白亜は冒険者になる!
「さて。問題が発覚した」
「な、何でしょう」
「燃えてるから家に入れない」
「「「あ」」」
ほぼ全員が気づいてなかったらしい。
「ルナ。なんとかなるか?」
「‥‥‥なんとかなるがの」
「おお。やってみてくれ」
「その‥‥‥先程やった用に服は出せぬか?」
白亜以外は大体気付いた。
「?通常即興曲、服」
白亜サイズのを出したのをみて、
「妾にあうサイズは無理か?」
「出来るけど、これ俺から離れたら消えるぞ?」
結果。
「おおー。人間になりましたね」
「こんな技があったなんて。私も勉強します」
「クク。白亜が近くにおらぬと無理ではあるがこれはこれで」
白亜が出した服をルナが着、そこからちょっと糸を付ける事になった。
「ふむ。なかなかいいセンスで気に入ったぞ」
「そりゃどうも‥‥‥」
このまま一緒にいないといけないのはちょっとキツイ。
「あれ?下級精霊になれば大丈夫じゃないんですか?」
「あ」
「えええ‥‥‥」
「これでええかの?」
炎の下級精霊になった。燃えてない。そりゃそうだ。キキョウと普段一緒に居るとき濡れないから。
「結局師匠も配下が増えましたねー」
「増えたなー」
これで、ジュード、博識者、キキョウ、ダイ、ルナが配下になった。
「ただいまです」
「ただいまー!」
家に帰ってきた。ジュードはこっちで過ごすらしい。とはいっても3日ほど滞在したら城の方に帰るが。
「おかえりーって、え?増えてない?」
母親が絶賛混乱中だ。
「後で説明します」
取り敢えず夕飯になった。
「えっと、じゃあダイから」
「うむ。某は黄龍。ダイと申すもの。白亜の契約獣だ」
「妾はイフリート。ルナと申す。よろしゅう」
「「???」」
両親は全く理解できていない。白亜は未だ気がついていないが、ここにいる白亜の配下は全員、伝説と呼ばれている種族だったりする。それにはジュードも入るわけで。
「え、えっと。つまりハクアの」
「配下だ」
「配下よの」
喰い気味に答える二人。
「凄すぎ‥‥‥‥」
「なんて子だ‥‥‥うちの娘は」
その娘は風呂に入りたいとしか考えていないが。
日は経ち3日後。
「さて。行くか」
「師匠。ちゃんと休んでくださいね」
『私が乗り移ってでも休ませますので』
今日から白亜はジュードと離れて別行動だ。ジュードは城の方で残りの日を過ごすのに対し、白亜は旅に出てみるらしい。とは言っても転移で帰ってこれる。それでも帰るとき以外は白亜は使わないだろう。
「じゃあ、冬に帰ってきますので」
「「行ってらっしゃい」」
全く心配しない両親も両親だが。
現在、白亜は馬に乗って移動中だ。馬はキキョウだ。その後ろにまた馬に乗ったダイが続く。こっちはルナだ。この四人、進み始めて既に数時間たっている。日が傾いてきた。
『そろそろ夜営場所を決めた方がいいかと』
「そうだな。じゃあキキョウ。あっちに行ってみてくれ」
「はい、行きますよ。ルナ」
「了解」
どうやら、ルナはキキョウより地位が低いらしい。
いつも通り風呂を作って入り、白亜の出した食べ物を皆で食べる。
「これから遺跡に向かうのだろう?」
「そのつもり」
「何故突然そんなことを?」
「あんまりありがたくないお告げがあってね」
あんまりありがたくないとか酷い言われようだ。
「お告げ、ですか?」
「あ、そうだ。ねぇ。この世界に神様って居る?」
「え、あ。はい。唯一神チカオラート様がいます。ですが邪神とされている正反対のジャラルというのも居るとかなんとか」
「うん。まじか」
白亜はいつも以上に面倒くさそうな目で全員を見つめる。
「チカオラートって凄いのな」
「「呼び捨て!?」」
「クアハハハハ!面白い!」
ダイは当然のように爆笑している。
「知り合いだもん」
「え?」
「俺がこっちに転生してきたときに会った」
「嘘ですよね?」
「なんで嘘つく必要あるの?」
この世界では唯一神チカオラートしか居ないため余計神聖の人だと言われている。もう皆信者だ。
「それにしても不憫だな。邪神の方が名前かっこいいじゃん」
白亜はどうでも良いことばかり考えている。
「それで、さっきのお告げってなんです?」
「いや、チカオラートが行けって言ってきてさ」
「いつ!?」
「夢で。妙にリアルだったし。やることないから行ってみるのも手かなと」
そんな理由だったらしい。
「ええ‥‥‥」
「妾も驚いたぞ」
「クアハハハハ!」
いつまで笑っているのか。
「兎に角、行ってみて損はないし。一応チカオラートは神様だし?」
「そこでなんで疑問系なんですか‥‥‥」
「俺の中では神様自称してるだけの人だから」
第一印象があんまりよくなかったから当然ではある。
「なんと言っておったのか?」
「んと。今日から君達だけでソートルの遺跡に行ってくれ。これからの事できっと役に立つから。だっけか」
かなりあっさりしている。
「それでハクア様は行こうと?」
「だって暇だし」
そこは間違っていない。因みにソートルは獣人の国だ。現在シャウとザークが帰省中の筈だ。
「ま、行ってみれば判るさ」
確かにそうだが楽観的すぎて不安になったのはルナとキキョウの精霊組だったのは言うまでもない。召喚獣の方は笑い転げ続けている。実に不安になるパーティだ。
「ソートルに着いたな。キキョウ、ルナ。お疲れ様」
「いえ、これぐらいなら当然です」
「妾も問題なく」
二人が下級精霊に変身しソートルへ行く。人間と獣人はあまりいい友好関係ではない。その一つに奴隷制度がある。簡単に言えば人間は獣人を奴隷にし、獣人は人間を奴隷にする。魔法使いが少ない獣人は人間に魔法を使わせるため、力が弱い人間は強い獣人に労働させるため。
子供など直ぐに拐われて売られる。白亜にそれは全く通用しないが。逆に捕まって売られそうだ。
「獣人の町か」
「獣人にも色んな種族が在るんですね」
「白亜。某腹が空いたぞ」
「妾も少しの」
始めてきたキキョウと白亜は新鮮なのかキョロキョロしているがダイとルナはかなり長い間この世界に居るので別段なにも思っていない。腹が空いたらしいが。
「宿とるからその後で」
「うむ」
「え。泊まれないんですか?」
「あったりまえだ。人間なんかお断りだね」
種族の壁は大きかった。
「どうしよう」
「なんとかできぬのか?」
「最悪プレハブ建てちゃえば良いかもしれないけど。下手にあっちの技術は使わない方がいいと思うし」
「むむ」
『冒険者ギルドに登録してみては?』
「え?」
「ああ、その手がありましたね」
「ふむ。いい案だな」
「盲点だったの」
白亜のみ理解ができていない。
「どういうこと?」
「白亜が登録すればいい」
「?」
冒険者は職業と言うよりボランティアに近い。勿論金はもらえるからボランティアではないが。つまり、やりたいときに勝手にやって勝手に終われる物だ。
白亜の村には居なかったが誰でも冒険者になれる。6歳から上限はない。貴族では6歳になりすぐ登録する人も少なくない。ジュードはまだだ。王族だが下手に登録させると多分依頼がやりたくなって部屋をぶち壊して行ってしまう。
「大丈夫か?それ」
『問題はないと思います。6歳から依頼を受け始める子供もいますので』
「で、なんで今日の宿の話と繋がるんだ?」
『冒険者は仮眠室を借りられるのです』
「あ、成る程!でもそれだと住み着いちゃう人が出てくるんじゃ?」
『借りられるのは依頼を三度受けたら一度借りられます。初回は無料ですが』
それでも仮眠室を借りられる利点は大きいだろう。三度受けたら一度なら一日に三回受ければいい。
「今すぐ出来る?」
『はい。基本的に365日24時間大丈夫です』
ギルドはそれだけこの世界で重要な物なのだろう。
「じゃあ行くか」
「あ、この建物王都にもあったな」
「同じ建物にしないと冒険者が分からなくなるってので同じらしいですね」
ギルドは酒場がくっついているのがイメージではありがちだが、どちらかといったら区役所みたいな感じだった。というのが白亜の感想だ。
奥には武器等が売ってある。白亜が顔をあげると『人間はこちらへ』と書いてある看板を発見したのでそちらのカウンターへ向かう。獣人の国だが人間もたくさん来るらしい。
そしてこちら側は何故か酒場と隣接。白亜からは死角になっていて見えなかっただけで酒場があったらしい。酒場と言うより雰囲気はバーだが。




