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何故かコロシアム参加!

 数時間後にはかなり回復していた。相変わらず回復の早さはとてつもない。


「こうか……?」


 白亜が手を出すとそこに光が集まっていき、直ぐに発散する。


「駄目だ……形の維持ができない」

『未だあまり動いてはいけないのに何やってるんです?』


博識者エルディテ。お前が言っていた力ってのはこれだろ?』

『………』

『当たりか』

『何も言っていませんが?』

『お前の反応くらいわかるさ』


 白亜は真面目な顔をして心の中で話す。


博識者エルディテ……俺に、これの使い方を教えてくれ』

『私が知っている筈ないでしょう?』

『いや、お前は知っている筈だ。これに気づいたのはお前が最初だろう?』

『それは……』

『お前に、教えて欲しい。シャルルを助けるために。絶対必要なことだから』


『全く。お人好しも程々にしてくださいよ?良いでしょう。私がそれの使い方をお教えしましょう』

『ありがとう!』

『ただし、条件が1つ』

『な、なんだ?』

『私に、名前をつけてください』

『なんでやねん!』


 何故か白亜が突っ込みに回るという奇妙な展開だが、白亜はもうずっと前から考えていた。


『ククク。つい突っ込んじゃったけど。これからもよろしく。シアン』

『フフ。よろしく、マスター』


 シアンという名前を付けたのは、白亜の両親が、男の子だったら白亜、女の子だったら紫杏という名前を付けるつもりだったと聞いたことがあるからだ。白亜の両親も謎センスである。


「こう……こうか!」

『そうです。もう少しだして……そんな感じです』


 白亜はシアン指導のもと、たった1時間ほどでこの力を扱えるようになった。




「ただいま戻ったぞ白亜!」

「お帰り。どうだった?」

「違約金の数倍稼いで来たぞ!」

「……何やったんだ?」

「秘密だ!」


 白亜はお金は特に欲しいと思っていないので、別に良いか、と考えた。主人としては間違っている行為だが。




「いいか?」

「うん……良いよ。優しくしてね?」

「ああ。………っ!難しいな……!」

「ああっ!………ちょっと痛いけど………これぐらいなら」

「大丈夫か?頑張れ」

「無責任だね………はぁぅ!」


 声だけ聞いているとちょっとあれだが。今、白亜はシャルルを元に戻そうとしているところだ。


「くっ………!」

「い、痛い……」

「もう少しだ!頑張れ!」


 そんな声が途切れた。追い出されていたダイ達が中に入る。


「「「おお!」」」


 そこには完全に人間に戻ったシャルルと疲れて寝ようとしている白亜が居た。


「おやすみ……」


 寝る速度は早い白亜。


「やっと……やっと戻れたよ……」


 半ば放心状態のシャルルは床に座り込んで眠ってしまった。ダイが運んだが。



「どうやら使いこなせるようになったようだな」

「妾たちには資質は無かったものだからな。嫉妬しているのではないか?」

「いくら某がやっても出来なかったところに白亜はあっさりと登りおった。もう某など路肩の小石だな」

「それは妾も変わらぬよ」


 二人はどちらからともなく黙る。


「しかしあの魔族……これからも確実に白亜を狙ってくるだろうな」

「そうだろうな。白亜は未知数だらけの子供だからの。成長したらどんな奴の毒牙に掛かってしまうか……純粋なのは良いが、もう少し人を疑う目をもって欲しいの」

「某等も強くならなくてはならん。主人を守ることもできない従者ほど滑稽なものはない」

「確かにの。あの魔族。気付いたか?」

「魔王と言うことにか?」

「やはりわかっておったか」


 ルナが天井を見上げる。


「あれほどまでの力……圧倒的な威圧感。妾など開始早々気絶してしまったわ」

「某もだ……あそこで白亜が来なければ某は死んでいた」


 二人揃って溜め息をつく。


「白亜と魔王の力量は魔王の方が上回っていた。本気を出した白亜に、魔法の類いを一切使わずに白亜を弄んでいた」

「白亜も屈辱だろうの……きっと訓練の歯止めがきかなくなってしまうの」

「そうならんように某等がいる」

「妾たちも……負けてはおれんな」


 ダイが寝て、ルナが見回りに回る。いつもの夜の光景だった。





「んー!やっと動く!」

「異常ですよ。普通なら10日は掛かるほどの物だったのに」


 白亜に呆れるキキョウ。


「ハクア君。ありがとうね」

「ん」


 そういった白亜の顔は世の中の女性なら皆落ちてしまいなくらい、格好よかった。シャルルの顔が赤くなる。




「シュタウツストに来た理由を忘れてた」

「「「あ」」」


 どうやら全員忘れていたようだ。


「遺跡のか……某的にはもうどうでも良いぞ」

「そんなこともあったの」

「完全に忘れてましたね」


「まぁ、先ずはシャルルを送ろう」


 そういう話になり、シャルルの家の近くの森に転移する。


「そんなに使っても大丈夫?」

「なんか魔力がスッゴい増えたんだよ。全然これぐらいなら楽勝だ」


 シャルルの家は小さなカフェだった。シャルルがドアを開けるとカランコロン、と可愛らしいベルがなる。奥でおばさんがテーブルを拭いていて、こちらをまだ確認していない。


「いらっしゃい………シャルル?」

「うん……心配かけてごめんね、お母さん」

「シャルル!シャルルなのね!あなた!シャルルが!シャルルが帰ってきたわ!」


 両親に抱き付かれ嬉しそうな顔をしているシャルルを見送り、音もたてずに帰る白亜たち。それに気付かないシャルル。


「あ、そうだ!お母さん!この人が……あれ?ハクア君?」


 もう誰もそこには居ないのを確認したシャルルはクスリと笑う。


「もう。お礼もいってないのに。ハクア君らしい」


 カウンターには気力で作ったと思われるペンダントがおいてあった。



 その後、シャルルは恋人に会いに行き、その後直ぐに結婚したとか。白亜はそんなこと一切知らないのだが。




「で、帰ってきたけど」

「調べにいくか?」

「もうぶっちゃけどうでも良い」


 あれだけ解くのに苦労したのにシャルルの事件が大きすぎて他のことはどうでも良いと思っている白亜。因みにもう既にキキョウとルナは鞄に入っている。


『やりましょうよ。マスター』

「シアン……まぁ、いいか。これが終わったらちょっと休みが欲しいところだ」

「で、どこにいく?」

「楽園って言ってたもんな……」


「楽園ならあれではないか?」


 ダイが指差した先にはコロシアムがあった。


「出場しろってか?」

「そういうわけではなく。ほれ。名を見てみろ」


 そう言われたので遠視を発動させる白亜。


「パラダイス……」

「な?」

『悉く虚仮にしますね……』


 白亜とシアンの怒りは遺跡を作った奴に簡単に向いていた。


「ま、まあ!行こうじゃないか!」


 結局行くのだが。





「ヘー。地下からみれるんだ。見る気無いけど」

「そんなこと聞かれたら面倒なことになりかねんぞ」


 それはダイが正しい。



『さぁーて!始まりました!パラダイス名物拳闘大会!』


「ん。なんか始まったっぽいな」


 地下から見れるとはいえ皆基本的に上で見るので下は選手の通路くらいにしか使われない。


『今回は誰が勝ち残るのか全く見当がつかない!今回は特別ゲストに来てもらっている!王族でありながら第一線で活躍する戦士!』


「王族で戦士だってさ」

「うむ。民と共に戦うとは中々見所があるやつだろうな」


『甘いマスクと裏腹に武の王と呼ばれる男!』


「「え?」」


『ジュード・フェル・リグラートォ!』


「「ええええぇぇぇ!?」」


 走ってコロシアム観覧席に向かう二人。




「本当にジュード……なんで?」

「某に聞かないでくれ」


 コロシアムにはジュードとチコが立っていて、黄色い声援を浴びている。


「バレないうちに逃げようか」

「……だな」


『師匠!?』


 ジュードの声が拡声器に拾われてコロシアム全体に響いてしまっている。というか何故この距離で気付けるのか。軽くグラウンドの端から端までは離れている。


「なんでわかんの!?」


 まだバレてないと信じつつ小声で反応してしまう白亜。


『なんで師匠がここに……?』


 聞かないでくれと思う白亜の抵抗むなしく、チコがこちらに飛んできた。


「ねー、ハクア!何でここに居るのかってジュードが言ってるよ?」

「あー。うん……なりゆきで?」

「それは少し苦しいぞ白亜……」


 司会者が完全に反応してしまった。


『おおーっと!武の王の師匠がコロシアム内に居るらしいぞ!』


「もうやだぁ……」

「諦めろ」


『な、なんと子供!?』


 しかも司会者はちゃんとリアクションをとる。


「恥ずかしい……何でこの距離で気付けんの?」

「ハクアは目立つからねー」

「まじかよ」


『ここで私から提案なのですが、武の王の師匠さんにも参加してもらいたいのだが、どうでしょうか!?』


「「「ワアアアァァァ!」」」


 会場のテンションがどんどん上がっていき、逃げられない雰囲気だ。


「いやだぁ」

「覚悟を決めろ!白亜!」

「何でお前はノリノリなんだよ……」


 もう仕方がないのでコロシアムの方に歩いていく白亜。


「師匠!お久し振りです!」

「久しいってほどの時間じゃないけどな」

「師匠。目が……」

「色々あってな」


 もう逃げられない。


『今回のゲストはもう1人居るぞ!』


 ジュードのほかにも呼んだらしい。


『我がエルフ族の次期長にして、武の王と同じランバート学園特殊クラス!』


「え」


『あらゆる事を何でも華麗にこなし、敵にしたくない戦士ナンバーワンと言われる男!』


「うん……大体判ったよ」


『ヒノイ・ゼンテス!』


「ですよねー」


 白亜の独り言は誰にも聞こえていない。ヒノイがコロシアムに立つ。あまり着ない戦闘服を着たヒノイは中々様になっている。


「ハクア!?貴様!何故ここに!?」

「俺じゃなくてジュードに言ってくれ」


 叫ぶように話す二人を見て、


『おおーっと、どうやらヒノイ選手、武の王の師匠とも知り合いのようだ!これは益々面白くなりそうだぞ!』


「気にしないでくれ……目立ちたくないのに……隅で独りで本読んでたい……」


 白亜の独り言はやはり誰にも聞こえない。


『それでは一般の選手もカモン!』


 ゾロゾロと入ってくる。全員男かと思われたが、女性も1人混じっていた。というか、バトルロイヤル式で戦うらしい。共闘は原則なし、バレたら速攻で退場らしい。


『今回は女性騎士も参戦だぁ!これはどうなるのか全く予想ができない!』


「ああ、やだ。恥ずかしい……」


 因みに飛び道具以外何でも良いらしい。剣や斧は刃がそのまんまだ。恐怖を感じる。召喚獣等も認められているが、下手に目立つと後々本当に面倒臭くなりかねないのでダイ達には観客席に行ってもらうことになった。


「師匠!村雨はどうですか?」

「ああ、凄い良い刀だ。まぞ……」

「え?」

「あとで話すよ」


 こんなときに魔族の話なんて出したら誰が聞いているのか解らないのでやめておく。




『それでは良いかな?開戦!』

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