「勿論優勝しましたけど」
龍木です。前回最後にお伝えした通りリクエスト番外編を始めます!
今回は日本組のお話です。白亜と別れた直後から、賢人をメインに書いていこうかなと。
○○のエピソードを詳しく知りたい等というリクエストも受付中です!
リクエストを受けた順に書きますので少しお待ちいただく事にはなりますがそれまで暫くお待ちください。
まるで夢のような世界だった。そう誰もが言うだろう。
剣や弓が現役で、魔法が存在し、神という存在が実在するあの世界は。
最初は混乱しかなく、何故こんな目にと思うことしかなかったが、白い虎に出会ってからすべてが変わった。
神々しい空想上の動物たちに導かれて白亜に出会った。
あの時は極限状態で、少し乱暴に扱えば直ぐに息を引き取ってしまいそうなほどに弱っていて中々目を覚まさないものだから、死んでいないかと何度確認したかわからない。
悪魔のような容姿に死んだような目をした白亜という人は、歴史の授業で聞くような性格とはほど遠かった。
正義感が強く誰よりも優しいようなイメージがあったのに、見事に覆されたものだ。
実際は、空気が読めない天然記念物で相当なバトルジャンキー、おまけに眠いと直ぐに機嫌が悪くなる暴君だ。そのお陰でなんとかあの世界でも生きられたのだろう。
「ヤバイ……テストが、マジで……」
そう、あちらではなんとかなった。が、日本に戻ってきてからはもう大変という言葉では表せないほど苦労している気がする。
勉強なんてやらなければ忘れるし、魔物と戦う必要のないこちらではあちらで覚えたことなどそうそう役に立たない。
それにあまりにも力をつけすぎたせいで剣道部でも実力で浮いてしまっている。
身体能力が戻ったところで戦いの記憶は体が覚えてしまっているために大抵どんな動きにも対応できてしまうのだ。
白亜に扱かれたお陰で普通になったはずなのに人間離れしてしまっているのだ。
「頑張れー」
「優奈……お前は大丈夫なのかよ」
「なんとかね。一回やったことだし」
「マジかよ……」
項垂れる賢人。
その後も一人教室に残って勉強する。
……結果は……想像通りのものだったとしか言えない。
パン、と小気味よい音が響き渡る。
その数秒後にかん高い電子音が鳴った。
賢人は息をつきながら竹刀を下ろして礼をする。
面をとると熱気に当てられて火照った頬に涼しく爽やかな風が撫でるように過ぎていく。
「あっつ………」
「お疲れ」
「おつ。そっちは?」
「勿論優勝しましたけど」
「だよな」
表彰状を見せながらニヤリと笑ってみせる桃花。
「これだけ大会で勝ってれば面接とかも楽だもんね」
大学のスポーツ推薦なども十分狙えるだろう。
既に話がきている大学もある。
「っと、そろそろ戻らないと。表彰式あるしな」
「行ってらー」
表彰式の後、二人で賞状を持って写真を撮った。それを白亜に送ったら二日後に手紙が届いた。
丁寧なまるで印刷したように真っ直ぐ揃っている字で、
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二人とも全国大会優勝おめでとう。
祝いの品として昨日近くの湖で捕まえた蛸の料理を送ります。
相当大きいので皆で食べた方がいいと思う。
頑張って。
白亜
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と簡単に書かれていた。
蛸料理、それも相当大きいということは一抱えの鍋くらいあるとかそんなものなのだろうか?
確かにあちらの世界はなにかしらサイズがおかしいものが多い。
人サイズの蛸がうようよいてもなにも驚くことはないだろう。
「ダイオウイカより大きいのかな」
「あれはイカだから……」
深海に棲む巨大軟体動物を思い出しながら帰路についた。
ちなみに蛸は使い捨てのアイテムポーチのなかに入っている。本当にあちらのものは便利だ。物理法則を無視できるのだから。
その代わり細かいところに手が届くのは日本だろう。
リグラートでは電話をかけるのさえ相当手間がかかる上にコストが高すぎて使い物にならない。魔力が生まれつき低い人には扱うことすら不可能。
あっちが完全に個々の能力に頼っているとすれば、こちらはできる範囲は小さいが誰でも使えるのが利点だ。
使い方さえ覚えてしまえば生まれたての子供でも扱うことは不可能ではない。
「蛸料理ってなんなんだろうね」
「たこ焼きとか」
「いいねー。そのまま焼いたのも好きだけど」
茹でて味噌をつけるやつもいいなぁ、と二人で話し合っていると、目の前に一人同い年くらいの男子が現れた。
「おい、賢人! なんなんだよ今日の試合は⁉」
「えっと、どちら様?」
「お前のライバルだろうが!」
「ライバル? 誰?」
まさかの賢人が把握していないということになっている。
「横山、航大だよ!」
「………あー! 思い出した。いつも決勝までくる人」
それぐらいは覚えてあげなさいよ、と軽く賢人を睨み付ける桃花の視線を軽く受け流しながら賢人は航大に目を向ける。
「で、なに?」
「なんなんだよ、あの動きは! 舐めんなよ!」
「どういうこと?」
「明らかに手を抜いてただろお前」
「手は抜いてないよ」
そう、手は抜いていない。ただ、自分に制限をかけただけだ。
賢人が一番よく使う方法は竹刀で一旦相手の竹刀を弾いてから小手に一発いれるものなのだが、今回賢人は一度も小手を狙っていない。
白亜に言われたようにと自分の最もやり易い戦法を封じたのだ。見慣れたものからすれば手を抜かれているようにも感じるだろう。
だが、それでも賢人はいたって真面目であった。もし負けてもこれが全てではないと知ったからだろうか。
今まで目の前の試合にしか集中していなかった賢人が次の試合を気にするようになったのだ。
なんという心境の変化だろうか。
それを自覚している賢人は航大に、
「俺はいつも真剣だ。手は抜いてないよ」
ただそう一言言ってその場を去った。
日本組皆を集めてから庭でポーチの蓋を開けた。
出てきた蛸の量は一抱えではない。
船丸々一隻分だと言われても不思議ではないような大きさだった。
「なぁ」
「え?」
「これって大きいって言わないよな」
「うん。化け物って言うんだよね」
とてつもない量の蛸たちは次の日の祭りの屋台で売りさばかれた。
たこ焼きとして。




