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無気力超能力者の転生即興曲  作者: 龍木 光
英雄の生まれかわり
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「飲み会でね」

 全然更新できず、ごめんなさい!


 卒業式やらテストやらで行事重なりまくって、もしかしたら3月中頃まで更新できないかもしれません。


 先に謝っておきます。ごめんなさい……


 なるべく早く書きますので暖かい目でお待ちください。


 書けそうだったら活動報告でお知らせします。

 電車が止まって中から人がぞろぞろと降りてくる。結構な騒ぎになったので駅員も来ているようだ。


『どうします?』

(あ、時間ないな……逃げるか)


 普通にことの顛末を話そうかとも思っていたが自分が動いたところは全て運転手が見ているだろうし、時間が本当にないのでメモに何があったのか即座に書いて、


「はい」

「えっ?」


 走ってきた駅員に渡して改札にダッシュ。どう見ても逃亡である。


「ちょ、君⁉」


 勿論追いかけてくるが最初から既に距離は開いているし、大分ゆっくり走っているとはいえ本当の意味で人間じゃないリシャットに追い付けるはずもない。


 しかも周りの人に不審がられないように人混みに上手く紛れて走っては歩きを繰り返して完全に撒くことに成功した。


 振り向かなくても相手がどこにいるのかわかるのも大きな強みだっただろう。


【逃げて大丈夫なんですかね?】

「どうせ俺のやったことは運転している人が見ている。それ以前に俺が下に飛ぶ前からこっちをみていた人もいた。その人が証言してくれればそれでいいし、落ちたことを俺のせいにされても認識阻害はかけたから問題ない」

『認識阻害は電車に乗る前からかけていて正解でしたね』

「練習にもなったしな」


 鞄からワイヤレスのイヤホンを片耳だけ取り出して耳に付ける。耳に直接音が届くイヤホンやヘッドホンは音が大きすぎて苦手なのだが、今回はかなり音量を下げているので問題ない。


 リシャットは一瞬両目を瞑り、どこか一点に目を向けてそちらに歩き、進んだところでまた目を瞑り歩く。


 周りからすれば変な動きをしているようにしか見えないだろう。リシャットは何度も同じ道を進んでは戻り、脇道に入っては大通りに戻る。かなり謎な行動を繰り返す。


(記録は)

『とってます』

【図と照らしてます】

(ならよし。二人ともちゃんと見直せるように記録してくれよ)

【『了解です』】


 気付けば日は沈み、夜になっていた。街灯に明かりがつき、ビルの窓ガラスから白い光が漏れ出ている。


 それでもリシャットはまだ歩き続けていた。疲れることがあまりなくなったので余計に時間を忘れやすくなっているというのもあるがまだやることは残っているのだ。


「……聞こえなくなった」

『今日はここまでですね。これまで調べた分を合わせればもう少し正確な道順が割り出せるかと』

【じゃ、帰りますか】


 三人で同時にため息をつきながら目を伏せる。それの意味を知るものはこの三人以外にはいない。


 子供だと家出だと言われかねないので大人バージョンで帰路につく。コンクリートの地面からは一切の音がしないが仕事帰りで浮わついている空気の周囲がそれに気付く筈もない。


 この時間帯は帰宅途中の会社員だけでなく様々な職業の人間が外にいる。


 学生のカップル、居酒屋の呼び込みをする男性、それに止められて店に入っていくOL。


 そのなかにまさか神が紛れているなどとは誰も気づかないだろう。そう、普通の人間は。


「………なんでここにいるんですか」

「飲み会でね」


 リシャットに近づいてきたのはあの出雲大社の主神、大国主大神だった。


「飲み会って………」

「大神で集まってたまに飲み会に行くんだよ。あ、君も来る?」

「……結構で―――」

「よし、そうと決まれば行こう!」

「俺行くって言ってない………」


 なんだか嫌な予感がするが、別に今すぐ帰らなくてはならない用もない上に、この人には言葉が通じないということを何となく理解してしまっているので仕方なく引き摺られていった。


「久しぶりー」

「お久しぶりです。ところでその方は?」

「あ、この前時空神に成った人だよ。神名はまだないけど」

「ということはまだ下級神ですね。それでもとてつもない力を感じます………!」


 どう見てもただの会社員達の飲み会に放り込まれた。しかもリシャットはこの前の神格化の際に判明したがかなり酒に弱いことが判明している。


 溶け込める気がしない。


 座敷の席のど真ん中に座らされて、人付き合いが得意な方ではないリシャットは縮こまって軽く震えている。


 大国主大神がこんな感じなので分かりにくいが周りにいるのは全員が大神。要するに最下級の神であるリシャットの上司にあたる人しかいないのだ。


 平社員が大企業の社長の集まりに一人放り込まれたような図である。


「はじめましてぇ。黄泉津大神(ヨモツオオカミ)ですぅ。イザナミって言った方がわかりますかぁ?」

「あ、古事記の………」

「そうですよぉ。よろしくお願いしますぅ」

「よろしくお願いします……。リシャット、です」

「かわいい!」

「わっ………⁉」


 抱き着かれてどうしたらいいのかわからず焦るリシャット。それが女性陣の母性を刺激したようで、取っ替え引っ替え撫でられたり頬をつついたりされて精神的に参ってしまった。


 死んだようにぐったりしているリシャットだがそれに気付く人がいる筈もない。全員人ではないが。


「ねぇ、これ食べる?」

「何か飲む? 奢ってあげるよ?」

「お小遣いあげようか?」


 扱いが女性に群がれるイケメンというより近所のおばさんに囲まれる小学生である。というか、小動物を愛でるおばさん軍団というのが一番正しい例えかもしれない。


 しかも賽銭で金があるぶん、財布の紐が弛いらしい。


 それもその筈、リシャットは何度も転生を繰り返して数十年生きてはいるがここにいるのはその更に数十倍生きている神達である。


 リシャットは彼らから見れば生まれたての赤子扱いなのだ。


 小動物感覚なのも頷ける。


 問題はそこではない。目の前にいる男性陣である。


 目が殺しに来ている気がする。


 リシャットを愛でている女神の中には結婚済みで子供も産んでいるようなものもいるわけで、旦那が目の前にいるのである。


 嫉妬と憎悪にまみれた視線を受け続けるのには慣れてはいるが、この面子にされると精神的に殺られる。


「え、えと、その、私女ですから、ね………?」

「「「…………」」」

「嘘じゃないですよ………?」


 ザクザクと、視線のナイフを全身に受けながら目を逸らした。


(なんでこんなことになってるんだよ……)

『私に言われましても………』


 しかも面倒だと思ったようでライレンは早々に逃げ出していた。いい判断ではあるが、かなりの薄情ものである。

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