表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/547

白亜VSヴァンパイア!

 遺跡の周りには相変わらず雲海が広がっていた。だが、そんなに寒くはない。夏というのもあるが。因みにダイは半袖だが白亜は薄いパーカーを羽織っている。ダイとの契約の時に全身に広がってしまった模様を隠すためだ。


「涼しいな」

「妾にはわからぬが」

「イフリートだしな」


 朝食をとる四人。


「読めたのか?」

「……判んない」

「解けたのだろう?」

「ふざけてるのか判んないけど。なぞなぞなんだよ」

「「「なぞなぞ?」」」


 白亜は日本語で書いてある答えのしたにこの世界の言葉で翻訳し、見せる。


「む?某等で遊んでおるのか?」

「なんですかこれ」

「妾達を嘲笑うような文だの……」


【はーい!お疲れー!良く解けたねー。褒めてあげる(笑)。そんじゃあ問題だよ!地下の地下の空の上にある楽園ってなーんだ?】


「イラッとするでしょ?」

「ああ」

「ですね」

「(笑)……」


 誰がこんな回りくどい事をしているのかは不明だが、確実に白亜達をバカにしたような言いようだ。


「地下の地下の空の上って地下じゃん」

「星の反対側って事でしょうか?」

『違うと思います。それにしては安直すぎるかと』


 博識者エルディテも結構酷い。実は白亜と共に解読していたのだが、この文を先に見つけ出したのは博識者エルディテだった。これを読んだ瞬間物凄い剣幕で怒ったとかなんとか。


「でもこんな文書くやつだよ?安直すぎても良いんじゃない?」

「そうだな」


 白亜達はなぞなぞを解くのに1時間掛かった。



「で、結局ここか」

「多分な」

『恐らく』


 白亜は地図を広げてある場所を指差していた。


「エルフの里……シュタウツスト」

「エルフですか」


 エルフは人間に高圧的で見下してくる事が多い。ジュードのような人種は珍しいのだ。ヒノイのような性格の人が多いだろう。


「それに、最上級精霊が二人もいるとな……」


 以前ジュードが土下座したように最上級精霊とは猛烈に敬わなければならない存在だ。エルフや妖精なんかは精霊の下で働くことが多く、精霊は絶対的に敬うべき存在として認識されている。


「変身すればよかろう?」

「本能で悟ってしまうんです。私も何度か……」


 二人を白亜が連れていくとバレたとき最悪牢に入れられかねない。ヒノイのように操っているとか考えるエルフも少なからず居るだろう。


「行かないってのもちょっとな……」


 ここまで頑張ったのに行かないのは勿体無い。


「どうするべきか……」




 結局。


「鞄のなかに妾達が隠れれば問題ないであろう」


 というルナの言葉通り鞄のなかに二人を押し込める形になった。見えなければ判らないとはいえ、かなり大胆だ。


「よし。転移」


 そういった瞬間この場から四人全員が消えた。それを見たものも居ないわけではあるが。


「ごめん寝る……」


 家の近くの森に転移し、白亜は眠ってしまった。


「せめて川辺に行きましょうか」


 キキョウの言葉により奥に入っていく四人。1人はダイのお姫様だっこ状態だが。


「ここです」


 キキョウはこの辺りをよく知っている。迷うことなど無い。


「あそこに寝かせるぞ」


 穏やかに寝息をたてる白亜を乾いた岩の上に優しく置くダイ。


「こんなに気持ちいい場所があったとはの」


 ルナがのびをする。因に白亜は魔力を使いすぎて寝てしまっているのであって、それ故に直ぐに回復する。回復の速度は年々上がっており簡単な魔法なら永遠に打ち続けることが可能なほどになった。ただ、魔力量は直ぐに回復するだけであり、とんでもなく多いわけではない。


「これから成長したら白亜はどうなるか」

「この年でこれ程まで魔法の使い方が上手いのは前世のお陰ではないよの」


 白亜は自分の強さを前世があるから、と考えている。白亜本人は自分の力の強さに全く気づいていない。


「んぅ……」


 白亜が起きたので会話が中断された。


「おはよう、ハクア」

「ルナ。おはよう」


 キキョウがいないことを確認した白亜。すると、


「取ってきました」


 キキョウがウンディーネ形態で水から出てきた。


「どうぞ。魔力草です」


 魔力草は湖の底に生える草だ。魔力を回復できることで有名で、生命力が高く、またそれなりに美味しいため人気がある。


「ああ。海苔」


 白亜から見たら完全に海苔なのだが。ルナが炎でパリパリにする。海苔はこうやって作るものではないが、異世界はこうなので白亜も火で炙って食べるようにしている。


「お。旨い」


 美味しいほど魔力が籠っていると言われている。



「さて。もう出発するか」

「はい」


 キキョウとルナは早速馬になり白亜とダイが跨がる。もう大分馴れている。





「今日はここで良いか」


 夜営地を決め寝て、起きて移動して……の繰り返しに大分飽きてきたダイ。因みに遺跡からでてもう既に5日は経っている。


「まだか?」

『今日中につくと思います。もうしばらく』


「我慢しようよ」

「白亜。依頼!依頼を受けたいぞ!」


 もうすっかり冒険者稼業が気に入ってしまったダイである。




「もうすぐだ。降りて歩こう。ルナはダイの鞄に。キキョウは俺の鞄に入ってくれ」


 二人が入ったことを確認し、歩いていく。たまにエルフらしき冒険者や商人とすれ違う。


「綺麗だな」

「美しいな」


 そこには真っ白な壁の家々が綺麗に整頓されて並んでいた。


「ヨーロッパの写真で見たことあるような風景だな。こっちの方が断然綺麗だけど」


 真っ白な家々と、石畳の道路。エルフ達が行き交い、話をしている。全員美男美女。さすがエルフ。女性は胸が見えなかったのは白亜はスルーした。別に白亜は女性に興味はない。男性にもない。今まで人とあまり関わらなかったため、そんな関係になるひとが居なかったのだ。


「ギルド!ギルドは!」


 もうそんなこと気にもしていない人が1人いたが。




「人間よ……」

「薄汚い……」


 そんな声があちこちから聞こえてくるが、ダイは依頼のことしか考えていないし、白亜はそんなこと全く気にしないタイプなので完全に無視だ。



 ギルドに着き、人間用のカウンターにいく。


「えっと、迷子ですか?」


 今度は男性職員に言われた。


「仮眠室を取りに来ました」

「ぼ、冒険者だったんだね。ごめんね」

「はい。部屋は空いていますか?」

「空いてるよ。チケットかなんかある?」


 1日分のチケットを渡す。


「確かに」



「白亜。これはどうだろうか」


 森の討伐依頼だった。明らかに危険な臭いがする。人間用と書いてあると、特に。


「ランク不問……条件には合うからこれで良いか」


 白亜達に敵う魔物などいないと思うが。





「これでしたか……」


 所々に人間の頭蓋骨っぽいのが転がっている森だ。


「怪しいどころじゃないじゃん」

「さぁ!いくぞ!白亜!」


 ダイはノリノリだ。


「はいはい。行きますよ……」



 奥に行く度に骨が増えていく。たまに血の痕なんかも見える。


「うわー。ねぇ。これ大丈夫?」

「大丈夫です。私達が付いていますから」


 人気がなくなったのでキキョウとルナは外に出てきている。


「禍々しい気を感じるの……」

「面白くなってきたぞ!」


 この二人はもう放っておくしかない。


「はぁ……」

『もう諦めましょう。白亜様』

「うん……」


 確実に何か居そうな雰囲気の洞窟を発見した。森の中なのに魔物が1匹も出てこないことも不自然だが、この洞窟の中からは嫌な気配がした。


「……行くの?」

「勿論!」


 ダイのテンションに着いていけない白亜。


「判ったよ……」



「地よ。岩よ。我にその姿の全貌を見せよ。探索(ソナー)


 白亜が洞窟の壁に触れながら詠唱をする。この魔法は地形等を読み取る物で、迷宮用に開発したものだ。


「あっちだ」

「本当に魔晶属性とは便利だな」


 罠なども回避可能だ。とはいえ、地形を調べる魔法なので魔物の位置などは判らない。


「あー。なんか来たね」


 白亜が指を指した先にはレイスがいた。


「レイスか……どうする?」


 レイスは死霊だ。幽霊だ。物理攻撃は効かない上、精霊魔法も効きにくい。白亜の魔法は自然を使った物理魔法が多いのであまり効かない。精霊魔法も効きにくいとなれば古代魔法しかないのだが。


「某がやろう」


 ダイの手には電気の塊のような物が浮いていた。あれが蒼白かったら気弾に見えるだろう。


「よ!」


 レイスが消えた。


「え?」

「あれには聖魔法も含まれていてな。アンデットによく効く」


 聖魔法はアンデット系の魔物によく効く魔法で、どんな属性にも魔法によってはある。簡単に言えば、魔法に聖魔法が付与される。白亜の大地の癒しグランド・レズラクションも聖魔法に入る。


「へー。じゃあダイ頼むな」


 丸投げした。



 ダイの魔法で無双していた白亜達は遂に最深部へ到達した。相変わらず真っ暗だが白亜は魔眼があるし、後の3人は人外な訳で。一応明かりは有るが特に必要なかった。


「なにか聞こえる」

『油断なさらぬように』


 気を引き締めて通路を抜ける。そこには真っ赤な巨大な蛇と女がいた。女は異様な形をしていた。


「シャー」


 白亜たちの居場所が蛇にばれた。女が振り返った。きれいな顔立ちだが、髪は腰まであるのにボサボサでその色は真っ赤。背からは蝙蝠のような翼が生えている。目は魔眼ではないのか黒色だが、血走っている。年齢は17歳前後位か。


「……」

「………」


 全員が固まって動けない。


「殺したい。殺したい。何もかも。全て!」

「っ!不味い‼逃げるぞ!」


 突然殺気を振り撒いてきたため、白亜達が逃げる。


『あれはなんだ!』

『恐らく、ヴァンパイア!』


ーーーヴァンパイアーーー


・最上級アンデット

・人間や動物の血を吸い、吸った相手を使役する。ただし、上級の精霊や魔物などはその効果は効かない

・魔法が強力なので出会ったら死を覚悟すべし

・相手の生命力を下げる効果を持つ魔法を使える

・元は人間である事が多く、強い憎しみや悲しみでアンデットになる


ーーーーーーーーーーーー


『上級の精霊や魔物などはその効果は効かない!?俺からしたら無理ゲーじゃねーか!』


 白亜以外の3人は比較的安全らしい。


「強い憎しみや悲しみ……」


 何となくそれが引っ掛かる白亜。出口に向かって走るが真っ赤で巨大な蛇が行く手を阻む。


「これは……レッドスネーク」

「ダイ!知ってるのか!?」


ーーーレッドスネークーーー


・赤色の巨大な蛇

・戦闘能力は非常に高く、火属性の魔法も使ってくる

・鱗は高額で売れる


ーーーーーーーーーーーーー


「……!分が悪すぎる」

「白亜!転移は!」

「無理だ。ここの座標が判らないと転移は出来ない」


『非常に難しい問題です。ここは交戦すれば良いかと』

「殺さないって方向は?」

『極めて、難しいです』


 白亜が全力を出せば倒せる相手ではあるが殺したくないという気持ちからこんな事態に陥っている訳で。


「………判った。殺す気でいこう」

「「「了解」」」


 白亜は手に気力を集める。


「身体強化、最」


 それを胸のところへ持っていくと白亜の体が一瞬光り、急激に成長する。


「久しぶりに見ましたね」

「そんなこと言ってられないよ?そっちは頼んだ」

「任せろ」

「了解しました」

「妾が本気を出せば造作もない」


 体に馴れないのか首をゴキゴキとならしながらヴァンパイアに向き合う。


「ヴァンパイアさん。なにが悲しいんですか?」

「殺す。殺す。殺す。殺す。殺す」

「……貴女がその気なら此方もやらなければなりません」

「全部壊して。あの人を……あの人を‼」


 その目は、両親を失った直後の白亜と同じだった。白亜はそれを知ったため殺したくないと思ったのだ。


「……俺もね?大切な人を殺されたことがあるんだ」

「殺す。殺す。殺す」

「辛かったよ。何で自分が生きてるんだって。何で自分が死ななかったんだって。毎日思ってた」

「………」

「力がないからだって。それが悔しくて。力がない自分が憎らしくって。やっちゃいけないことに手を出しちゃった」

「………」


 白亜は一息おいてから、また話し出す。


「力が手に入っても結局は駄目だった。毎日毎日復讐の為だけに生きていたんだ」

「……ふく、しゅう」

「それでも、敵わなかった。力には勝てなかった」

「じゃあ、わたしとあなたは……いっしょじゃない」

「そうだね。同じかも知れないね。俺は勝てもしなかった」

「………」

「でもね?大切な人が沢山出来たんだ。自分の力の無さを否定して、一緒に居てくれる人が」


 白亜の目を見つめるヴァンパイア。その目は涙で潤んでいた。


「俺はね?その人たちに恩返しができなかった。ただ最後まで足掻いて、皆に迷惑をかけながら死んじゃった」

「しん……だ……?」

「そう。死んだんだ。俺はもうその人たちに恩返しが出来なくなっちゃった」

「恩返し……」

「貴女は死んでいないんでしょ?まだやり直せるんでしょ?」

「あの人に……あの人に会いたい」


 そう言って顔を押さえて泣き始める。


「まだやれることがあるなら。やっておかないと絶対に後悔するよ。経験者の話だから確実にこれだけは言える」

「でも……私はもう人間には戻れない」

「どうして?」

「だって……勇者化の実験の失敗作だもの……アンデットになっちゃって。本当に情けない」

「まだ、遅くないんじゃない?戻る方法だってきっとある」


 根拠の無い自信を見せる白亜。


「諦めるのは、死んでからでいい。今は……貴女自身がどうするべきかしっかり考えるべきだ」

「どうするべきか……」

「アンデットになったから終わりなんて考えが甘すぎるよ?死んで尚、人に尽くしてくれる優しい幽霊もいるんだから」

「クス。そうね。まだ生きているもの。諦めるのは死んでからにするわ!」

「そのいきだ!」


 よく判らない結末で終わったがこれでなんとかなったらしい。白亜が元に戻った。すると、レッドスネークが止まった。


「む?」

「何時まででも使役していてごめんなさい。もうさようなら」


 レッドスネークが出ていった。


「……納得いかん」


 ダイの呟きを背に受けて。




「じゃあ先ずはお風呂に入ろうか」

「お風呂?」

「そんな格好じゃ考えも纏まらないよ?」


 白亜は創造者クリエイターでプレハブを造る。


「キキョウ。一緒に入ってあげて」

「はい」


 キキョウに連れられてヴァンパイアは中に入っていった。もし何かあってもキキョウなら配水管でも何でも使って外に出てこれるからである。


「わっ!暖かい……」


 ヴァンパイアの初お風呂の声を聞きながら3人はボーッとしていた。


「まさか言いくるめてしまうとはな」

「一か八かだったけどね」

「妾から見ても見事な手腕だったぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ