々がファンクラブの会議に出席出来るようになる、くらいだ。


 だが、人によってはこれが相当な価値をもつ。


 ファンクラブ会員は年々増え続け、数えきれないほどの数になっている。その中には実はとんでもない身分の人間も紛れ込んでいたりするのだ。


 サヒュイもその一人だが、相当な身分の貴族や王族。果ては人魚まで紛れ込んでいる。


 その人達と縁を持ちたい人からすればこの会議はまさに最高の社交場なのだ。


 まぁ、話している内容は9割9分9厘白亜の話なのだが。


 残りの1厘でとんでもない内容が飛び交うのもいつものことである。


「先々週にご友人の国が潰れまして……」

「それは大変ですわね。吸収統合したんですの?」

「そんなところですわ。それより貴女の領も最近軍を鍛えているそうじゃない?」

「そうですのよ。一ヶ月ほど後に戦争を予定していますの」


 本当にとんでもない。ぶっとんでいる。


 しかもこの戦争の内容が10秒で終わるくせに数時間白亜の話で盛り上がれる彼女らの頭のなかは一体どうなっているのだろうか。


 素晴らしく白亜のことで埋まっているのは確かである。


 この中にハクアファンクラブとしてではなく、各国との繋がりが欲しいだけで潜入したりした人がいれば数分でにわかファンだと気づかれるだろう。


 勿論そんな人は試験の通過など不可能である。


 だが、彼女らからすればにわかファンが一番許せないのだ。


 白亜愛を示すことが出来ないことは彼女達からすれば『罪』である。ファンを装って近づいてくる者は多いが、それをやった瞬間に一生彼女らとの関係は築けないだろう。


 白亜を侮辱することは盗みや殺しと等しく『犯罪』なのだから。

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