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白亜VS魔族!

「おー。さっぱりしたね」

「なんか不思議な感じ……」


 髪がさらさらにになり、血が落ちてとても綺麗な女性になった。


「うむ。美しいな」

「口説くつもりかの?見境がない」

「な!」


 白亜は年長組のコントをスルーし、


「俺は白亜。その精霊がキキョウで、あっちの精霊がルナ、ルナと言い争ってるのが俺の召喚獣のダイ」

「私はシャルル。迷惑をかけてごめんなさい」

「いや、良いよ?俺たちはここに依頼で来たんだ」


 ここに来た経緯を一通り話した白亜。


「そうだったの……」

「ここに住んでるの?」

「私はここじゃないわ。たまたまレッドスネークを使役できたからここに居ただけ」

「じゃあ外のは全部レッドスネークがやったのか?」


『それは違います』

『なんで?』

『レッドスネークは獲物を全て巣に持ち帰る習性があるのです』

『成る程。でも死んだ奴等は自然死でもなさそうだし……』


「えっと?どうしたの?」

「え?ああ。ごめん」


 相変わらず会話が止まる。


「先ずは治さないとね」

「ええ……ごめんなさい。こんなことに巻き込んで」

「良いよ?どうせ暇してるし」

「でも遺跡のーーーブッ」


 ダイが空気を読まなかったので白亜の手が見えないほどの速度で射出され、吹き飛んでいった。


「ごめん。話の続きをしようか」

「え、ええ……」


『アンデットから治すことってできる?』

『彼女が死んでからなったわけではないのでいけると思います』


「ほんとか!」

「へっ?」

「あ、何でもない」


 つい声に出してしまう白亜。


『俺でもできるか?』

『可能かと。ただ、ご自分の力に気付かれていない今は無理だと思われます』

『どういうこと?』

『貴方はご自分の力に気付かれていない』


 ダイとルナが話していたことと同じことを言う博識者エルディテ


『俺の……力?』

『はい。私でも気力でも魔眼でも、魔晶属性でも、チカオラート様が下さったチートでもない。貴方の本当の力』

『そんなの、俺は持ってない』

『気付かないだけ。ダイとルナは恐らく気づいているでしょう』


 あの話も聞いていないのによくわかるものだ。


『これは、貴方が見つけなければいけないことなのです』


 それっきり博識者エルディテは喋らなくなった。




(俺に力なんて無い……ただ貰った力を自分の力っぽくしているだけ……おれ自身のものなんて……何も)




 白亜は混乱していた。自分の力量は白亜が一番よく知っている。毎日体を痛め付け、自分の限界をしっかりと認識している。


「ハクア様……」


 キキョウは白亜と出会って1年も経っていないが、かなり白亜の事は判っている。それ故にこの旅に出て本当に良かったのか自問自答するようになった。遺跡では取り乱す姿を初めて見た。爆笑している姿も、輝かんばかりの笑顔を見せたときも、悲しそうな顔をしている時も。


 白亜はこの数日で大きく変わった。感情と言うものが殆ど見えなかった白亜だが遺跡に行ったときからほんの少し笑うようになった。自分の考えをはっきり言うようになった。


 だからこそ、キキョウは戸惑っている。これでいいのか。急激に変わりすぎて白亜の人格が壊れてしまわないかと。それを最も怖がっている。自分が死ぬことよりもずっとそれを怖がり恐れている。


 また、なにか変わってしまったら。今度こそ自分が捨てられてしまうかもしれない、白亜の考え方が変わってしまったなら、きっと自分は要らないと言われる。と。



「キキョウ……大丈夫かの」

「あの様子だと白亜の力が覚醒されるのを止めに行くかもしれないな」

「それならそれでいい気もするがの」

「うむ……しかしシャルルとか言う娘を助けたいならあの力は必要だろう。キキョウがどう出てくるかが問題か……」

「ダイ。お主面白くなってきたとか考えてはおらぬよな?」

「そ、そんなことは無い」


 完全に思っていた。


「妾達も一肌脱ぐか?」

「そうだな。あの様子だと一向に力に気付かないだろう」



 白亜は必死に考えていた。周りが気付くなら自分だって気づけるだろうと。しかしいつまでたっても答えがでない気がして考えるのを中断しそうになる。


「そういえば……勇者化ってなんだ?」


 かなり今さらだ。


「勇者化っていうのは人間の能力を一気に底上げする実験なの。私みたいにアンデットになっちゃった人はまだ良い方。完全に魔物になってしまう人も居て……その人は殺されるの。誰にも知らされずに」

「……」

「私も殺されそうになったけど、なんとか飛んで逃げたわ。捕まってたら今ごろ私は死んでるわ……」

「何て話だ」

「勇者化の実験に成功した人はね?一生苦労せずに生きていけるの。奴隷なんかがよく実験台になるらしいわ」


 それが自分の意思なのがまた怖いところだ。


「貴方も狙われるかもしれないわ」

「どうして?」

「身体能力が極端に高かったり魔力が多かったり魔眼を持っていたり……そういう人の方が成功例が多いのよ」

「うゎあ。絶対やだ」

「私はあの人にお金を渡すためにこれをやった。勇者化の実験に成功したら莫大なお金が入る。失敗しても遺族に一応支払われるから、国も手出しできないのよ」


 シャルルはどこか遠いところをみる。


「じゃあ、絶対に治さないとね」

「そうね。期待してるわ」



 突然、大きな音がした。何かが爆発したような音。


「ここであってるんすか?」

「間違いないって」


 そんな声が聞こえてくる。


「誰か来る。隠れて。キキョウ!シャルルを隠して奥へ!」

「お任せを!」


 小声で話し、シャルルを隠す。


「被りか?」

『恐らく』


 被りというのは依頼を違う人が同時に受けてしまうことだ。


「白亜。某等はどうする?」

「俺の後ろに控えてくれ」

「判った」



「ん?誰だぁ?」

「こんにちは。冒険者の方ですか?」

「なんだ?ガキか?」


 男三人パーティだ。


「こんなところになんでガキが居るんだ?」

「依頼できました」

「「「ギャハハハハ!」」」


 下品に笑いだした。


「こんなガキがか?笑わせるな!」

「笑わせる気はないです。貴殿方は何のご用でここに?」

「魔物退治だ。お前みたいなガキには到底出来ないことだ」

「なんの魔物ですか?」

「さぁな?ドラゴン辺りだったら受けるぜ?」


 何をいっているのか判らないが、多分白亜にドラゴンがいるかもしれないからここから出ていけと言いたいのだろう。


「こんな感じのですか?」


 白亜は何もない空間からランドドラゴンの死体を取り出す。


「「「ランドドラゴン!?」」」

「しかもこのガキ……空間魔法使えるのか?」

「後ろの男が倒したんだろう」

「何者だ。このガキ」


「もうここに居たレッドスネークは外に逃げました」

「レッドスネーク……」

「これで貴殿方の依頼は失敗ですね」

「な!」


 白亜は速攻で話を終わらせて背を向ける。


「なら!依頼達成させるためにガキを始末しなきゃなぁ!」

「はぁ……学がないのはこれだから困る」


 白亜の足が消えた瞬間、冒険者の男が前方へ吹き飛んでいった。


「やります?」

「「ヒィ!」」


 残りの二人も出ていった。




「がっ……!」


 白亜の背から短剣が飛び出ていた。


「白亜!」

「ハクア!」


 白亜は冷静に短剣を引き抜く。


「グッ……マジで痛い」

「ハハハ!」


 そこには、魔族が居た。ただ、あの白亜が学校で捕まえた魔族ではない。


「俺は……魔族に会いやすい運命でも背負ってんのかよ……」


 大地の癒し(ヒール)で回復し、改めて向き合う。


「誰だ。お前は」

「僕?聞いちゃう?聞いちゃう?」

「答えろ」

「そうだねー。正義の味方とでも言っておくよ」

「あっそ」

「無関心だねー。正義の味方だよ?」

「正義は価値観によって大きく変わるものだ。そんな不確かなもの、俺は信じない」


 魔族が手を叩いて笑いだす。


「面白いね君。本当に子供?」

「知るか」

「もっとお話ししようよー」

「刺してきた相手とじっくり話したいやつがどこにいる」

「お!こりゃ1本取られたね!」


 笑いだす魔族と真顔で冷静に話し続ける白亜。なんとも言えない雰囲気だ。


「で、なにしに来た」

「暇潰しだよ?ここに魔物が居るって聞いてね」

「帰れ」

「ねぇ。君。僕と一緒に来ない?」

「ふざけるな。何言ってやがる」

「酷いねー。君の望み、叶えてあげられるよ?」


 白亜の反応は無い。


「望みなんて無い」

「無欲だねー。気に入った。ますます気に入った」

「帰れ」

「君を、手にいれたら、ね?」


 そういった瞬間、魔族が消えた。


「なっ!」


 白亜はとっさに気力で盾を作り、剣を止めた。


「なにそれ、魔法?見たこと無いや。ますます面白いね」

「くっ……」

「これでどうかな?」

「ぐぁ!」


 白亜が吹き飛ばされた。


「白亜!どうなっている!」

「かなり強いね、あの子。君はあの子を守れるかな?」


 ダイとルナが交戦を始めた。ルナが無詠唱で火魔法を放つ、が。


「火魔法を無詠唱で?イフリートかな?」

「妾の魔法が……!」

「ごめんね?僕、全く魔法は効かないんだ。その代わり、自分も魔法が使えないんだけどね?」

「たぁ!」

「おっと。君、人間じゃないね?」


 ダイの攻撃を軽々と避ける魔族。明らかに劣勢だ。


「グッ……キキョウを!」

「させないよ?」


 実態の無い筈のルナが吹き飛んだ。


「ルナ!?」

「フフフ。流石はイフリートだね。普通なら存在事態が消えちゃうような攻撃なのに」


 そのとたん、魔族が消えた。入れ違いに片目を瞑った白亜がダイの視界に入る。


「白亜!」

「すまない。もう少し左目は時間がかかりそうだ」


 魔族が壁に当たってクレーターをつくる。


「ははは!痛いな。面白い。久し振りにまともに喰らったな」

「全然効いてないか……」


 白亜の右手に気力がたまっていく。


「身体強化、最」


 一瞬白亜の体が光り、急激に成長する。


「白亜!それは1日に2度以上は……!」

「判ってる。でもこうするしか勝ち目はない」


 魔族は白亜を見て目を丸くする。


「おお!成長できるのか!何て面白い!」

博識者エルディテ……まだか……」


 魔族が白亜に襲いかかる。白亜は冷静に対応し、攻撃を避け、弾き、カウンターを放っていく。カウンターしか放てないのは白亜がそれだけ追い詰められていると言うことだ。


 しかし、魔族の方も完全に上位に立っているわけではない。白亜の攻撃も当たらないが魔族の攻撃も当たらない。互いに1回下がる。


「白亜!」

「大丈夫だ。気を抜いたらやられるだろうけど……ルナは?」

「問題ない。気絶しているだけだ」


「ふぅ、ふぅ。何て強いんだ。面白い。面白いよ。あの子」


 白亜は魔族に研究対象として好かれやすいようだ。


「グッ、ゲホッ。カハッ」


 白亜が吐血した。


「白亜!もう限界だろう?」

「はぁ、はぁ……大丈夫。左目が間に合えば……勝機は来る」

「なになにー?血吐いちゃった?その体を大きくするやつ、かなり体に悪いみたいだね?止めたら?」

「止めたらお前に勝てない」


 ボロボロの体に鞭を打つようにして立ち、第2ラウンドが始まった。

 白亜がだしたランドドラゴンは創造者クリエイターで造ったものです!

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