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無気力超能力者の転生即興曲  作者: 龍木 光
白亜という英雄
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継承の儀式だそうです!

「それじゃあ‥‥‥やりたいから、体育館位の大きさの誰も絶対に入ってこれないような場所、ない?」

「体育館ならあるが、そこでいいか?」

「ああ‥‥‥人避けの結界とか張っておけばいいか」


 とんでもなくファンタジーな発言が飛び出てきたが、特に先輩警察官は気にしない。いちいち気にしていたら白亜の相手は務まらない。




「ここだが」

「‥‥‥汗臭い」

「体育館だしな」


 白亜は指をパチンッとならすと不快な臭いが消えた。


「これでいいかな‥‥‥」


 もう、何が起こっても動じない精神を身に付けた警察官である。


「じゃ、俺は外に出ている」

「わかった‥‥‥人を三日間で集めておいて」


 白亜がここに籠って準備をするのには最低でも三日はかかるらしい。誰に力を受け渡すかは白亜立ち会いのもと決まっている。




 ガチャン‥‥‥。


 先輩警察官が体育館から出ていったので広い体育館に一人残された白亜。その手には100円ショップで売っている真っ白なチョークが3ダースと何本かの赤色のチョークだ。


 白亜はそこから白いチョークを何本か取りだし、他のチョークを体育館の端に寄せる。


 そして、体育館の左奥にしゃがみこみ、何かを猛烈な勢いで書き進めていく。そこには大量の計算式と見たこともない文字の羅列。それをとんでもないスピードで書き連ねていく。


 白いチョークが物凄い勢いで減っていく。因みに、この体育館は板張りの床なため、白いチョークが若干見えづらい。


 猛烈な勢いでチョークを動かしていた白亜の手が止まった。白亜は今書いた計算式と文字の羅列を一度見た後、白いチョークを床におき、赤いチョークでまたその上から幾つか何かを書いていく。


 最後にもう一度見直したと思ったら持ってきた紙に一番下に書いてある計算式を写す。


 そして、また別の場所に新しい式と文字の羅列を書き、計算していく。それを不眠不休で何時間もの時間を計算に費やした。




 警察官の二人は恐ろしいものを見るような目でそれを見ていた。


「もうここに籠ってから56時間経ってるぞ」

「何て集中力なんですかね」

「しかもずっと飲まず食わずだ。こっちが近付いても返事はするものの、絶対に止めようとしねぇ‥‥‥」


 二人がそんなことを言っている間にもまた1つ式が完成したようだ。

 そして、また計算していく。


「倒れちゃいますよ!あれじゃあ!」

「どうにもできないんだ‥‥‥ここから中に入ると何となく気持ち悪くなって‥‥‥これが人避けか」




 白亜が書いていた計算式が体育館中を埋め尽くした。所々に赤いチョークで書かれているそれは視る者によっては研究したいと詰め寄るくらいの物である。


「で‥‥‥きた」


 フラッと後ろ向きに倒れる白亜。先輩警察官がギリギリで気付いて地面すれすれのところで受け止める。

 白亜の身体は、子供並みに軽かった。


「ごめん‥‥‥なんか飲み物頂戴」

「ここまでやりつづけるお前の方が馬鹿だと思うがな」

「一回書くと止めちゃいけないんだ‥‥‥受け渡す人に無駄な負担がかかる‥‥‥」


 ベンチでカロリー○イトとアク○リアスを飲みながら白亜は話す。


「下準備は完了だ。そっちは?」

「もう昨日から集まってもらってるよ」

「そっか‥‥‥10分だけ寝るからその間にここに集めておいて」

「もっと寝ろよ」

「俺がここにいないと受け渡しできないし」


 先輩警察官は後輩警察官に襟元のスピーカーで集合させるように呼びかけた。

 勿論、ゆっくりこい、と付け足すのも忘れない。


「なあ、白亜‥‥‥って寝るの早!」


 白亜は一秒かからず眠っていた。


「寝顔を見ただけじゃあの生気のない顔がわかんないからな‥‥‥って言うかなんでこいつこんなに2枚目なんだ‥‥‥」


 写真や寝顔を見ただけの破壊力は半端ではないが、あの性格を知ってしまうと女が離れていく。


「お見合いとかあったら最強だな」


 もっとも、会った瞬間に引かれるだろうが。そう考え、フッと笑う警察官。

 ベンチで眠っている超絶二枚目の癖に超面倒臭がりやの10代後半の男性とその寝顔をみてフッと笑うメタボ目前の40代前半の警察官、それを物陰から見ている若いお馬鹿な警察官。


 不思議なカオス空間が出来上がっていた。


「先輩、なにやってるんです?恋愛禁止ですよ?」

「なに言ってる?」


 ひょこっと物陰から出てくる後輩警察官。その後ろにはいかにも警察官な雰囲気の男や女がゾロゾロとついてくる。

 この人たちが、白亜の力の継承者だ。


「おい、白亜。来たぞ」

「あ‥‥‥眠い‥‥‥」


 女性警察官が白亜の顔を見て息を呑む。


「はーくーあ!」

「ううぅ‥‥‥起きますよ‥‥‥」


 目を開いた瞬間、息を呑んだ女性警察官のみならず、男性警察官までもが気の抜けた声を出す。


「「「「「‥‥‥え?」」」」」


 何故ならば、その男はあり得ないほど生気のない目をしていたからだ。


「えー‥‥‥と、白亜です。これからよろしくお願いします‥‥‥」

「えっと‥‥‥よろしくお願いします?」


 自己紹介とも言えぬ自己紹介が終わり、白亜はいつもの面倒だ。とでもいわんばかりの目を向ける。


「それじゃあ、やりますので。中へどうぞ‥‥‥」


 ガチャン、と音がして体育館の戸を開けたとき、何処からか、うわぁ、と聞こえた。

 それもそのはず。中学校の体育館位の大きさの板張りの部屋の床に白と赤のチョークがびっしり書き込まれている。


「これはいったい‥‥‥?」

「継承の計算式です‥‥‥消さないように、お願いします」


 びっしり書き込まれている床の文字を消さないように気を付けながら警察官達が中央に移動していく。


「ここで、立ってて下さい‥‥‥」


 そう言うと、とんだ。


 跳躍ではない。文字通り空に浮いたのだ。白亜の異常さを知らない警察官達が狼狽えるのを気にも留めず、何処からか古い本を取り出す。


「じゃあいきます‥‥‥あんまり気を張らないように」


 そう言って本を開き、読み始める。しかし、その言葉は誰にも通じない物であり、ここで解読できる者はいない。

 白亜の言葉に反応して下にある数式や文字が浮かび上がる。

 その数式や文字は形を変えながら、継承者(警察官)を囲うように広がり始め、やがて少しずつ大きな丸を描き始める。


 白亜の言葉が途切れるまでに、見事な陣が完成していた。

 漫画やアニメで視るような魔方陣。ただ、ここにある魔方陣はどんな創作物に書かれている物よりも精緻で美しいものだった。



 本を読み終わったのか、白亜が本を閉じる。


 そして魔方陣の一番端に手を置き目を瞑る。


『我、この者達に継承すべし者。この者達に力を渡す』


 そう呟くと魔方陣が光輝く。目も眩むような光を発し、魔方陣が弾けとんだ。残されたのは、まるで今までの事が嘘だったようになにもない体育館に佇む警察官達と、魔方陣に手を置いたままのポーズで倒れこむ白亜だった。






「ううん‥‥‥」

「あ!起きましたよ」


 白亜が頭を左手で押さえながら起き上がる。因みにここは白亜の部屋である。


「‥‥‥あれからどうなった?」

「お前が寝ちまったからどうすればいいのか解らなくてな、みんなここに集まっている」


 いつもの先輩警察官と頭を左手で押さえたままの白亜が話し始める。


「2日は寝過ぎじゃないか?」

「さあね‥‥‥気力を殆ど使いきっちゃったからな‥‥‥」

「気力ってなんだ?」

「俺の力の源。無くなると、倒れる。多分、全部無くなると死ぬ」

「そんな怖いものなのか!?」


 いつもより一層生気のない目で先輩警察官を見つめる白亜。


「ちゃんと説明した‥‥‥」


 白亜はそんな重要な話を完全に忘れている先輩警察官を見てため息をつく。


「まぁ、いい‥‥‥全員ここに呼んでくれ‥‥‥足は動きそうにない」


 どうやら気力を使いすぎると足が動かなくなるらしい。


「そうは言っても入りきらないと思うが‥‥‥」

「‥‥‥確かに‥‥‥」


 白亜の部屋は元々は仮眠室だったのでそんなに広くない。


「どうしよ‥‥‥」

「って言うか頭痛いのか?」

「使いすぎると色々と体が痛んだり動かなくなったりするんだよ‥‥‥今回は、軽い方」


 白亜は周りを見渡し、


「仕方ない‥‥‥作るか‥‥‥」

「彫刻でもすんのか?」

「それに近いが‥‥‥」


 白亜はベットから手を出して眉間に皺を寄せる。


「おい、な‥‥‥に‥‥‥」


 先輩警察官の目が大きく見開かれる。何故ならば、白亜の出した手の先からあの、クリスタルのような鉱石が産み出されていた。それは元からある型に水を流し込んでいるようにさえ見える。


 数秒後には透明の車椅子が出来ていた。


「これで‥‥‥暫くは問題ない」

「ちょっと‼あの透明なやつってお前が作ってたのか!?」

「あれとは少し違う‥‥‥こっちは俺が離れたら消える」


 白亜は空に浮いて車椅子に乗り込む。


「押して?」

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