白亜はテストで無双!
「それじゃあ今日はパーティを決めましょう」
ライム先生のその一言が教室に嵐を巻き起こした。
「ハクア君はうちのパーティに入ってもらいたいんだけど?」
「師匠は僕とって決まってるんです!」
「ハクアの戦力は欲しい。ジュードと一緒にいたらこちらに勝ち目はない」
「あたいとは駄目か?そうだよな、あたいみたいなバカなんて相手にもしてくれないよな」
白亜争奪戦である。
「ちょっと皆様、ハクア様が潰れてしまいます!」
「白亜は人気者なのか?ますます面白い」
本気で心配するキキョウとどこかずれているダイが白亜を助け出そうとするが白亜は人の壁に阻まれて身動きがとれない。
「潰れる‥‥‥」
この中で一番年下の白亜はその分背が小さい。潰されるのも時間の問題である。
結局。白亜がいつものグループがいいと言ったのでジュードとリンが一緒である。
・白亜、ジュード、リン
・サヒュイ、シャウ、ヒノイ
・バルド、ザーク
になった。
「リン。女子グループじゃなくて良かったの?」
「うん。ハクア君とジュード君がいれば100人力だよ」
あながち間違っていない。
「それじゃあ、今日は説明になるわよ」
意味もなくパーティを組んだわけではない。このメンバーで学園迷宮に入るためだ。
学園迷宮はその名の通り学園に設置されている迷宮だ。死ぬ寸前になったら戻ってこれる。つまり、非殺傷魔法が掛かっている。
これの攻略度で成績が上がることもある。
・レベルは1から10まで
・レベル1は3階層、2は4階層とレベルが上がるごとに強く、階層が増えていく
・ボスに勝つか最下層の結晶を壊せば攻略したことになる
・1人でも瀕死で転送されたら全員がやり直しになる
・チェックポイントが一定階層に設置してあり、そこに登録すれば何度でもそこから挑戦できる
「成る程」
「ハクア様、このメンバーなら問題ないかと」
言えている。超人と武の王、ニンフ、黄龍にウンディーネ。ここまで怪物揃いのパーティならばかなり攻略は早いだろう。
「それと学園迷宮に入れるようになるのは7歳からよ」
「‥‥‥‥」
「師匠入れませんね」
「気を落とさずに」
「あ‥‥‥元気だして?」
「クアハハハ!面白い!面白いぞ!白亜!」
白亜がなにも喋らなくなったのでジュード、キキョウ、リン、そして励ましもしないダイ。
「うん‥‥‥小さい子が入ったら危ないもんね」
『実年齢は26歳ですからね』
「エルディテさん‥‥‥」
鋭利なツッコミを入れる博識者。結構酷い。ジュードは助け船を出せなかった。
「あ、でも!師匠!夏休み入りますから!皆行けないですから!」
「ちょっと辛いなそのフォロー」
「え、あ、すいません‥‥‥‥」
ジュードまで落ち込んでしまった。
「ま、まあまあ。ほら!ジュード君だってまだ契約精霊探してないんでしょ?ハクア君と捜しに行ってみたらどうかな?」
「成る程。確かにそれは正しいですね」
「某もそう思うぞ」
リンがだした案にこれ幸いと乗っかるキキョウとダイ。もっと主人を大事にしてやれ。
「そ、そうですよ師匠!精霊がいないと師匠に追い付けませんからね」
「そうだな‥‥‥‥それでいこうか」
復活には程遠いが、白亜が少し元気になった。目は死んでいるが。
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「あの男は何者なんだ‥‥‥‥」
白亜の作った隔離魔法の中心に座り込む男。あの魔族である。
「魔力供給無しでこの威力の魔法‥‥‥しかも大量に持っていたあの聖剣‥‥‥何者なんだ」
それだけ白亜は異常であると言うことという結論にしか辿り着かない。
「研究したい‥‥‥あの男を!隅々まで!調べあげたい!」
ここまでくると変人である。
「この魔法を!あの転移魔法を!あの大量の聖剣を!何よりあの男自身を!調べたい!調べたい!」
この魔族、本当の目的はこの学校にあるという古代魔法の文献を調べたくてこんなことをしたのだ。簡単に言えば研究者、それも研究狂ともいえる思考の持ち主。
「調べたい!あの男を!あの知識を!ああ!私はなんて幸運なんだ!文献を調べるなんて今はどうでも良い!あの男を!あの男を調べ尽くしたい!私の物にして調べ尽くしたい!」
途中とんでもないことを口走っているがこの声を聞くものは誰もいない。なぜなら隔離されたら解けるまで空間が変わるのだ。
「ああ!調べたい!調べたい!調べたい!調べたい!調べたい!調べたい!」
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「?」
「どうしましたか師匠?」
「いや‥‥‥気のせいか」
「白亜。某、北に行ってみたいぞ」
「希望じゃん」
現在白亜達はジュードの契約精霊を捜しに行く場所を決めていた。
「土地で精霊って変わるのか?」
「あまり変わりません。運ですね」
別にどこでも良いらしい。
「もうすぐ夏休みだからな。家に帰るつもりはないけど」
「某を紹介しないのか?」
「あー。それは確かに」
ダイは直ぐに周りに馴染める。だからなんとなく昔からいたような感覚になる時がある。
「その時はその時で良いだろう」
相変わらず深く考えない人だ。
「はい!今日はテストよー」
この学校は三学期制でテストが学期の最後にある。1学期のみは最初にもあるが。
「大体どうなるか判るけどね‥‥‥」
「確かに‥‥‥」
白亜が全部一番なのは変わらないだろう。凡ミスでもしない限りは。
「それじゃあ数術テスト、始め!」
「次は魔術理論よー」
魔術理論は例えば火魔法には水魔法、光には闇、といった感じの魔法に関する計算がどれだけできるかの問題である。
因みにこのなかに、魔法具の作り方、属性の付け方なんかも教わる。結構有用な科目だ。
「いい?始め!」
「体術、魔法、剣術の方に行くわよー。準備して訓練場に集まっておいてねー」
筆記テストはこれで終了である。
「師匠。どうでしたか?って聞くまでもないですよねー」
「なんだそれ。ジュードはどうだった?」
「数術の問3が‥‥‥って言っても判んないですよねー」
「あれか?67×12してその後半分で割るから67×6だろ?で、402だろ?」
「問題覚えてるんですか!?」
白亜の場合問題を先に見てから後で一気に解くので大抵のものは覚えている。
「凄いねハクア君」
「リンはどうだった?」
「今回はいい感じかな?」
「おー」
キキョウとダイが来た。テスト中はカンニングする恐れがあるので精霊は別室だ。ダイも例外で別室だ。
「某は参加できるのか?」
「どうだろ?過剰戦力過ぎって言われるんじゃない?」
「先程精霊共が某とキキョウを見てビビっておったわ」
「わー。かわいそう」
精霊達はさぞや命の危機を感じただろう。
「今度は負けないぞ!」
「こちらもだ!」
皆が言い争っていたが、白亜を見た瞬間一瞬で静かになる。
「うん‥‥‥ハクアとは当たらないように願おう」
「そうだな‥‥‥」
白亜を見くびってえらい目に合うのは御免らしい。気持ちは判るが。
「はーい、皆!今回は公正にクジで相手を決めまーす!」
『?どこか公正じゃない所があったのか?』
『白亜様かと』
『どういうこと?』
『いえ、何でもありません』
「魔法テストからねー」
・ハクアVSザーク
・サヒュイVSシャウ
・ジュードVSリン
・ヒノイVSバルド
とクジで出た。因みにバルドはこの数ヵ月で魔法を覚えたらしい。
「俺‥‥‥ハクアとだ‥‥‥」
一番落ち込んでいたのはザークだったが。
「いい?開始!」
「行くぞ、キキョウ!」
「はい!」
「「我々、精霊を司るものなり。命よ、世界の理よ。我々の思いに答え、命なきものに新たなる命を。新たなる命を得たものよその命は有限であり、今この瞬間燃え付くように芽吹け。生命の幻!」」
「炎よ、この者達は我の敵なり。我より生み出されし炎よ!大きな熱風を巻き起こし敵を葬れ!熱風炎球!」
ほぼ同時に詠唱が始まったが、白亜とキキョウの方が詠唱が長く、少し不利かと思われたがそんな常識この二人には通用しない。同時詠唱はかなり難しく余程相手と心が繋がっていないと無理だと言われているが、この二人は即座に出来るぐらい異常だ。
ほぼ同時に詠唱が終わったが、白亜の方がイメージが直ぐに固まったらしく、青い塊が早く打ち出される。一瞬遅れてザークの熱風炎球が打ち出された。その威力は覚えたての中級魔法ながら、申し分無い。
だが、白亜の前では全く通じない。
アッサリと打ち負ける。白亜の魔法は周囲の地面や空気迄を操り、熱風迄もが防がれる。そしてこの魔法の真骨頂、周囲の物に手当たり次第命を吹き込み、泥でできた虎や空気の塊にしか見えない、つまり視認できない鷹、水で出来たライオン。
それが一斉に襲いかかろうとしたところで、
「それまで!」
水ライオンが噛みつこうとした瞬間その声がかかる。すると、元の泥や水や空気に戻っていった。
「こ、怖かった‥‥‥」
「ごめんごめん、ちょっと刺激的だったかな?」
流石に肉食動物のオンパレードは誰だって恐怖を感じる。
「こ、こわい‥‥‥」
「さすが師匠。詠唱がかなり早くなってる。さ、僕たちもやりましょう!」
リン&ジュードペアの戦闘が始まった。
「互いに手の内は大体わかっていますね」
「フフフ。私だってハクア君程じゃないけど成長してるんだから、それを見せ付けないとね」
ジュードはそこら辺の精霊と仮契約した。
「精霊よ。我の力とそなたの力。2つあって破れぬものなし。我の前に立ち塞がるもの、それを喰らい尽くせ!精霊の食欲!」
「水よ。汝は我と共にあり。我の魔力に応えて眼前のものどもを一掃せよ。海の怒り!」
少しだけ詠唱の短いリンが先に詠唱を終え、直ぐに発動する。が、白亜の指導を受けているジュードのイメージ力は半端なものではない。
ほぼ同じ早さで打ち出される。
リンの後ろから大量の水がジュードに襲いかかるが、ジュードの発動した魔法がまるで水を喰らうようにして丁度真ん中で拮抗している。
「いっけええぇぇぇ!」
ジュードが叫び、魔力量を増やした。すると、ジュードの魔法が水を喰らうスピードを上げ、リンに襲いかかる。
「それまで!」




