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白亜はテンプレに引っ掛かる!

「あー。眠い」


 ちゃんと寝ているが眠いのは仕方がない。忘れがちではあるが白亜は6歳なのだから。大あくびをしながら職員を待つ。色々と込み入っているようでもう少し時間がかかりそうである。



「おい。ガキ」


 半分夢の中に居た白亜におっさんが絡んできた。


「なんでしょう」

「邪魔だ。どけ」


 カウンターは人間用だけでも6つある。白亜のところ以外はがら空きだからそこにいけばいいのに。と白亜は思った。


「依頼後のお金受け取ってないので動けないんですが」

「俺はこの2番のカウンターしか行かないって決めてんだよ」

「いや、知りませんし」


 白亜の超天然が炸裂する。


「なに言ってんだくそガキ!」

「知りませんって」


 自身で全く気付かずに相手を煽るのは白亜の十八番である。ただなにも考えていないだけではあるが。


「ふざけんなガキが!報酬だと?ハン!どうせそんなのガキの小遣い程度のだろ?俺がもらってやるよ」


 白亜はこういった人種に絡まれやすいらしい。


「生活費なんで」


 相変わらず何も考えていない白亜。


「おい、ガキ。俺が誰かわかってんのか?」

「さあ?」

「な!俺様はなぁ!3ランクのクヌギ様だ!」

「3ランクって高いんですか?」


 もう白亜の天然が止まらない。


「お前ごときに比べたら天と地の差も開いている!」

「へぇ。どっちが天でどっちが地でしょうか」


 煽りまくっているため激昂しだした。


「決まってるだろうが!虚仮にしやがって!」

「まてまて。白亜。どうなっている?」


 気付いたダイが割り込んでくる。


「お前が保護者か!このガキが俺のことさんざん虚仮にしてくれたんだよ!どう落とし前つけるつもりだ」

「戦ってみればいいのではないか?面白そうだ」


 ダイは何故かトラブルを作り出してしまった。


「ええー。俺眠いんだけど」

『白亜様。私に考えがあります。1つ乗っかってみては?』

『んー。博識者エルディテがそう言うならいいか』


「どうです?勝負します?」

「するに決まってんだろ!ぶっ殺してやる!」


 もう結局こうなってしまうのは仕方がないのか、どうなのか。



「はい。返金完了だよ。って何があったの?」


 やっとギルド職員が出てきた。


「なんか絡まれました」

「アン。こいつが俺のことをさんざん虚仮にしてくれたんだよ!こいつはもうこのギルドの冒険者なんだよな!?」


 職員はアンという名前らしい。


「ええ、ですが」

「じゃあ決闘だ!今すぐ表出ろ!」


 非殺傷魔法が掛かってるところではやらないらしい。


「ちょっと!」

「こう言うことってよくあるんですか?」

「そうよ。ただギルドでは一切責任はとらないことになっているからね」

「問題ないです」


 入口の少し開けたところでクヌギが大斧を振り回していた。


「おら、武器出せや!」


 観客までいる。見世物にしたいのだろう。こういう決闘では相手を負かして自分をアピールするって人も居る。


「なんなら、賭けでも致しましょうか?」

「ああ?」

「そうですね。ここに10000エッタは有ります」

「い、、10000だと!?」


 一万エッタ。日本円だと100万円だ。先程のランドドラゴンの討伐は25000エッタ。250万円だ。その内の10000エッタだ。


「賭けませんか?貴方の何かと」

「い、一万エッタなんて大金。どこで手に入れた」

「先程ランドドラゴン討伐を終らせまして。それで」


 別に隠しても後でバレるので偽ることはしないらしい。


「ランドドラゴンだと!?」

「はい。そんなことはどうでもいいですね。賭けを受けますか?それとも逃げ出しますか?」


 これはもう完全に博識者エルディテのカンペ丸読みだ。


「ぐっ、賭けるさ!俺の全財産!」


 全財産。それは装備品なども含まれる。白亜はそんなもの要らないし、創造者クリエイターで量産できる。


「よし、じゃあ。キキョウ、ルナ。これを守ってくれ」


「畏まりました」

「承った」


 もうこの際話せる頭のいい下級精霊の振りをするらしい。白亜は小袋を渡し、クヌギも渡す。


「とって逃げたりしないよなぁ!」

「こんな人に見られているのにそんなの出来ないですよ」


 白亜は腰に刺してある刀に優しく触れる。この刀。ジュードが白亜のために用意した超一級品の刀だ。さすが王族である。白亜の戦い方をよく知っているジュードが、有名なドワーフの鍛冶師に頼んで造らせたもので、魔力を良く流し、炎などの形がハッキリしていないものも斬れる。

 なのに刃こぼれしない。しかも。水が出る。名前は白亜がつけたわけでもないのに村雨。


 これを見た瞬間、白亜はドワーフの鍛冶師が転生者ではないかと聞きに行ったが、偶然だったらしい。どれだけの奇跡が起きればこうなるのか知りたいが。


 どうやって確認したかと言えば、単に日本語を話しただけだ。全く理解できていなかったので違うらしい。




「じゃあ、開始しましょう。魔法の使用は?」

「何でもありだ!」

「了解しました。ダイ。危なくなったら止めてくれ」

「任せておけ」


「それでは、始め!」


 クヌギがかなり隙のある動きで白亜に襲いかかる。


「でりゃぁ!」


 白亜の居たところに斧が刺さる。


「おりゃぁ!このぉ!」


 振る度に声が出るのでかなり五月蝿い。


「名刀村雨。切れ味は相当なもので、かすっただけでチェインメイル位なら簡単に斬れるらしいです。人間を斬ったら、いったいどうなるでしょうか?」


 白亜が刀を抜いた。ゆっくりと美しく抜かれるその動作に観客まで魅了される。


「な、なんだその剣は!笑わせるな!そんな薄いので俺がやられるか!」

「剣は叩ききるもの。それでは斬れるものも斬れない。刀と剣は構造が違う。使い方も」


 ビュッと降り下ろすと水滴が飛び散る。


「流石名刀村雨。伝承通り。って言っても架空の刀だから伝説通り。になるのかな?」

「何ごちゃごちゃ言ってるんだくそガキがああぁぁ!」


 斧が降り下ろされる。とそれが真っ二つになって地面に落ちた。


「言ったでしょう?構造が違うって」

「お、俺の斧おおぉぉ!」


 綺麗に切断されている斧を見たあと、殴りかかるクヌギ。白亜は素早く刀を鞘にしまい、攻撃を見てもいないのに回避する。


「な!?」

「動きが大きいですね。音でわかりますよ?まぁでも終わりにしましょうか」


 白亜の右腕が消えると左側にクヌギが吹き飛んでいった。白亜の右ストレートを喰らっただけだが。


「さて。終わりかな?」


 静まり返ったギルドの入口付近にクヌギが壁に激突した音が響く。


「あーあ。非殺傷魔法が掛かってるところにすればよかったのに」

「そうだな。白亜に敵う筈がないのだから」

「行きましょう。ハクア様。ご飯食べたいです」

「妾も小腹がすいたの」


 そんなことを言いながら去っていく四人。その後には傷だらけのクヌギとクヌギの全財産が残されていた。




ーーーーーーーーーーーーーー




「何があった?」

「その、決闘があったらしく」

「またか。誰だ?」

「仕掛けたのは3ランクのクヌギだそうです」

「あいつか。やったのは?」

「1ランクのハクアと言う者らしいのですが‥‥‥その」

「どうした?」

「6歳らしいのです」


 それを聞いても特に驚かない。


「冗談はいい。倒したのは?」

「ハクアと言う6歳のこどもです」

「本当なのか?」

「はい。見たこともない武器を使い、圧勝したとか」


 6歳の子供が大の大人に圧勝したとか言われても普通は信じないだろう。しかし、それがたまにあり得てしまうのが冒険者という職業だ。


「見たこともない武器を。か‥‥‥」

「はい。それと、殴って吹き飛ばしたとか」

「まて。その子供の名は?」

「ハクアですが」


 手元にある資料にはランドドラゴン討伐の達成書があった。そこにはハクアという名前のみが書かれていた。


「子供だったのか」

「なんでも精霊を二人契約しているとか」

「それも異常だな‥‥‥」


 精霊と契約すること自体がかなり難しいのに二人契約している白亜はまさしく異端の存在だった。


「ふむ。ではこれからしっかりサポートしてやれ。ギルドから離れていかぬように」

「はっ!」


 これから白亜はギルドで厚待遇を受けられることになる。それがどれだけ注目されることなのか、白亜は知るよしもない。

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