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白亜の召喚獣は黄龍!

 次の日、白亜が珍しく寝坊した。と言っても朝の5時だが。


「おはようございますハクア様」

「キキョウ。おはよう」


 その後すぐに朝食を作り、白亜は走って出ていった。


「大丈夫でしょうか」


 そんなキキョウの呟きを聞く者は今ここには居ない。





「師匠!遅かったから心配しました」

「ごめんごめん。寝過ごした」

「昨日の疲れは?」

「ちょっとだるい位だ。ほっときゃ治る」


 こうしている間にも準備体操をする白亜。


「休んだ方が宜しいのでは?」

「休んでる方が疲れるんだよ。さ、やろう」


 朝の時間、白亜とジュードのいつもの規則正しい金属のぶつかる音がする。ただ、いつもとは違う事が1つだけあった。


「‥‥‥‥」


 物陰から二人をこっそり見ているのはリンだ。白亜が気になって仕方がないらしい。心配性の小さなニンフに見つめられているのを白亜は感じながらジュードと打ち合いを始める。

 いつも通りの朝だ。




「あー。肩が痛い」

「揉みますよ、師匠」

「あーそこ。気持ちいい‥‥‥」


 実にこの状況がおっさん臭いのに白亜は気付いていない。


「凝りすぎでしょ」


 音がコリコリどころかギャイギャイいっている。6歳の子供の肩の凝り方ではない。




「はーい、皆昨日は大丈夫だった?襲われたりしてないね?じゃあ授業を始めます」


「「「お願いします」」」





「なぁ!昨日のあの人みたか?」

「勿論!格好いいよな、仮面の魔法使い!」


 食堂でそんな話が聞こえてきてジュードは吹き出しそうになる。白亜は詰まらせて咳き込んでいる。


「げほっ‥‥‥仮面の魔法使い‥‥‥‥もっと、こう」

「そのまんまですね」

「恥ずかしくなってきた。今更だけど」

「今更ですねー」


 白亜は恥じらう心を持っていたらしい。


「これからどうしますか?」

「魔法の練習しにいくかなー。新しいの試してみたいし」

「新しいの!古代魔法ですか?」

「残念」


 白亜は召喚魔法を試してみたいと思っている。白亜が召喚なんてしたらとんでもないのが出てきそうだが、ここでそれを指摘するものは居ない。


『どうなるか私にも判りません。ジュードは連れていかない方がいいと思います』

「エルディテさん!酷い!」

『あなたの安全が第一です。お考え直しを』

「むー。後で成功したら見せてくださいね?」

「判った判った」





「この辺でいいか?」

『近くに人はいません。やるなら今だと思われます』


 白亜、キキョウ、博識者エルディテはある草原に来ていた。ここには昔小国があり、魔族によって滅ぼされた土地であり、そのせいもあってか人が滅多に寄り付かず、草原になってしまった場所である。


「我の魔力、力。それに答え、我の力となるものここに顕現せよ。召喚!」


 魔方陣が足元に現れる。明らかに、デカイ。


「でかすぎない!?」

『問題ありません。想定の範囲内です』


 どこまで想定しているのか不明だ。


「わー‥‥‥‥あははは‥‥‥笑えない」

「何がです?」

「キキョウ。知ってる?」

「見たこと無いですね」


「某を呼び出したのは貴様か‥‥‥‥」

「えーと。はい」

「ふむ‥‥‥‥面白い。転生者。しかも種族は‥‥‥クアハハハ!面白い!実に面白い!」

「判るんですか?」

「それぐらいは判るというもの」


「えっと‥‥‥種族を教えて頂けないでしょうか」

「黄龍だ」


ーーー黄龍ーーー


・黄色い龍

・中国4神の中でも最も力があると言われている

・空を飛ぶスピードは凄まじく、確認は不可能と言われている

・電流を操るのが得意で常に雲に身を隠し、たまに雷雲で悪人に鉄槌を下す


ーーーーーーーー


『たまにってなんだ。たまにって』

『私に言われましても』

『ん?あれ?こんなこと中国の伝承にあったっけ?』

『この世界の黄龍ですので』

『あ、そう言うことなんだ』


 中国の伝承とは少し違うらしい。


「貴様はどうやら神の血が入っているようだな」

「そうなんですかハクア様」

「えー、あー、はい」


 キキョウにばれてしまったがもうこの際良いと思ったらしい。


「それに加え精霊の力も持っている上、自身の命を削って使う能力も持っているとはな」

「命を削って!?」

「キキョウ。使いすぎなきゃ大丈夫なやつだから」


 使いすぎれば削るってだけで基本的に害はない。気力は。


「クアハハハ!いい!良いぞ!なんと面白い!」


 ただ笑い続ける黄龍。


「良かろう。貴様と契約してやる。某に名を付けよ」

「え、えーと。じゃあダイで」

「ダイ!その名。聞き入れた!」


 もう判るだろう。ダイはキキョウの次だ。前世の名前まんまである。

 白亜の腕に模様が刻まれる。この世界の人は博識者エルディテといい、黄龍といい、体に何か付けたいらしい。


「わー」

「あんまり驚いてる感じはせぬが‥‥‥これで貴様、いや、白亜は某と契約を結んだ。期間は基本的に死ぬまでだ」


 基本的に白亜の顔に変化はないため感情の変化が見分けづらい。目は勿論死んでいる。


「某は白亜と共に生き、その生き様を観察したい」

「観察!?」


 こうして白亜は召喚した黄龍の保護観察対象になった。


「でもそんなに大きかったりすると学校で確実に‥‥‥」

「こうすれば良かろう」


 イケメンに変身した。20歳位の。


「‥‥‥‥」

「クアハハハ!これから頼むぞ、白亜!」

「お、お願いします‥‥‥?」


 白亜の配下がジュード(武の王)博識者エルディテキキョウ(ウンディーネ)ダイ(黄龍)になった。





「大丈夫なんですか?」

「多分‥‥‥?」

『問題ありません。白亜様。私の言うように動いてください』





「本当になんとかなったな‥‥‥‥」

「面白い。特殊能力が自我を持ったか」


 ダイまでちゃんと学校にいてもいい事になった。どうしたかと言うと簡単である。国王に頼みにいっただけである。


「流石はエルディテ様」

『当然です』


「リンになんて説明しようかな‥‥‥‥」


 白亜の目はいつも以上に死んでいる。




 教室にはいる白亜。勿論後ろにはキキョウとダイが控えている。半分神の人間と、ウンディーネ、黄龍。かなりカオスな空間だ。


 未だ誰も来ていなかったので本を読む。古代書の解読だが。


「そこは強者では?」

「いや、勇者ではないか?」

「んー。王者だろ」

「「あ、確かに」」


 2人でやっていたことが3人に増えたがスピードはそんなに変わらない。


「師匠ー‼召喚‥‥‥‥へ?」

「お、ジュード。お帰り」

「どちら様ですか?」

「黄龍のダイだ」


「召喚魔法で?」

「そう」

「まじです?」

「まじ」


 ジュードは白亜にこっちに来るようジェスチャーをする。


「本当に召喚したんですか?」

「なんか問題あった?」

「召喚なんて普通はずっとこっちに居られないんですよ?」

「ん?」

「それに人間に変身とか余程上位の召喚獣じゃないとむりです」


 黄龍は4神の1柱だ。中国での話ではあるが。


「位が高いんでしょ?」

「高すぎるんですよ!父上に報告しないと」

『もうしました』

「相変わらずお早いですね!」


 白亜の幸運は留まるところを知らない。何故かは不明だ。



「貴様がジュードか」

「あ、はい!」

「ふむ‥‥‥それなりに面白そうではあるがやはり白亜の方が面白そうだな」

「え?」

「なんでもない。某は黄龍。名をダイと申すもの」

「あ、ジュード・フェル・リグラートです」


 結局これで落ち着いたらしい。





「はーい、あれ?誰ええぇぇぇ!?」

「あ、お気になさらず」

「気になりますよ!?」


 ライム先生も驚いている。取り敢えず事を話す。


「ダイだ。よろしく頼む」

「召喚獣‥‥‥‥いえ、よろしくお願いします」


 流石は先生だ。こういう状況でも理解が早い。





「ハクア君。この人は‥‥‥?」


 リンも聞くので紹介し、一緒に暮らしていいかを聞く。


「全然いいよ。お部屋ならハクア君のお部屋でしょう?」


 リンは優しい。少々心配性だが。





 ほぼ全員に同じ説明をし、疲れたハクア。古代文字の解読も全然進まない。


「そんなに気になる?」

「なりますよ」

「某は黄龍。力を押さえても目立ってしまうか」


 そういうわけではないと思う。




「えーっと。最近物騒なことが多いから皆気を付けて帰るようにね。さようなら」


「「「さようなら」」」



 その夜、風呂に入った白亜は自分の体を見て声は出さなかったが物凄い驚いた。


「なんだこれ‥‥‥」


 あの模様がほぼ全身に刻まれていた。殆ど模様が覆い尽くしている。顔や首は無かったので気が付かなかった。


「ちょっと。やりすぎだろ」

「む?某はそこまでやっておらぬぞ?」

「え?」


 なぜこうなったのか、知っている者は独りだけだが。


『‥‥‥‥‥』

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