白亜は試験を開始しました!
かなり大きめの水晶に録音・録画できるらしい。
「それじゃあ君たちの力を見たいから、さっきの自己紹介の時の両側の人から模擬戦していこう」
白亜はいきなりヒノイとあたってしまった。
・白亜VSヒノイ
・バルドVSザーク
・ジュードVSシャウVSリン
リンは人数的に組めないので3人でやるらしい。
「それじゃあ先ずは魔法。使える人はどれだけいる?」
バルド以外全員だった。
「みんな使えんのな。すげー」
バルド本人は一番気にしていなかった。
「じゃあ、リンさんはザーク君とね。それじゃあ非殺傷魔法使ってあるから心置きなく戦ってね!戦闘開始!」
かなり軽い口調で戦闘開始が告げられる。
「キキョウ。頼むぞ」
「お任せを」
ヒノイが走りながら精霊に魔力を譲渡し、魔法を打ってくるが、キキョウのだすバリアで完全に防がれている。
「ちっ!操られていてもウンディーネ様か!」
「操ってないし‥‥‥」
「ハクア様。見せてやりましょう」
「あれか?いいぞ」
「「精霊たちよ、私の願いを聞き届けよ。天からは雷を落とし、地面は鳴り響き、空気は鋭利な力として私と共にあれ。精霊の轟」」
その瞬間、ヒノイの周囲に雲もないのに落雷がおき、地震で体制が崩され、鎌鼬のような風が巻き起こる。
「う、うああぁぁぁ!」
ヒノイは速攻でやられて非殺傷魔法によりその場から弾き出された。危険すぎる二人である。
「お、巧くいったな」
「当然です!ハクア様の魔力は何でも可能にしますから!」
「なんだあいつ‥‥‥!」
「凄いな」
「流石師匠」
「あんな魔法、私には出来ない‥‥‥」
「見たことが無い上にあんなのを打っても疲労を見せない‥‥‥本当に人間族か?」
バルド、シャウ、ジュード、リン、ザークが皆自分の戦闘の手を止めて白亜を見ていた。
「凄い‥‥‥!」
勿論、ライム先生もだが。ヒノイは忘れられているようである。
「あ、っと。僕達も見とれていないでやりましょう」
ジュードとザークが向かい合う。
「ジュード、だったか?お前はあのハクアとやらの弟子だと言っていたな」
「はい、じゃあいきますよ!」
ジュードは精霊に呼び掛けて適当な精霊と契約する。因みにヒノイもそうだった。精霊と契約する子供は稀なのである。
「我の魔力を呼び水とし、炎の鞭を!火の鞭!」
「火属性ですか!なら。精霊よ、我の言葉に魔力を。言葉は壁になり、攻撃したものに鉄槌を!言葉の壁!」
ジュードの言葉に答えて精霊が壁を作る。それに火の鞭が当たるが、ジュードに攻撃するどころか、当たった瞬間、魔力の塊が飛び出してきてザークに当たる。
「ウグッ‥‥‥!」
「そこまで!模擬戦だからさっきのハクア君みたいにボロボロになるまでやる必要は無いのよ?」
「ありがとうございました」
「ありがとう、ございました」
こちらが決着がついた頃、リンとシャウの戦いも終盤に差し掛かったようだ。
「水よ。汝は我の腕。我の意思にしたがいその姿で敵を圧倒し薙ぎ倒せ!渦潮」
「光よ。汝は我の力。我は汝の力。その素早く鋭利な力で敵を貫け!光の矢」
リンの渦潮より少し遅れてシャウの光の矢が発射される。光の矢は字面の通りだが、渦潮は渦潮と言うより高速で水の塊から水が噴射されるといった方が正しいだろう。
二人の魔法は調度二人の真ん中でぶつかり、渦潮が光の矢を打ち消してシャウに向かっていく。
「そこまで!」
ライム先生の声がかかった瞬間シャウの目の前まで来ていた水の塊がピタッと止まり、ボチャッっと音をたてながら落下した。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
これで一通り魔法の試験は終了だ。
「いやー、強いわ。中級魔法?」
「はい。光の矢は初級魔法なので大丈夫だと思っていたのですが、以外と強くて。競り負けるかと思いましたよ」
「でもハクア‥‥‥だったっけ?あいつには絶対勝てない気がする」
「無理ですよあんなの‥‥‥まだ6歳って私達のなかで一番年下なのに一番強いって何なんでしょうね」
白亜が単に精神年齢26歳だからである。
「次ぎは体術だよ。出きる子!」
白亜、ジュード、バルド、ザーク、それと非殺傷魔法で回復したヒノイが手を上げた。ヒノイを除いた全員が、あ、あいついたんだ。と思考がリンクした。
「ハクア君、無理しなくて良いのよ?」
魔力を大量に使ったと思い込んでいるからなのか、それとも白亜がまだ小さいから無理する必要はないと言いたいのか。
「師匠は僕より強いので問題ないと思いますよ?」
「え、体術もなの?じゃ、じゃあ良いけど」
以外と適当だ。
・白亜VSヒノイ
・ジュードVSバルド
・ザークVS手の空いた誰か
となった。
「ふ、ふん!私は先程は貴様に負けたのではない!ウンディーネ様に負けたのだ!それを充分理解するように!」
「はいはい」
白亜のやる気の無い目をみたヒノイは更に激昂する。
「なんだその目は!魔眼が勿体無い!」
「生まれつきの目付きなんでね。そんなことより始めましょう?」
「ハン!後悔させてやる!」
「はい。皆準備できたわね?それじゃあ開始!」
ヒノイが白亜に襲いかかる。
「口ほどにもない!」
「そうかな?」
その瞬間ヒノイの視界から白亜が消える。
「なっ!?」
「こっちこっち!」
「は!?」
「そっちじゃないですよ?」
白亜は死角を巧く利用して完全にヒノイの視界から消えている。
「っち!出てこい!しっかりちゃんと勝負しろ!」
「一応これも戦闘スタイルなんだけどなー」
ちゃんと白亜は見えるように向き直る。
「くっ!この‼っはぁ!」
「遅いですねー。目つぶっていても避けられますよ?」
中々良い動きではある。そこらの戦士と同程度以上はありそうだ。が、白亜にはそんなものは通用しない。
「それじゃあ、いっきまーす!」
「な!?」
白亜の脚が持ち上げられて、一瞬ブレた。と思ったらヒノイは吹き飛んでいった。
「「「「「‥‥‥‥‥‥‥‥」」」」」
白亜は周囲の視線など気にしていない。と言うか吹き飛ばしすぎちゃったかなーと言いながらヒノイを捜しに行った。
「ねぇ、あんたの師匠ってあんなに強いの?」
「大分手加減してますね。何時もならブレる所さえ見えませんので」
「あれで手加減って‥‥‥‥」
白亜がヒノイを担いで戻ってきた。
「すみません。結構強いと思ったのでそれなりの速さのまま蹴ってしまったので‥‥‥骨折れてるかも」
「魔法が直してくれるから大丈夫ですよ、師匠」
「そうですよハクア様。貴方のわりには大分手加減していましたし」
「んぅ‥‥‥」
「あ、起きた」
「くっそ‥‥‥未だ私は戦えるぞ!」
「いや、これ模擬戦ですから」
それをあんたが言うか!と周囲は思っているのも白亜は気づかない。
「それじゃあ、ザークさん。やりましょうか?」
「い、いや。遠慮しておく」
「なかなか面白い攻撃ですね!」
「なんで当たんないんだ!?」
ジュードとバルドはジュードがバルドを圧倒していた。流石は武の王である。
「それでは、よっ!」
「ぐわぁ!」
「それまで!」
「なにあの師弟コンビ‥‥‥強すぎでしょ」
「勝てる気がしませんね‥‥‥特に、ハクア君」
女子グループが白亜とジュードをチラチラとみて、
「二人とも顔はスッゴい良いし、ハクアなんてあたいが横に立ったら苛められそうな位だろうにな」
「本当ですね。ハクア君は兎も角、ジュード君なんて10歳なのになんでモテないんでしょうか?」
「ハクアにベッタリだからだろ」
「ああ、成る程‥‥‥」
バルドVSザーク戦が始まった。二人とも中々強い。ただ、白亜とジュードとを比べてしまうとどうも霞んでしまう。
バルドがフェイントをしてザークの腹に叩き込もうとするが、ザークは力業でその拳の軌道をずらす。
その勢いのまま両者が蹴りの体制になりほぼ同時に蹴りを放つ。種族の面で勝っていたザークの勝利となった。
「そこまで。これで全員終わったわねー。次ぎは剣術です。出きる人は?」
白亜、ジュード、シャウ、ザーク、ヒノイだ。
「もう一度だ!」
「またですか‥‥‥そろそろ他の人ともやりたいのですが」
結局、
・白亜VSヒノイ
・ジュードVSシャウ
・ザークVS手の空いた誰か
となった。
「剣はこれねー。斬れないから安心してね」
木刀とかではなく刃を潰してあるタイプの剣だった。しかも、片手用。
「あの‥‥‥両手剣無いですか?」
「今上級生が使っちゃってるのよ。片手剣使ったこと無い?」
「じゃあ、2本貰えますか?」
「二刀流!?」
白亜は結局二刀流になった。
「片手剣殆ど使ったこと無いんだよな‥‥‥」
「ふっふっふ!運命の女神様は私に微笑んだようだ!」
逆に、ヒノイは普段片手剣派なので扱いには馴れている。
「いいわね?それじゃあ開始!」
「たぁ!」
「よっと」
斬りかかってきたヒノイを白亜は左手の剣で流す。
「な!?片手剣は苦手ではないのか!?」
「苦手でも受け流す位できますよ?でもボーッとしてても始まらないので此方からも攻めさせていただきます」
言うが早いが白亜はヒノイに斬りかかる。まるで二刀流を普段使いしているような動きにヒノイは動揺する。
「っく‥‥‥!」
白亜が突然とんでもない速さで切りかかり始める。
「っ!‥‥‥」
ヒノイは殆ど反射で攻撃を受ける。どちらが劣勢なのかは言うまでもない。
「はい、私の勝ちです」
ヒノイの首元にピタリと刃をあてて白亜が制止していた。
「そ、そこまで!」
「流石師匠!」
「やはりハクア様の剣技は素晴らしいです」
「刀じゃないから扱いにくかったけどね」
とか言いながら圧勝である。周囲が自信をなくすのもそう遅くはないだろう。
『お疲れ様です。白亜様の弱点を計算いたしますがどうしますか?』
『あ、頼む。片手剣は軽くて使いづらいからな』
そんなことをしている間にジュードVSシャウだ。
「ほう」
「く!‥‥‥固い」
軽い攻撃をかなりの速さで繰り出すシャウにジュードが仕掛ける。と、思ったら完全に防御体制に入りシャウが一瞬戸惑った。その一瞬をジュードは見逃さない。背中合わせになり、肩の位置から首元にピタリと刃をあてる。
「そこまで!」
「ふー。あんた強すぎ」
「師匠には敵いませんが?」
「ハクアと比べたら駄目よ。あいつ一体何処で魔法とか剣術とか習ったか知ってる?」
「魔法は独学、剣術は師匠の師匠が居るらしいです」
「独学ね‥‥‥あり得ないわ」
そして、シャウVSザークの獣人二人の対決だ。
二人は獣人ならではの身体能力とスタミナで動き回る。互いに走り回り、大振りで返してぶつかる。その状態からフェイントをかけ、カウンターで攻撃する。どちらの動きも年齢にしては素晴らしいもので、今すぐにでも戦士としてやっていけるほど。
ここにいる全員が、異端の者と言われるほど強く、いわばエリート集団なのだ。白亜のせいで大分霞んでしまっているが。
ガキィィン!
そんな音がしてザークの剣が後方に吹き飛んでいった。シャウはその首に剣をピタリとあてる。
「そこまで!これで試験は終了!これからは各々寮にいって荷ほどきをして頂戴」
「「「「「「ありがとうございました」」」」」」




