表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/547

白亜達は遺跡に到着した!

「今日からはもう出発しようか」

「そうだな。仮眠室に居座るのも良いものであるが」

「何言ってんだよ……」


 ギルドを離れて遺跡に向かうらしい。


「行きましょうか。朝食は後にしましょう」


 こうして白亜達は朝早くギルドを出発した。特に理由はなかったが、この行動により、白亜達の行方が判らなくなり、ギルドに付け狙われる事にならずにすんだ。





「キキョウ。疲れたら休んで良いぞ?」

「まだまだ全然いけます。問題ありません」


 キキョウは大丈夫なのだが、ルナが大分バテていた。


「白亜。某少し休憩したいぞ」


 ダイもだった。年長組は疲れるのが早い。


「ご飯も食べないとな……あそこにしようか」

「はい」


 白亜の指示により大きな木の下で朝食をとることになった。



「因みにこのペースで行ったらどれくらい掛かる?」

『そうですね。3日程でしょうか』

「遠いな」


「やはり某の背に……」

「あほ。バレるっての」


 最近ダイが自分の姿を変えているのが面倒になったらしい。妙に元の姿になりたいと言ってくる。勿論、白亜が一刀両断するが。




「暇だな……」

「仕方無いだろ。今のところは進むしかないんだから」


 やることがないと途端にお喋りになるダイ。


「今日はあそこに泊まろう」


 森近くの草原を夜営地に決定したらしい。


「じゃあキキョウとルナは今日も頼むな」


 見張りだ。精霊は高位になると寝なくても良い。寝るときは寝るが。


「某やることがないぞ……」


 なんとなく可哀想ではあるが白亜が気にする筈もなく。一秒たたずに寝てしまった。


「本当に寝るのが早いの」

「某でもこんな早く寝られる人間を見たのは初めてだ」


 少し遠くに行ったキキョウを抜いたダイとルナが白亜の寝顔を見ながら話す。


「ルナ。気付いていたか?白亜の力の事を」

「勿論知っておる。気付いているのは妾達だけではないか?」

「だろうな。これは某等しか判らないだろうな」

「生きている年数が違うからの」


 二人は少し無言になる。


「白亜は前世で背負いすぎた……今世でも同じ……いや、それよりももっと色々なものを背負わなければならなくなるかもしれんな」

「それでなのか、エルディテが妾に仲間になってくれと言っていたのは」

「恐らくな。白亜の事は某等が守っていかなくてはならんからな」

「これからハクアがどうなるか、妾に運命は変えられぬのか……それは先にならんと判らんの」


 意味深な話をしてダイは寝た。難しい顔をしているルナを残して。




「ふわぁ。眠い」


 大あくびをしながらキキョウに跨がる白亜。様になっている。大分馬に乗るのも馴れたようだ。


『もうここを過ぎたら遺跡です。降りて歩いていった方がいいでしょう』


 博識者エルディテに言われたので白亜とダイは降り、キキョウとルナは下級精霊に変身する。


「結構険しいな」

「空を飛びたい」

「駄目だっての」


 我儘を言うダイにあきれる白亜。いつもの光景だ。



「わぁ。すげぇ」

「ほう。空からではなく地から見るのもまた面白い」

「綺麗……」

「懐かしいの」


 そこには雲海が広がっていた。


『なんで高低差はそんなにないのに雲海が出来るんだ?』

『ファンタジーですから』

『あ、うん。成る程』


 要は解明されていないらしい。


「これが遺跡……」


 あらゆる所に柱があり、まるで地面に突き刺さっているように落ちている。


「これ読める人居ないのか?」

「居ないな。某の知る限りでは」

「妾も知らぬな」

『私のデータにもありません』


 へーといいながら柱を何気なくさわる白亜。


「っ!これ」

「どうした?」


 白亜のバリエーションの殆ど無い筈の顔が驚きの色に染まっていた。


「読めるかもしれない」

「「は!?」」


 ダイとルナが同時に声をあげる。


通常即興曲ノーマリスト


 ノートとペンを作り出し、猛烈な勢いで書いていく白亜。その顔は真剣そのものだ。この状態は前世で体育館の床に猛烈にチョークを書き進めていた姿と非常に良く似ていた。


「解ける。アルファベットで終わるからこれを繋ぎ併せれば良いんだ!」

「えっと、ハクア様?」


 もう周囲の声など聞こえていない。


「まさか読んでしまうのか?数千年もの間学者達が解読を夢見たこの遺跡を……」

「ハクアならやりかねないの」


 猛烈な勢いでペンを動かし続ける白亜を見つめる三人の目はどこか遠くを見ていた。全員、早く終わらないかな。と考えていたが。


「中国語が出てきたか……なら」


 たまにぶつぶつ呟きながら解き続ける白亜。廃人に見えてしまうのは仕方の無いことなのだろう。既にこの状態になってから6時間は経過している。と、白亜の手が止まった。


「む。終わったのか?」

「………ぃ」

「どうした?」

「解けない」

「む?」

「判らない!全然、解けない!」


 白亜が突然叫びだした。


「なんで!?こんなこと……俺が知らない公式でもあるのか!?なんで、なんで……」


 今まで白亜に解けなかった問題は無かった。小さい頃から自分で公式を見つけて勉強できる子供だった。故に天才と呼ばれ、周囲から孤立した。

 柱には白亜も判らない公式が刻まれていた。その問題を解こうと必死で書いたのだろう、出したペン先がつぶれ、同じ問題のあらゆる解き方を模索したような書き込みが見られた。


「判らない……わからない……」


 周囲と孤立しても解き続けていた公式が通用しなかったと言うことは白亜にとっては絶望に近い。自分に解けない公式はないと言い聞かせてきたため、こういう時にどうしたら良いのかが判らない。


「白亜……」


 ここまで取り乱した白亜を見ていつもヘラヘラと笑っているダイまでも言葉を失う。


「なんで……いままで、こんなことは」

「ハクア様。判らないのなら私たちで見つけていけば良いのです」

「キキョウ……」

「そうだな。某も力を貸そう。伊達に長生きはしていないぞ?」

「勿論妾も参加する。判らないのなら捜していけば良いだけのこと」


 突然白亜の配下組が良いことを言い出す。


「どれだ?とは言っても某、全部わからぬ」

「どうやって解くのかさえ妾達には理解不能だからの」

「これ、何て読むんです?」


 誰も判らないのにそんなことを言っていたようだ。


「プッ。あっはははは!」

「「「笑った!?」」」


 白亜が戦闘中でもないのに笑い出した。ダイのように爆笑している。その姿は年相応の子供らしい笑みと言えるだろう。


「ははっははは!」

「白亜が笑う日が来るとは」

「初めて素で笑ったの」

「ハクア様の本当の笑顔。なんと可愛らしい」


『全く。今回は傍観しようと思っていたのに結局私も手伝うことになる雰囲気じゃないですか』

「エルディテ様がそんなこと言われるとは。意外です」

「クアハハハ!面白くなってきたではないか!」

「フフ」


 白亜は一頻り笑い終わったあと、笑いすぎて涙が出てきた目元を押さえながら、


「ククク。判んないのに伊達に長生きはしていないぞとか……ククク」

「ムムム……」


 その通りなので全く言い返せない。


「そんなに言うなら、教えてもらおうじゃん。これ、どう解く?」


 白亜が指差した先には1つの式があった。アルファベットや数字や最早見たことも無い字が並んでいる。


「判るわけなかろう」

「きっぱり言うな」


 潔いにも程がある。


「ここでこっちとかけて、ここで……」


 白亜は一通りその公式の解けたところまで話す。


「ここから先が、判らない。こっちから順に解いていくと絶対途中で止まってしまう」

「妾にはわからぬが、形式に拘りすぎではないかの?」

「形式に……?」

「ハクア様は1か10なのです。間を探しても良いのではないでしょうか?」

「間?」

「そうだぞ?某なんか右から読むのか左から読むのかさえ判らぬからな!」


 その言葉を聞き、白亜がハッと顔をあげて柱と自分のノートを見比べる。


「そうか!そうだったんだ!」


 そう言って振り返った白亜の顔は輝かんばかりの笑顔に彩られ、男でも女でも速攻で落ちてしまうような魅力を秘めていた。


「判った!ブストロフェドンだったんだ!」

「ぶ、ブストロ……?」

「ブストロフェドン。牛耕式って呼ばれる文字の読み方だ。一番上段は左から右へ、二段目は右から左へ、三段目は左から右へって風にどんどん入れ替わっていく」


 これで白亜も解けるようになった。先々でたまに止まってしまうが、公式を全く知らない3人が白亜にとっては奇抜な考えをだし、どんどん解かれていく。辺りが真っ暗になってもルナが元の姿に戻ることで全く支障なく計算は進んでいく。


「終わった」

「やっとかー!白亜!飯!」

「お腹すきました」

「妾もたべたいの」


 所要時間9時間。白亜は助けを借りながら解読不可能と言われた遺跡を完全に解読してしまった。


「はい」


 遺跡でハンバーガーを貪る配下組。白亜は特に空腹を感じていないのでゆっくり食べる。幻想的な遺跡でハンバーガーというのもあれだが。


「おかわり」


 軽く5人前は食べたダイはすぐに寝た。


「子供かよ」


 そういう白亜の目は以前ほど暗くなかった。なにもかも諦めていた目をしていたが、今はほんの少しだが輝きが見てとれる。


「それにしてもひさびさに笑ったかも」

「驚きましたよ。突然だったので」

「面白かったしな。あんなに笑ったのは両親が死んでから初めてかな。丁度20年くらいか」

「そんなにですか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ