古代魔法の使い手!
「貴様!なにを!」
「隔離しただけだ。害はない。ただ、ほっときゃ飢え死にはするだろうな」
向こうの魔族が何か叫んでいるがこちらには聞こえない。壊そうとすると壁にダメージがいった瞬間感電するかのように倒れる。
「まさかまだ聖武器があったとは!」
「ここの人間では無いからな」
白亜は油断なく相手を見つめて冷たい声で言いはなつ。
「魔族が何をしようをしていたのかは知らない。だが、それで人間が傷つくのは見ていられない」
「それだけでか!」
「他に何がある」
白亜にとんでもないスピードで剣を振りかぶる魔族。白亜は弓でガードする。が。
「なっ!?」
剣がぶつかったところから弓が黒く染まりだし、危険を感じた白亜は直ぐに空中へ放り出す。
「良い判断だ。人間。この武器は触れたものを無に返す」
空中で弓が塵になって消えていく。
「そうか。でもそんなのは私には無意味だ」
「何をしようが無駄だ」
「だろうな。だったら捌ききれないほどの武器をだすのみ」
白亜の周りに大量の剣が出現する。少し見ただけでは判らないが全てに糸が繋がっている。この糸はある一定の力が加わると直ぐに切れるようになっている。気付かれて糸を引っ張られても白亜の体が持っていかれることはない。
「全て聖武器だと!?」
「さぁ。始めよう」
白亜が恐ろしい勢いで投げ始める。普通の人間なら視認も出来ない速度で投げ続けるので捌ききれないものも当然出てくる。
「ぐっ!」
「かかった!隔離!」
「なっ!」
白亜は投げながらバレないように魔法を放っていた。じつはこれ、魔法ではない。只の魔力の塊で恐ろしく燃費が悪い上にひょろひょろなのだ。これに白亜は目を付けた。燃費の悪ささえなんとかなれば何かに使えるのではないかと。
それで編み出したのがこの隔離魔法。
簡単に言えば魔力を地面に吸わせて魔法を何時でも放つことができるような状態にする事で周囲と中の空間を変える。
「ちょっと君!事情をーーー」
「あ、やっべ」
教師が此方に走ってきたので逃げた。転移魔法を使って。
「あー。疲れた」
「お疲れさまです。格好良かったですよ?」
「恥ずかしくなるから止めてくれよ」
白亜はもう強化を解除して訓練場にて素振りをしていた。
『本当によかったか?転移を使って』
『良いと思いますよ?これで研究者たちにも熱が入るってもんですし』
白亜の使った転移魔法は古代魔法の1つだ。白亜と博識者コンビがとうとう復元してしまった。
「あー‥‥‥。なんで戦闘よりも転移の方が疲れるんだよ」
「古代魔法ですからねー」
色々と使い勝手が悪いらしい。
「師匠!」
「おー。ジュード」
「見ました!本当に格好良かったです!」
ジュードの目はまるでスーパーヒーローに会った子供のような輝きを放っている。
「あー。ジュードには判っちゃうよな」
「当然です」
何故かジュードも素振りを始める。習慣だ。
「それにしても古代魔法の1つをもう使えるようになったんですね!」
「あんまり声出さないでくれ」
「あ、すみません。それにしても早く無いですか?」
「そうか?幾つか使えるようになったけど」
「なんで教えてくれないんです!?」
「驚かせようと思ったから」
ジュードにも見せていないのに早速ぶっつけ本番で使う白亜が間違っているとキキョウは思った。
「キキョウ。リンは?」
「あの後救護室に。大した怪我は無いそうです」
「良かった」
白亜にとってリンは大切な友達である。だからこそあんな無茶をしてしまったわけで。
「あ‥‥‥腰が痛い」
「歳ですか?」
「まだ6歳だこの野郎。さっきの強化が響いてるんだ」
「あの大人になったやつですか」
「ああ。無理矢理体の造りを変えるものだからな。早々できる芸当じゃない」
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「それでは会議を始めます。起立。礼。着席」
「今回の議題はあの魔族と逃げた男についてです」
ここでも起立。礼。着席のスタイルだ。
「あの魔族。あの光から出てこられないらしく大人しくしています」
「あの光は?」
「何なのか不明です。こちらからの干渉は可能ですが向こう側からは干渉は出来ないようでして、現在は一旦あのままにいたしましょう」
「あの魔族が集めた武器は全て元の持ち主に返却いたしました、が。あの男が持ち込んだものは何故か跡形もなく消えており、あの男が回収したものと思われます」
白亜の手から離れたので消えただけである。
「あの男はいったい何者だ?」
「相当な魔法使いな上、弓や剣の扱いも妙に慣れていました。それと、信じられませんが古代魔法を使いました」
「なんだと?」
「私が声をかけようとした瞬間、目の前から消え失せました」
「素早く移動したわけではないのか?」
「光が残っていましたから」
「成る程」
白亜の実力を教師達は図ろうと必死だ。
「古代魔法の使い手か‥‥‥研究所を1つ1つ洗ってみるのも良いかも知れん」
直ぐそこに本人が居るのにも気付かず状況は進んでいく。
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「リン。大丈夫か?」
「ハクア君。もう大丈夫。助けてくれた人が居るみたいだしね」
まるで、ハクア君が助けてくれたんでしょ?とでも言いたげな言い方である。実際にリンはもう気付いている。
「そう。良かったね」
周囲に気付かれると不味いので当たり障りのない答えをしておく白亜。
「リン様。もし宜しければ何故あのような状況になったのかご説明いただけますか?」
「はい。とは言っても私もあまり覚えていないんです。講義に出る前に食事を取ろうと思って食堂へ行こうとしたら目の前が真っ暗になって」
「成る程」
「つまりはリンが意図的に狙われた訳じゃないってことか」
「何でそう思うんです、師匠?」
「簡単だ。他の生徒は授業として講義に出ることが決まっているが、俺達は自由参加だからな。それだったら部屋を直接狙った方が早いし確実だ」
「ああ、成る程」
リンはもうどこにも異常は無いので四人で教室に向かう。こんなことがあったので今日の授業は中止となった。
教室に入る。シャウがリンに飛び付いた。
「リン!あんた大丈夫!?なにもされてない?」
「シャウ。大丈夫だよ。どこにも異常は無いって」
「良かったです!」
サヒュイも此方に来た。白亜は少し疲れた顔をしている。いつもの目+さっきのバトルなのでいつも以上にオーラが暗い。
「師匠。いつまで寝てるんですか!」
「いや‥‥‥‥マジで眠い」
ジュードが気を利かせてただ眠いだけという状況を造り上げた。実際白亜は今眠い。するとバルドが、
「お前が眠いなんて珍しいなハクア!さっきの男を見て流石のお前も自信をなくしたか?」
「そうですね‥‥‥‥」
もうそういうことにしたらしい。ヒノイが珍しく興奮した面持ちで、
「貴様とは違うぞ!あの男は。美しく、技のなかに気品を感じる。何て素晴らしい!私が目指しているのはあの男だ!更に最後には伝説の古代魔法を使い、去っていくとは。ああ!なんて格好良いんだ!貴様とは真逆だ!ハクア!」
真逆というか本人である。
「あー。そうですね‥‥‥私なんかじゃ敵わないんでしょうね‥‥‥‥」
本人は眠くてなにも聞いていない。理想と現実はこんなにもかけ離れている物なのだ。
「皆!大丈夫だった!?とくにリンちゃん!」
「はい。問題は何もありませんでした」
「そうなの?良かったぁ」
ライム先生が目に見えて安心する。それだけ心配していたのだろう。
「今日はもう授業なし。それから余程の理由がない限り寮から外には出ないようにね!さようなら!」
「「「さようなら」」」
「ハクア君。説明してもらって良いかな?」
「ごめん眠い‥‥‥‥」
リンが部屋に帰ってからも白亜に聞き出そうとするが白亜はもう何も考えられないくらい眠い。のに風呂に入る。
「寝るから‥‥‥‥‥キキョウに聞いて」
1秒経たずに寝た。
「ハクア君って何者なんですか?」
「私にもよく分かりません。ですが、ハクア様は体はともかく精神的には大人です」
「呪いかなにかなの?」
「そうではありません。ハクア様は1度亡くなっておられるのです」
「生き返ったってこと?」
「いえ、生まれ変わったのですよ。リン様」
キキョウは創造者や博識者以外のことを知りうる限りすべて話した。
「そんなことが‥‥‥」
「私も最初は信じられませんでしたが、一緒にいるうちに解ってきました」
キキョウも最初から白亜を信じきっていた訳ではなさそうだ。
「リン様もその内に判ります。今日はお疲れでしょう。ゆっくりお休みください」




