炎の最上級精霊!
夜に一旦帰省の準備をしていると、
「うっ‥‥‥」
「ハクア君!?どうしたの!?」
「いや、なんでもない」
『隔離魔法が切れたようですね』
『無理矢理か』
『仲間が来たのでしょう』
『まぁいいか。もう襲いには来ないだろう。多分』
白亜の眼には『危険』と書かれた大量の文字が見える。あまりに多すぎて気持ち悪くなっただけだ。
『もうちょっとソフトに出来ないか?』
『そう言われましても』
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「大丈夫だったか?」
「はっ、申し訳ありませんでした」
あの魔族が外に出ていた。もう既に避難済みである。
「何故あんなことに?」
「面白い男が現れまして」
魔族が説明をする度に聞いている魔族も目を輝かせる。
「なんと。それは面白いな」
「古代魔法を使っているだけでやつを追う理由にはなりますでしょう?」
「勿論だ。捕まえたら私にも見せてくれないか?」
「私の物にしますよ?」
「ならば仕方ないか」
この場合の私の物にすると言うのはそのままの意味である。尤も魔族は白亜の力に惚れているが。
「面白そうではあるがお前が見つけたのだからな。私はなにも手出しできんな」
「フフ。本当に面白いですよ。人間ではないのかも知れませんね」
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「こちらです。精霊の力が濃いです」
「ここが聖域か。某も何か感じるものがあるな」
「凄いですね師匠!」
「すまん。判らん」
『人間にはあまり好意的ではありませんので』
数日後、白亜とジュード、キキョウ、ダイは精霊が集まりやすい聖域に来ていた。リンはニンフの里に帰省中だ。
「ここで本当に見付かるのか?」
「気配が濃いので」
白亜は目を閉じて辺りの状況を探る。
「確かにそうだな。こっちを見ている気配が相当な数居る」
「流石はハクア様。隠れていても判るのですね」
「精霊の気配なのか人間の気配なのか動物の気配なのか詳しくは全然判らないけどな」
それでも結構異常だったりする。
「ここで精霊を喚ぶようです」
キキョウが立ち止まる。ただの道の真ん中だが。
「ジュード様。やってみては?」
「出来なかったら他のところ行けば良いんだから」
白亜のフォローはどこかずれている。
「よ、よし。精霊さん。僕と共に生き共に過ごすと考えてくれるならば、今ここに出てきてください!」
緑色の中級精霊が出てきた。
「キミ、ハンブンエルフ。ワタシ、ハンブンノハンブンヨウセイ。ソレデモイイナラワタシハ、アナタトイタイ」
片言で言っていることが理解しにくいが、要は妖精のクウォーターらしい。
「はい。僕と来てくれますか?」
「ウン!ナマエツケル!」
「そうですね。ではチコはどうでしょう?」
「チコ!ワタシノナマエ、チコ!」
精霊はジュードの首にキスした。
『契約ってキスなの?』
『はい。口に近いほど忠誠を誓う印となります』
『あー。だからキキョウは口にしたわけか‥‥‥』
白亜と博識者がそんなことを話しているうちに契約が完了したらしい。
「師匠!やりましたよ!」
「師匠って言うの?宜しくね!」
「いや、俺は白亜。こっちはキキョウ、こっちはダイ」
突然言葉が流暢になったチコを特に気にしない白亜。いや、気にしていないわけではない。気付いていない。
こちらで補足すると、精霊は契約をすると契約主と離れられなくなる。が、勿論精霊にも恩恵はある。
精霊は魔力の固まりに近い。つまり、魔力を貰える=生きるという事になるので、長生きしたい精霊は大抵契約している。そして、言葉が流暢になったように、契約をするとその精霊自体が進化する。これは契約を解いても変わらないため、上級精霊の中には契約をしまくってなった精霊も居る。
キキョウは生まれた瞬間から既に最上級精霊だ。というか生まれて直ぐに白亜と契約したため能力の成長がかなり早かった。
「ハクア!キキョウ!ダイ!」
覚えたらしい。
「これから宜しくお願いします。あ、僕の名前はジュードです」
「うん!ジュード!」
こうしてチコと契約したジュードだった。
「なあ、俺必要なかったよな」
「そ、そんなこと‥‥‥‥」
「あるよな?多分」
『良いじゃないですか、別に』
「いいけどさ。どうせなにもないって知っていても来たけどさ」
ジュードの事がなんだかんだ言って心配なのだ。
「クアハハハハ!面白い。面白いぞ白亜!」
相変わらずダイの笑いのツボが謎だ。
「じゃあハクアもやってみればいいじゃん」
「俺にはキキョウが居るし」
「ほらほら!」
「ちょっ、チコ!」
さっきの場所に無理矢理立たされる白亜。
「いや、やらないぞ?」
「ぶー」
「白亜!やれ!面白くなりそうだ!」
ダイは面白ければ何でも良いらしい。
「やらないって」
『じゃあ、やりましょう』
「博識者!?ちょっ‥‥‥」
白亜の意識が薄れた。
『え?な?』
「精霊よ。我と共に生き、共に過ごす覚悟が有るならば今ここに出てくるがいい」
『は?え?なんで俺喋ってんの!?』
簡単な話だ。博識者が無理矢理乗っ取ったからだ。何故ここまでするのかは不明だが。
「はっ!」
戻ったらしい。
『ちょっと、博識者!反応ないから良いものの、もしなんか出てきたらどうするつもりだったんだよ!』
『契約させましたけど?』
『何言っとんだお前は!』
「師匠。今出てきたのって‥‥‥」
『私です』
「無理矢理ですね‥‥‥」
「そうですよ!私が居るんですよ!」
珍しく怒るキキョウ。
「私はハクア様の精霊です。私以外に必要ないのです」
「わかったわかった。俺どうせ精霊見えないし。な?」
そう言ってその場から動こうとした瞬間、
「痛い!」
見えない壁に阻まれるように白亜の動きが止まる。
「え?なに?」
「これ、精霊喚んじゃってるんですよ」
「?」
「来てます。もう解除不能です。相手と会わないと此処から動けないでしょう」
「「な!」」
白亜とキキョウの声がシンクロする。
「クアハハハハハハハ!お、面白い!なんて愉快‼」
過呼吸寸前になるまで笑っているダイ。
「これどうすれば‥‥‥」
その直後、白亜は後ろに気配を感じて恐る恐る後ろを見る。
「妾を呼んだのはそなたか」
「い、いえ!あ、あの」
燃えている。それはもう燃え盛っている。
「すみません手違いです!」
もう白亜はそうしたらしい。
「手違いなんてことはあるのか‥‥‥?」
「え、えっとその。んーと」
博識者のことを伏せたまま説明ができない。白亜がかなり困っていると、
『交代します』
「ちょ!」
再び白亜の意識が遠退く。
「私がやりました」
「ほう。二重人格というわけか。なかなかレアではないか」
二重人格はレアな力らしい。
「この方‥‥‥白亜様はご自分の力を分かっておりません」
「妾を契約させ、その力とやらを判らせようと?」
「そんなところです」
「成る程。確かに強い力は見える。その奥に見えるものも‥‥‥良いであろう。妾も配下に加えて頂きたい」
「それでは交代しますが‥‥‥確実に断って暴れるのでさっさと終わらしていただければと」
白亜のためを思ってやっているのだろうが、あまり大事にされていない主人である。
「了解した」
キキョウと同じ抱きつきポーズだ。とは言ってもこちらはガンガン燃えている。白亜の服が焦げて燃えていく。
「あっつ!え!?な、え!?」
交代したらしいと気付いた精霊は唇を白亜の唇に重ねた。
「!?!!??」
前回同様、いや、今回は燃えている相手とキスだ。かなりキツいだろう。火の中に飛び込んでいるのとそう大差はない。
「うぉおおぉぉ‥‥‥。焦げた‥‥‥やけどした‥‥‥」
盛大にボロボロになった服とやけどが凄い身体を見た白亜。
「大地よ。その力と我の魔力を以て癒しを与えよ。大地の癒し」
即座に身体を治し、
「通常即興曲、服」
服を作って着る。
「その、妾の名を付けてはくれんか?」
「んー。じゃあ、ルナ。ルナはどうだ?」
「了解した。妾の名はルナ。ハクアの契約精霊だ」
今回のこれは完全に博識者の暴走だが、白亜はもう気にしないことに決めたらしい。
「むー」
キキョウがご機嫌斜めだ。
「何でですかエルディテ様。私だけでは不十分ですか?」
『そう言うわけでは。ただ今回これを無理矢理押し通したのにはちゃんと訳がありますので、その時まで』
「むー」
そういわれても不服なのだろう。
「く、クアハハハハハハハ!、げっほ、クアハハハハ!」
もうダイは爆笑しすぎで咳き込み始めている。
「ダイ‥‥‥」
白亜はいつも通り冷めている。
「師匠凄いですね。二人も契約して。しかも二人とも最上級精霊だし、契約が二人とも最も忠誠を誓うって決めて契約されるなんて。凄すぎです」
「最上級精霊なのか?」
「え?知りませんか?イフリートですよ」
「あ、聞いたこと有るかもしれない」
ーーーイフリートーーー
・炎の最上級精霊
・炎で作られた身体を持ち、契約者を豊かにすると言われている
・炎の魔法は無詠唱でも簡単なのは放てる
・水の精霊と非常に相性がいい
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「相性って反対属性ってこと?」
『いいえ。互いを高めあえるのです』
「よく判らん」
ーーーウンディーネーーー
・水の最上級精霊
・水で作られた身体を持ち、契約者を幸せにすると言われている
・水の魔法は無詠唱でも簡単なのは放てる
・炎の精霊と非常に相性がいい
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「え。キキョウ。無詠唱ってできたの?」
「できますよ?」
「はよいえ‥‥‥」
調べない白亜も悪い。




