白亜はテストで無双!その2
「あはは。負けちゃった」
「いや、僕の方も危なかったよ。師匠の魔法は全く勝てる気がしないけど‥‥‥」
「そうだね‥‥‥」
二人は白亜の異常さを一番知っているので考えが白亜の事になると合いやすい。
「すっげー。二人とも上級だぜ」
「さっさと始めるぞ」
ヒノイVSバルドの戦闘も始まろうとしていた。ヒノイが近くの精霊と仮契約したところで勝負が始まる。
「精霊よ。私の思いに応え、その力を地に向けよ。地は空気を割き、水を破壊し、あらゆる物を排除せよ。精霊の大地」
「えーっと。火よ、我の魔力を糧とし、敵を燃やし尽くせ!火球」
明らかにバルドの詠唱の方が短いが、バルドは未だ習い始めたばかりなので使い方が下手だ。ヒノイにかなり遅れて打ち出す。アッサリ火が消え、ヒノイの上級魔法で出た土の針がバルドに襲いかかる。
「それまで!」
土の針がぼろぼろと崩れた。
「やっぱり無理かぁ」
「まだ覚えたてだろう。こんなもんだ」
意外にもヒノイが優しい。
「私は3日で初級はマスターしたが」
事もなかった。
「皆凄い‥‥‥!」
「サヒュイは初めてだっけ?この教室に来てから模擬戦は」
「うん。凄いね」
「ハクアは飛び抜けてるけどね」
サヒュイVSシャウの戦闘も始まろうとしていた。
「光よ。あらゆる物を屈折させ、見るものを惑わせよ。その間に心に深く突き刺さる光を発せ。光の幻影」
「雷よ。我の前に立ち塞がる敵を焼け付く身体で魅了せよ。その身体に一切の防御、攻撃は通用せず。自分の身を粉にし、敵に食らい付け!雷の狼」
サヒュイは上級魔法の詠唱を素早く終え、シャウに向かって雷で出来た狼を作り出す。それが完成したとき、シャウの中級魔法も完成し、打ち出される。
その瞬間、シャウの出した魔法が消えた。雷の狼は光源を探すが見付からない。サヒュイはそれでも狼を向かわせ噛みつかせた。
「わああぁぁ!」
「きゃああ!」
狼が噛みついた瞬間、サヒュイも悲鳴を上げる。
「そこまで!」
「「はぁ、はぁ、はぁ」」
二人とも相討ち、いや明らかにシャウの方がやられたか、それでも引き分けで終わった。
シャウの魔法は光を屈折させ、光そのものを見えなくして相手にぶつける魔法だ。結構エグイ。白亜の魔法程では無いが。
「皆上達してるわねー。それじゃあ次は体術ね」
・ハクアVSバルド
・ジュードVSヒノイ
・ザークVSシャウ
となった。
「う、うし」
バルドは明らかに何かを諦めた顔で覚悟を決めていた。白亜に吹き飛ばされる覚悟である。
「えっと、大丈夫?」
その人に心配されるとヘコむものである。
「皆いい?開始!」
「たぁ!」
「おお。中々早い。警察部隊に混じってもなんとかやってけそうな位の」
「それ、誉めてんのか!」
「誉めてる誉めてる」
いつもなら絶対に見せない笑顔を見せ、
「そろそろ」
白亜の腕が一瞬ブレた。そろそろ来ると予感していたバルドは後ろに跳んで衝撃を逃がす。それでも全く勢いは殺せない。
「おお!それ!」
白亜が空中に跳び、そのまま蹴る。バルドが吹き飛んだ。この間1秒も経っていない。
「いって‥‥‥」
「ちょっと強く蹴りすぎちゃった。ごめん」
「さっき空中で蹴ってなかったか?」
「ああ。バックしたから追い撃ちで」
「こえぇ」
「うわー」
「怖」
そんなことを良いながらシャウVSザーク戦が始まった。
「っく!」
「そらっ!」
シャウの回し蹴りをザークがスウェーしてかわし、そのままの勢いで横から殴り付ける。シャウは身を屈めて避け、そこから鳩尾に向かってストレート。
それを受け止めたザークは脚を持ち上げ、フェイントで左ストレート。シャウはなんとか避け、そのまま踏みつけるように蹴りさげる。
蹴って殴っての攻防が続き、ザークの右ストレートでシャウが吹き飛び試合終了となった。
「面白くなりそうですね!」
「ふん。ハクアの犬が。お前なんてハクアのおこぼれを貰っているにすぎん」
「フフフ。確かにそうかもしれません。でも、それとこれとは関係ありませんよ!」
ヒノイVSジュード戦が始まった。
「ほら!」
「っぐ!」
流石は武の王。行動に無駄が殆んど無い。ヒノイは防戦一方だ。やがてヒノイが仕掛け始める。怒濤の攻撃を防ぎながらその間隔でカウンターを放つ。しかし、ヒノイの体力がつきてきた頃、ジュードが一瞬疲れで隙が出来た。
「そこだ!」
「甘いですねぇ」
それはジュードの誘いだった。いつも毎日白亜の訓練を受けているジュードがそんな直ぐにへばる筈がない。
「行きます!」
今までで一番早く鋭い蹴りを放った瞬間、ヒノイの体が吹き飛んでいった。ジュードの勝ちである。
「次は剣術!」
・ハクアVSシャウ
・ジュードVSザーク
・ヒノイVS手の空いた誰か
「ハクアとか‥‥‥」
白亜と戦う事になる人は皆最初こういうのに白亜は気付いていない。
「いい?開始!」
その瞬間シャウが走って白亜との間合いを詰める。白亜は当然二刀流である。また両手剣が無かったので。
「よっと」
「な!?」
白亜は殆んど見ずにシャウの攻撃を難なく弾く。
「動きが大きいですよ?」
「く。これならどうだ!」
殆んど予備動作無しに仕掛けてきた。
「おお。面白い。こうですか?」
白亜はそれを一度見ただけで真似してきた。シャウよりも完璧ではないが、ありえないだろう。こんなことが出きるのは魔眼のお陰だったりする。相手の動きの弱点を見る時に一緒に解析するのだ。こんなのこの魔眼を持っていても普通は出来ない。
「あたいの剣を?!」
「難しいですねー。なかなか。でももう終わりにします?」
何かにはっと気付いたシャウが体の前で剣を出してガードするがその瞬間には吹き飛んでいた。
「すごいなー。師匠は。見ただけで真似出来るんだもんな」
「始めるぞ」
ジュードが一瞬ブレた。それになんとか反応したザークが剣で受ける。
「は、速いな」
「師匠に比べたら遅すぎるくらいだけど」
白亜とは比べてはいけないと周囲は思ったが。
「それ!」
互いに剣を打ち合い、弾き返す。ジュードの方が少し押されたと思った瞬間、鬱憤を晴らすような一撃がジュードから放たれた。
「てりゃ!」
「うぐっ!」
「それまで!」
白亜よりは容赦なく見えたがいかんせん白亜の基本性能の違いで白亜みたいに相手が吹き飛ぶなんて事はなかった。
「再戦ですね」
「ふん!前みたいにはならんぞ!」
白亜VSヒノイの戦闘が始まった。
「この!」
「おお」
ヒノイがかなり速いスピードで間合いを詰めて斬りかかる。
「甘いですよ!」
白亜に近づいた瞬間、左の剣で抑えられ、右の剣で斬りかかられる。
そんな攻防が何度も続き、
「そらよっと!」
白亜の腕が消えた。と思った瞬間ヒノイが真横に吹き飛んでいった。
「あれは無理だろ‥‥‥」
ライム先生含め殆んど全員の考えがシンクロした。ジュードとリンは特になにも思わなかった。
ダイは面白い!と言いながら笑い転げていた。なにが面白いのかいまいち不明だ。
「結果は後日!それじゃあ今日はお仕舞い!さようなら」
「「「さようなら」」」
数日後。
「結果が届いたわよ」
ーーー数術テストーーー
100点 ハクア
97点 リン
96点 サヒュイ・レイル
90点 ヒノイ・ゼンテス
88点 ジュード・フェル・リグラート、ザーク
71点 シャウ
62点 バルド
ーーー魔術理論ーーー
100点 ハクア
98点 サヒュイ・レイル
96点 ヒノイ・ゼンテス
95点 ジュード・フェル・リグラート、リン
87点 ザーク、シャウ
76点 バルド
ーーー魔法テストーーー
1位 ハクア
2位 ジュード・フェル・リグラート
3位 リン
4位 ヒノイ・ゼンテス、サヒュイ・レイル
6位 ザーク
7位 シャウ
8位 バルド
ーーー体術テストーーー
1位 ハクア
2位 ジュード・フェル・リグラート
3位 ヒノイ・ゼンテス、バルド
5位 ザーク
6位 シャウ
ーーー剣術テストーーー
1位 ハクア
2位 ジュード・フェル・リグラート
3位 シャウ
4位 ザーク
5位 ヒノイ・ゼンテス
ーーーーーーーーーーーー
因みに、数術の学校平均は52点、魔術理論は61点だ。このクラス、やはりエリートだ。
「ハクアは‥‥‥気にしない方がいい」
「だな」
もう無視されるようになったらしい。
「師匠。全然筆記が上がりません」
「いい方なんじゃないか?」
「師匠に追い付ける日は来るのでしょうか‥‥‥」
ちょっと可哀想ではある。
「流石は白亜だな。面白い」
「ハクア様なら当然です」
『当然です』
白亜配下3人組は白亜自慢を始めた。
「凄い。私なんて前のクラス断トツ1位だったのにこっち来たら」
「ハクアが居るからねー。あいつに敵うやつこの世に居ないんじゃない?」
サヒュイはちょっと可哀想。
「俺殆んど最下位‥‥‥」
学校の平均で見たら普通なのだがこのクラスだと落ちこぼれに近くなってしまうのは仕方がない。
「ぐぐ‥‥‥」
ヒノイは結果に不満らしい。
「皆思うことは有るだろうけど!もう夏休みだからね。怪我したりしないように!じゃあ学校は終わり!さようなら」
「「「さようなら」」」
この学校に何故か終業式とかはない。テストが終わったら終わりである。
「さて、ジュードの精霊捜しとダイの紹介を母様にしに行って。あとあの魔法も試してみたいな」
『予定が沢山ですね』
『そうだな。退屈しなくてすみそうだ』




