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白亜VS魔族戦、開戦!

「ハクア君って何者なの?」

「ただの人間?」

「いや、そう言うことじゃなくて」


 部屋で夕食を作りながら白亜と会話するリン。


「なんでそんなに強いの?」

「‥‥‥知りたい?」

「知りたい!」

「訓練しかしてないよ」

「それでそんなに強くなれるなら世界中の人がハクア君レベルになってるよ」


 一理ある。


「ほんとだって。はい、ハンバーグ」


 夕食を食べながら話を続ける。


「ねえ。本当になんかあるんでしょ?」

「ない。あ」

「わかった!?」

「お風呂に毎日入ってるからかな」

「王族はみんなそうだよ!」


 王族がみんなハクアレベルになったらちょっと怖い。


「そういわれてもな‥‥‥訓練見たでしょ?」

「う、うん」

「あんな感じ」

「そこまでどうやって持っていったのか知りたいんだよ‥‥‥」

「素振り」

「え?」

「素振りしかやってない。相手がいないときは素振りを毎日ずっとしてた」


 本当に白亜は素振りばっかりしていた。


「素振り‥‥‥」

「やってみたら?」

「無理だよ‥‥‥」

「そっか」



「じゃあ今日は弦楽器のチェロにしまーす」

「わー」


 観客は二人。なんとも寂しい演奏会だ。白亜はまた棚の後ろから出す振りをしてチェロのチューニングに取りかかる。


「じゃあ曲は、『チェロ無伴奏組曲』の一番。プレリュード」

「へ?ぷ、ぷれりゅー?」

「あ、覚えなくて良いよ」


 この曲はバッハの曲でチェロのなかでは最も有名な曲と言えるだろう。白亜が弾き始めるとキキョウとリンが弓の動きを目で追い続ける。白亜の演奏が終わった。


「なんでずっと見てたんだ?」

「私もやってみたい!」

「私もです。ハクア様」


 二人ともチェロがやりたいらしい。何故か大人気である。


「楽器がな‥‥‥‥」


 白亜が作れれば良いのだが、白亜の手が離れたら消えてしまうため他人に譲れない。


「やりたいです」

「いや、やる気はあってもな」


 結局その話はお流れになり10時を過ぎたので就寝となった。


 そしてまた次の日。白亜はリンが起きたときにはもういなかった。


「ハクア君はまた訓練なんですか?」

「ええ。少なくとも私と契約してからは毎日続けています。もっと昔からしていたようですが」


 最近、




 白亜起床、朝食を作って訓練場へ

 キキョウ起床

 リン起床

 キキョウ&リンで朝食をとる

 二人でジュードと白亜を迎えに行きそのまま授業へ


 ~学校~


 リン帰宅(白亜は訓練)

 白亜&キキョウ帰宅

 自由時間

 白亜&キキョウ&リンで夕食作り、食べる

 風呂(白亜とキキョウは部屋の物、リンは共同浴場)

 楽器練習

 就寝




 というタイムテーブルだ。


「ご飯食べたら行きましょう」

「そうですね。ハクア様は今日、ペンを忘れてしまっているようです」


「それにしてもハクア君って何時に起きてるの?」

「確か4時程だと」

「4時!?全然寝れてないじゃないですか」

「ですよね。もう少し遅く起きるように言っているのですが‥‥‥」




 訓練場からいつもの小気味良い金属のぶつかる音がしてくる。


「もう少し重心を寄せろ!」

「はい!」

「右足で踏ん張ると2撃目が入りづらくなる!もっと両足で踏ん張れ!」

「はい!」


 実に師弟っぽい会話だ。師弟だが。


「そこで腕をあげない!」

「はい!」



「俺の勝ちだぞ?」

「ムムム‥‥‥」


 白亜とジュードの訓練が一応終わったようだ。


「お疲れ様。はいこれ」

「ありがとう」

「ジュード君も、はい」

「ありがとうございます」


 これも日課になってきている。リンは料理はそんなに上手くないが、何故かスイーツや飲み物になると美味しくなる。今二人に渡したのはスポーツドリンクだ。白亜(博識者エルディテ)が教えたものだ。



「皆様、ベルがなります。戻りましょう」

「そうだな」




 白亜はキキョウと一緒に図書館に向かう。


「おう、小僧」

「白亜です。おはようございます、ビューさん」


「今日は古代魔法の文献を探したいんだが、蔵書が多すぎるから何とかしたいな」

「見つける魔法でもあれば良いんですがね」


『ありますよ?』

『うっそ』

『特殊属性ですが』

『使えないじゃん‥‥‥』


 ジュードがいないと無理である。


「ビューさん。本ってどうやって探すんです?」

「わしが探してやろう」

「本当ですか!?」

「ああ。なんの本だ?」

「古代魔法です」

「また大きく出たな。使いたいのか?」


 今まで何度学者が挑戦しても使えた試しがない魔法を調べたいという白亜にビューは聞く。


「いえ、少し気になりまして」

「ほう。良いだろう。この棚を探すが良い」


 ビューがガバッと開いた。


「あ、開くんですね‥‥‥心臓に悪い」

「そりゃ本じゃからな。ここだ」

「ここ‥‥‥地下ですか?」

「他の学生には内緒じゃぞ?」


 何故白亜には教えてくれるのか。


「えっと?」

「わしの気に入った奴しかここには入れん。小僧は中々見ていて面白い。だからいれてやるんじゃ」

「あ、ありがとうございます」

「ただの気まぐれじゃよ。さあ、いくと良い」


 白亜とキキョウは地下に入っていく。


「暗いな。暗視あるから大丈夫だけど」


 そこの部屋には。大量の古代魔法に関する資料が置いてあった。なんで古代魔法の文献がこんなところに一点集中しているのか謎である。


「取り合えず全部コピーしよう」


 白亜は博識者エルディテとコピーという魔法を作った。

 これが中々チートである。


 これは、本であれば背を触るだけで内容をインプットできる物である。だから、本が並べてある本棚を背をさわりながら走っていけば博識者エルディテが、頑張ってくれる。THE・人任せである。


 数百冊どころではない蔵書を博識者エルディテが全部覚えた頃、そろそろベルが鳴る時間になった。


「ビューさん。ありがとうございました」

「早くないか?」

「大丈夫です」

「わしもあれ全部読んでないからのう。もしかしたらあの中に本当に魔法書があるかもしれん」


『魔法書は有りませんでした』


 博識者エルディテは本当にこういうとき便利だ。しかし、残念ながら魔法書は無かったようだ。


「そうかもしれませんね」





「師匠。古代魔法は使えそうですか?」

「どうかな。まず言葉を読むところからだからな。なんとか音にはまっても意味がわからないのなんのって」

「いや、先ずそこからおかしいですよ!?」


 白亜と博識者エルディテがやってしまえばなんでもできる気がするとジュードは思っていたが、ここまでの早さで進展するとは思わなかったらしい。


「やっぱり僕達と師匠とは格が違いますね」

「なんだそれ」


 しかも本人の自覚がないところがまた怖いところである。




ーーーーーーーーーーーーー




「ねぇ、リオが前言ってた子ってハクア君って言うらしいわよ?」

「ハクア君?」

「でも、リオでも諦めた方がいいかも」

「なんで?」

「すごい競争率なのよ。これ見て」


 サリーが取り出した紙をリオはじっと見つめ、


「なにこれ」

「ね?それであの顔よ?しかも礼儀正しいし」


 そこにはハクアの成績(テスト)が書かれていた。勿論全て学校1位を取っている。ハクアは知らないが、1位から50位までは学校に貼り出される。


「あんた見てないでしょ。掲示板」

「う、うん。人が一杯だったし」


 さすがに見ていたら皆1位を独占しているハクアに気づく筈だ。


「私なんて240位だったのに」

「それでもかなり良いほうなのよね」


 ハクアの学校は知っての通り全学年入り交じって行われる。学年という概念はなく、その人がある一定の単位を取れば卒業できる。因みに、生徒は2000人を超える。高等部を入れればもっとあるが。


「これはちょっとね」

「だね」

「それにね。ハクア君、女の子らしいのよ」

「ふぇ?」

「なんでも本人が男装が好きだとかで」


 噂がとんでもない方向へ吹っ飛んでいるようだ。


「男装が!?」

「でも似合ってるのよね。それがまた」


 どうやら白亜は周囲から変人と見られているようだ。哀れだ。





ーーーーーーーーーーーーー





「ここで、魔法の反発が起きる。そうすると下級魔法の威力を上級魔法がーーーー」


 白亜は講義を受けていた。全魔法共通の知識を学ぶ授業だ。白亜は基本的にあまり魔法を使う気はないが。


「魔法の詠唱は基本的に絶対必要だ。声に魔力をのせ、この世界のありとあらゆるものに働きかける。世界がそれに答えてくれるのだ」


 判りにくい理論だ。そうこうしているうちに、ベルがなった。


「今日の授業はここまで!起立。礼」

「「「「ありがとうございました」」」」


「ハクア様。これからどうなされますか?」

「そうだな。先ずーーーーー」


 ドォン!


「な!?」

「なんでしょうか!?」


『敵襲です!』

『敵!?』

『遠視を!』


 白亜は言われた通り遠視を発動させた。白亜の左目が光を帯びる。


『なんだこいつら!』

『魔族です!』


ーー魔族ーー


・人間の亜種

・魔力が非常に多く、身体能力も高い

・人間から迫害を受けている場合が多く、人間と何度も戦争をしている

・背からは蝙蝠のような翼、全身の肌は基本的に真っ黒

・絶対数が少ない


ーーーーーー


『今表示しなくて良いから!』


「ハクア様!」

「向かうぞ!」

「はい!」




 広場に何人かの魔族、人質らしき女の子がいる。


「リン!?」


 捕まっているのはリンだった。気絶させられていてぐったりしている。


「人間ども!我々に従い奴隷となるならばこの女は殺さない。ただし、この女も奴隷にするがな‼従わなければそいつを殺す。下手に攻撃などするなよ?この女も巻き添えを食うだけだぞ」


 魔族は気絶したリンを高々と持ち上げる。


博識者エルディテ!俺はリンを助けたい!』

『子供の貴方が行っても大人に止められるだけです!』

『変装すればいける!』

『相手の強さは貴方よりは低いです!ですが相手は魔族。貴方の魔法は通じますが、普通の魔法は通じません!物理攻撃も同様です!』


「魔族を攻撃できないのか?」

「無理だ。魔族には聖武器しか効かない。後ろにあるだろ?あれは魔族が襲撃してきたとき真っ先に持っていきやがった」

「なんで!借りられないの?」

「無理だろうな。聖武器なんて早々あるもんじゃない」


 そんな声が白亜の後ろから聞こえる。


「キキョウ。頼んだ」

「お任せを」


 白亜は反対方向‥‥校舎に向かって走る。全力で走ると確実に目立つのであくまでも軽く。6歳ぐらいの子供のスピードで。

 校舎裏へ。見られていないことを確認して武空術をできうる限り最高速度で使い、屋上へ。


通常即興曲ノーマリスト


 通常即興曲ノーマリストでローブ、靴を用意。そして、


「身体強化、最」


 白亜の体が急激に大きくなる。これは白亜が編み出した身体を最も良い状態にする身体強化。今白亜は前世の死んだときと同じ体つきや顔になっている。魔眼は変えられないのでオペラマスクで目元を隠し、髪色を昔と同じ黒に変える。

 ローブと靴を履き、もうこの世界の白亜の面影は殆どない。


「あれが聖武器か」


 白亜は聖武器をじっと見つめ、


幻想即興曲ファンタジア、聖弓」


 その直後には同じものが白亜の手に握られていた。


「リン。待ってて。すぐに助ける」


 白亜は糸を付けた矢をつがえ、ギリギリと引き絞る。絶対にはずせない。その重圧を感じ少し指先が震える。


『怖いなら止めたらいかがです?』

『誰がやめるか』


 挑発されたことで寧ろ落ち着いたらしい。狙いを定めて放った。


 ドシュッ。


 そんな音がしてリンを持ち上げていた魔族が倒れた。その瞬間に視認できないほどの速度で何かがリンを奪い取り、少し離れたところに横たわらせる。


「この子を頼む」


 近くに居た人に伝える。この声は完全に白亜の物ではない。声真似で前世に実際に居た俳優っぽい声を出している。


「な、何だてめえ!」

「何だはこちらだろう。私は無関係だが」


 白亜は糸を付けた矢を何本か放つ。


「くっ!」


 流石は魔族。矢を避けきった。


「‥‥‥」


 白亜はそのまま走りながら魔法を放つ。


「っは!魔族に魔法が効かないのを忘れたか!」

「なぁ、あいつ詠唱してないぞ!」


 白亜は5発魔法を放つ。全て避けられてしまい、地面に着弾する。


「詠唱なしで魔法を放とうがそんなひょろひょろのじゃあたりもーーーーー」

「かかった。隔離!」


 その瞬間、着弾したところから光が放たれる。


「くっそ!」


 1人だけ逃げたが、他の魔族が全員その光が作り出した壁の内側だ。

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