番外編 ジュードのプレゼント選び!
折角の正月なので番外編をと。本編とは一切関係ないのでとばして貰っても構いません。
もともと書くつもりはなかったので本編の方でもそれっぽい話は出てきます。今回の話はジュード目線です。
これは、白亜の家にジュードが居候していたときの年明けの話。
「今日から何日かは家に帰ってゆっくりすると良いんじゃないか?」
「なんでですか?」
この日は12月31日。大晦日。だが、この世界には正月と言う文化はない。ただ年が変わるだけの日なのだ。
「俺の世界では正月っていって年が変わる時は祝うんだよ」
「聞いたことないですねー」
「まぁ。1月3日までは基本的に休みなんだよ」
この世界には休みは月に2回ずつある。第1日曜日と第3日曜日だ。
「それがなんで家に帰ることに繋がるんですか?」
「年明けは実家に帰る人が多いんだよ」
「成る程」
と、言うことで。ジュードは日本で言う正月に城に帰ることになった。
「って言っても……」
やることがない。ジュードは自分の部屋でゴロゴロしていた。
「そうだ!師匠にいつも頼ってばかりだし、なにかお返ししよう!」
ジュードは即行で帰ってから外出した。
「とは言っても。何をあげたら良いんだ?」
問題はそこだ。
「アクセサリー?いや、師匠そんなの付けてるの見たことないしな。小物入れとか……いや、大抵のものは自分で作っちゃうからな……」
白亜はイメージさえすればほぼ無尽蔵の魔力で何でも作ってしまうので物には困ったところを見たことがない。つまり、
「プレゼントなんて意味がないんじゃ……」
そう言うことだ。
「ジュード。突然帰ってきてから慌ただしく出ていって。なにがあった?ハクア殿に見限られたか?」
「違いますよ。師匠は年の初めにはお休みをとるらしくて。僕は家に帰ってゆっくりしてくれば良いと」
「成る程な」
豪勢な食事をジュードと国王は一緒にとっていた。なんだかんだ言って国王はジュードを大切にしているわけで。
「それで、師匠になにかプレゼントをしようと思っているんですが」
「ほぉ。良い心がけじゃないか」
「でも師匠何でも作ってしまうので……」
「つくる?」
「あ、何でもないです!」
国王は白亜の能力を知らないので、説明の仕方が判らない。
「と、取り敢えず、師匠は物には困らない人でして。なんでも自分で出来てしまうので」
「武器はどうか?」
考え方がかなり物騒だがこの世界ではそう珍しいことではない。
「武器!それ忘れていました!」
「弟子のお前ならハクア殿の戦い方もよく知っているだろう。合う武器をドワーフのイジトに作らせると良い」
「はい‼ありがとうございます!父上‼」
ジュードは早速白亜に贈るプレゼントを模索し始めた。
「確か師匠の武器は刀で、こんな感じかな?」
刀の絵を描いていくジュード。
「ここの色は……物によって違うんだっけ?」
練習用の木刀だけでは形状が伝えにくいと思い、一生懸命絵を描いている。中々上手い。
「そうだ!ここには魔力をつけやすいように……」
だんだん刀の概念から離れていってしまう。
「イジトさーん!僕です!ジュードです」
「ジュード坊っちゃん。お久し振りです。武器ですか?」
「お願いできないかと思いまして」
「構いませんよ。何を御所望ですか?」
この人はドワーフの最高の鍛冶師のイジトだ。ジュードの小型ナイフなどを作ってくれている世界一の腕を持つ鍛冶師だ。
「これ、作れませんか?」
「これは……剣ですか?薄いですね。ここまで薄いとなにも切れないんじゃ?」
「これ見てください」
ジュードは水晶を取り出す。これは白亜がジュードの為に録画したもので、刀の扱い方などを教える教材として利用しているものだ。
「これは……!」
「凄いですよね」
白亜が巨木を切断する映像が流れていた。
「こんな薄いもので……しかもこの方の技量も……!」
「僕の師匠です。これを作っていただけますか?」
イジトの目が輝いている。
「勿論です。坊っちゃん!これの特徴を、もっと教えていただけませんか?」
「はい!」
イジトは鍛冶師故に、作りづらいものや未知の道具を作るのが大好きなのだ。
「ここに水属性を付与して、魔力を流しやすくしましょう」
「いいですね!ここには持ちやすいように……」
流石王族。師匠へのプレゼントは国宝級の価値を持ってしまった。
「それでは私は刀を打ちますので」
「おねがいします」
「ただ、材料の関係もありまして完成は来年度になってしまうかもしれません」
「大丈夫です。どうぞよろしくおねがいします!」
ジュードが白亜の村に帰ってきた。
「お帰り。ゆっくり休めた?」
「はい‼さぁ、訓練しましょう!」
「ヤル気満々ですね、ジュード様」
白亜の村の近くの森に、金属がぶつかる音が鳴り出す。今日も、平和だった。
新年度になり、学校入学。その前に一旦城に帰ったジュードに荷物が届いた。
「来たぁ!」
差出人はドワーフのイジト。あの刀が完成したのだ。箱には1振りの刀と手紙が入っていた。ジュードは慎重に刀を取り出し、手紙を開ける。
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完成いたしました。この刀は私の最高傑作と言えるでしょう。
正直、これはジュード坊っちゃんの師匠に合うものではないかもしれません。しかし、あの力量を見る限り、使いこなしてくれると信じています。
水竜の鱗などを組み込んだため、刀身にはいつでも水滴が付着し、血などがこびりつかないようになっております。
また、水が刀身を保護するため、手入れも一切必要無いものになりました。
この刀は切れ味のみを追求したので、かすっただけでも革ならば全く意味をなさず、鉄も切り裂けてしまう代物になってしまいました。
どうかこれが悪き考えを持つものに渡らぬように願っております。
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「イジトさんの最高傑作……」
普通ならそんなものを6歳の子供に渡すなんて正気の沙汰ではないが、受けとる人間が白亜ならそれも頷ける。
「どんなものなんだろう……」
その刀は赤色の布に包まれており、中を覗くことはできない。
「師匠。少しだけよろしいですか?」
「ああ。キキョウ。待っていてくれ」
ジュードは白亜を自分の部屋に招いた。
「どうした?」
「その。いつもお世話になってるので……プレゼント、です。受け取っていただけますか?」
まるでプロポーズしているような雰囲気だが本人は至って真面目である。
「お、おお。勿論。ありがとう」
ほんの少し、白亜の目が細くなった。どうやら笑ったらしい。表情筋はあるのかと問いたくなる。
「これなのですが」
「?」
一瞬躊躇った後、ゆっくりと刀を布ごと持ち上げる。
「僕がドワーフのイジトさんという世界一の鍛冶師に頼んで作って貰いました」
「え?」
「イジトさんはこれが最高傑作と仰っているものです。師匠なら正しく使ってくれるでしょう」
珍しく白亜の思考がフリーズしかけている。世界一の腕を持つ鍛冶師という所辺から。
「これが。イジトさんの最高傑作。宝刀『村雨』です」
ジュードが布をとると、真っ黒な鞘に収まった1振りの刀が表れた。柄は濃い緑色で持ちやすいように金具がついている。
「宝刀……?」
「はい。受け取っていただけますか?」
「無理でしょ!?俺一応子供だよ!?宝刀ってことは国宝級ってこと!?」
「はい。イジトさんの最高傑作ともなれば」
「いやいやいや」
予想にもしていなかった国宝級の価値を持つ刀を前にしてビビる白亜。
「師匠にしか使えないんです」
「そんな価値のあるもの持てないって」
「いいえ。これ位じゃ恩は返せません。恩返しの一貫として受け取ってください」
「恩なんて……」
「沢山あります。それこそ、返しきれないくらいの恩が」
白亜はしばらく渋っていたが、折れた。
「わかった。じゃあこれは受け取るよ」
「どうぞ。そのために作ったのですから」
とんでもない物を受け取ってしまったと白亜が後々少し後悔するのはまた別の話である。
「で、見てみても?」
「師匠の物ですから僕に了承をとる必要はありませんよ」
「じゃあ、遠慮なく」
白亜が刀をジュードから受けとり、鞘をゆっくりと抜く。金属が擦れる音が少しだけ鳴り、刀身が露になる。
漆黒とも言える刀身には水滴が付着し、少し動かすとポタポタと下に垂れる。ほんの少し反り返った刀はまさに芸術品と呼べるべき逸品だった。
「これ……なんて名前だった?」
「宝刀『村雨』です」
「村雨?」
「村雨」
それは完全に、南総里見八○伝に出てくる架空で、伝説の刀。刀身からは水滴が滴り落ち、とんでもない切れ味を誇る。
「ねぇ。その人俺と同郷じゃないよね!?」
「へ?そんなことないと思いますけど」
白亜の思考がイジトさんは日本人ではないか、という所から動かなくなったので、本人確認。イジトさんは日本には全く関係のない人だった。偶々が重なってこうなったらしい。
「ここまで偶然って重なるものなのか?」
白亜がそう言うのは仕方のないことだったのかもしれない。
ーーー白亜の愛刀、宝刀『村雨』ーーー
入学時に弟子のジュード・フェル・リグラートが世界一の鍛冶師、ドワーフのイジトに作らせた国宝級の価値を持つ刀。
水竜の鱗などが入っており、刀身には水滴が付着し続けており、それにより血が全く付かない。手入れを必要としないもの。
鞘には宝珠が使われており、盾よりも攻撃を防ぐことに特化している。
柄にはグリーンタイガーの毛などが使用されており、折れることはない。
刀身には水竜の鱗などが入っているヒヒイロカネが使用されており、薄いながら相当な強度がある。ヒヒイロカネはイジト本人かその弟子にしか伝わっていないので、それから見ても世界一の武器と言える。
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白亜は本人が自覚している以上にとんでもない物を手に入れてしまったようだ。




