白亜はランバート学園に入学しました!
ランバート学園はかなり大きい学校だ。権力的にも、実際の大きさも。
「入学式出たくないです‥‥‥」
「いつか良さがわかるらしいぞ?」
「師匠は判るんですか?」
「わからん」
何せ白亜も若い頃に死んだのだ。入学式の良さなんて物は分からない。
「でかいな‥‥‥‥」
「僕の家よりは小さいですよ?」
「お前の家と比べたらアウトだろ」
「大きいですね。ハクア様のお家の‥‥‥」
「悲しくなるから計算しないでくれ」
『ここのグラウンドの面積なら白亜様のお家の‥‥‥』
『いいから!』
そんなことを話ながら学校の門へ。因みに今は二人ともこの学校の制服を着ている。白亜は本当は女子用の制服の筈だったのだが、あまりにも拒絶したために男子用の制服である。
「本当に男子用でもよくて助かった」
「師匠なら女子用でも全然にあ‥‥‥‥」
白亜から殺気を感じたジュードはその話を打ち切った。良い判断である。
「い、いやー。それにしても今日から寮生活ですねー」
「前世でなれてるから」
「そ、そうですか‥‥‥‥」
人生の半分を独りで生きてきた白亜らしい返し方だがこの場合では雰囲気が悪くなる一方である。
「きゃっ!」
白亜に女子生徒が転んでタックルした。が、普段からガッツリ鍛えている白亜はこれぐらいではびくともしない。
「おっと。大丈夫ですか?」
「えっとその、すみません」
「いえいえ。お怪我がなくて良かったです」
そう言って離れてジュードの元に戻る白亜をジュードはジーっと見ていた。起き上がった女子生徒がそのままその場で立ち止まっている。顔は真っ赤だ。
「師匠」
「ん?」
「今の、絶対に恋が始まるパターンですよ」
「お前以外と古いな」
「なに言ってるんですか!?あの子めっちゃ顔赤いですよ!?」
「あ、本当だ。ぶつけたかな?」
「鈍い!」
『白亜様』
『どうした?』
『それはないと思いますよ』
『?』
『はぁ‥‥‥‥』
本当に全く理解していなかった白亜であった。白亜らしいと言えば白亜らしい行動だが。
ーーーーーーーーー
「リオ、大丈夫?」
「う、うん‥‥‥スッゴク格好いい男の子が助けてくれた」
彼女は白亜の目をまともに見ていない。
「本当!?あんたにも春が来たの!?」
「やめてよ、10歳にもなって」
「10歳だからよ!早速狙ったら?」
「何言ってるの?私、あの男の子は格好いいと思うけど好きなんて‥‥‥」
「気付いてる?リオ、今顔真っ赤よ?」
慌てて頬に手をやる幼馴染みを見つめながら、サリーはリオの顔を真剣に見つめて、
「リオ。私たちはもう10歳よ。このままじゃ学校を出たときに親に勝手に結婚相手決められて終わりよ!?」
「え?」
「だから、この学校で彼氏を作んなきゃ!私達がただの金を繋ぐ子供だなんて言わせないわ!」
「‥‥‥そうね。このままじゃそうなっちゃうわね。‥‥‥わかった。私も覚悟を決めるわ!」
「そうこなくっちゃ!」
こうしてこの二人は白亜の性別を知らぬまま、恋物語を始めてしまった。
ーーーーーーーーー
「この度はこの学園に入学していただきありがとうございます。今年度は特殊クラスが復活いたしました。体術に優れた方や魔力が多い方など様々な方のクラスです。皆様も頑張って成績を上げることができれば特殊クラスに編入となります。頑張ってください」
『知ってたか?』
『過去に何度かあったのは知っておりますが、今年度に復活するとは』
『ジュードがいるからか?』
『おそらくそうだと思われます』
流石に王子を変なクラスに入れていじめられたりしたら大変だからな、と完全に他人事だ。白亜も異常なのは確かなので例外では無いだろうが。
「以上で、入学式の挨拶とさせていただきます」
ジュードは殆ど寝ていた。
「話くらい聞けよ‥‥‥」
「いや、眠かったんですよ」
「5回ほど頭が下がっていました」
キキョウの鋭利なツッコミ等気にしないジュード。
「まぁいいじゃないですか!」
「そうかな‥‥‥結構大事なこと話してたけど?」
「まじですか‥‥‥」
「聞いてないお前が悪い」
クラス分けは番号が紙に書いてあってそこから見つける。入試結果発表みたいな感じと思ってくれれば良い。
「あ!僕一番端っこのクラスです」
「だよな」
「ですよね」
ジュードは当然のように特殊クラスだった。
「あ、俺もだ」
勿論白亜もだったが。
「特殊クラスって聞くとな‥‥‥」
「どうしました?」
「なんかやらかした人が入る所みたいじゃない?」
「そうですか?白亜様ってなにかされたんですか?」
「例えの話だよ‥‥‥」
キキョウと話しながら学校を歩く。ジュードは何故か学園長に呼び出された。大体理由は判るが。
「ここか」
結構普通だけど思ったよりも大きい扉を開けるとそこには既に5人の生徒がいた。獣人が2人(犬耳)、エルフが1人、人間が1人、ニンフ(妖精と人間のハーフ)が1人だ。
白亜が入るとニンフとエルフの顔が強張った。キキョウがウンディーネだと気付いたようだ。
「えーっと‥‥‥‥」
「ハクア様。此方です」
「あ、そっちか」
無駄に広い部屋のなかで白亜は完全に浮いている。
『早くジュード来ないかな‥‥‥スッゴい居づらい』
『キキョウの種族を本能で感じ取ったようです』
『みたいだな。ウンディーネってそんなに珍しいの?』
『ええまあ。神聖な精霊ですから』
『へー』
「あの‥‥‥」
ニンフの女の子が白亜に近付いてきた。
「どうされました?」
「ひぃ!」
白亜の目をみて悲鳴をあげた。
「あ、すみません‥‥‥」
「い、いえ!そんな!そ、その目が珍しかったもので!」
「目付きじゃなくてですか?」
「はい‥‥‥魔眼をお持ちなんですね。それも珍しい複数能力持ちの」
「ええ、まぁ」
「それで‥‥‥そちらの精霊様は」
ニンフにとっては精霊はかなり上の存在だ。親が片方妖精であるから当然ではある。妖精と精霊でどっちが格が高いといえば精霊である。妖精は精霊の手伝いをする役割があるため、精霊が神様だとしたら妖精は天使だ。あくまで例え話だが。
「私の契約精霊のキキョウです」
「宜しくお願い致します」
「え、あ、お、お願いします」
『キキョウの種族を聞きにきたのでは?』
『あ、そういう事?』
「キキョウ様の種族は‥‥‥?」
『言って大丈夫?』
『いつかわかってしまうので構いません。念のため口止めはしておいてください』
「ウンディーネです。なるべく内密にお願いします」
「う、ウンディーネ様‥‥‥‥やはり。判りました」
エルフもこちらに来た。
「あの。そちらはまさかウンディーネ様では?」
「ええ。そうーーー」
「貴様には聞いていない。ウンディーネ様に聞いているのだ」
なかなか酷い。
「ハクア様を無視するとは良い度胸です‥‥‥!」
「ちょ!怒ってないから!キキョウ!ストップ!」
「しかし‥‥‥」
「はい、この話し終わり!わかった?これ以上俺に言わせるなよ?」
「‥‥‥‥ハクア様がそう仰るなら」
「おい貴様。ウンディーネ様に何て態度だ。謝れ」
「今の話し聞いてませんでした!?」
「ふん!お前が無理矢理術かなにかで縛っているのであろう」
「いや、契約です」
「ウンディーネ様は清い湖にしかおらん。貴様が汚してウンディーネ様を弱らせたのだろう」
「いや、汚したって言うか‥‥‥‥俺って汚した?」
「いえ。寧ろ綺麗にしてくださいました」
「ふん!ウンディーネ様は心が乱れているやつには従わぬわ!」
「俺って乱れてる?」
「寧ろ整っているかと」
「なぜ貴様はウンディーネ様に聞く!」
「そう言われましても。自分の行動には全て自覚をもって行動出きる何て事はかなり難しいですし」
自分の行動に自覚がない白亜らしい返答だ。
「貴様!ウンーーーーー」
「師匠!ただいま到着いたしました!」
「おお。早かったな」
「どなたです?」
「さぁ?クラスメートらしい」
「私を無視するな‼」
ニンフはもう既に席に戻っていった。
「師匠に楯突くのか?」
「やめろジュード。馴れてるから問題ない」
「臆したか!」
「そんな感じですね」
「悉く虚仮にしやがって‥‥‥‥!」
『してた?』
『どうでしょうか?至って返しは悪くないと思いましたが』
「私と戦え!」
「授業の時にお願いします」
「な!」
相変わらず白亜は空気が読めないので何を言っても煽ってしまう。
「ま、魔眼に頼って遊んでるだけの貴様とは違うぞ!覚えていろ!」
そう言って自分の席に帰っていくエルフ。
「人騒がせな奴ですね」
「確かに。ハクア様の実力を知ったらさぞ驚くでしょうね」
ジュードとキキョウが話しているのを右から左に流して聞いている白亜。簡単に言えば暇なのだ。
白亜が暇していると扉から23歳位の眼鏡をかけたスタイルがなかなか良い女の人が出てくる。
「全員席にちゃんとついていますねー。特殊クラスの担任のライムと申します。これから宜しくお願い致します」
どうやら担任らしい。
「それでは自己紹介をそちらの列からお願いします」
白亜が一番だった。
「白亜です。今は6歳で、精霊魔法を勉強するつもりです。あ、種族は人間です。こちらは水精霊のキキョウです。宜しくお願いします」
「えーっと。俺の名前はバルドだ。歳は13、種族は人間。徒手空拳を習うつもりだ。よろしく」
バルドは筋肉が凄い。大人かと聞きたくなるほどガッチリしている。あの腕で殴られたらかなり吹っ飛びそうである。
「あ、僕の名前はジュード・フェル・リグラートです。ハーフエルフで10歳です。精霊魔法と特殊魔法を習うつもりです。あと、隣のハクアさんは僕の師匠です。よろしくお願いします」
必要無さげな事柄が入った自己紹介だ。
「私はニンフのリンです。8歳です。水魔法を習っていこうかと思っています。よろしくお願いします」
「あたいはシャウ。獣人族で14歳だ。それと、剣技をやっていこうかと思ってる。よろしくな」
「俺はザーク。獣人族で12歳だ。戦士を勉強していくつもりだ。よろしく」
戦士は体術と剣、剣技は剣オンリーだ。
「私は高貴なエルフの一族の次期長の候補、ヒノイ・ゼンテスだ。精霊魔法と戦士を勉強していくつもりだ」
ヒノイは自慢しすぎだと思う。
「はーい。全員終わったわねー。それじゃあ早速テストするから次のベルまでに訓練場に集まってねー」
「テストって?」
「本当に何にも聞いてないんだな‥‥‥一番最初に実力テストをするらしい」
「魔法ですか?体術ですか?剣術ですか?」
「出きるやつは全部だ」
「やれるやつが多いほど良いのですよ。ジュードさん」
白亜は博識者に助けてもらいながら訓練場へ到着。白亜は基本方向音痴なのだ。
「結構広いんだなー」
「ここには非殺傷魔法が常に発動していて安全なんですって」
「詳しいな」
「何度か来てますから」
王族は何時でも使用可能らしい。何でも使う人が殆どいないんだそうだ。外のグラウンドの方が広い上に人が集まるので腕試しをしたい学生もそっちに行ってしまうのだそうだ。暫く待っているとベルがなった。もう全員集まっているのであとは先生のライムだけである。
「遅くなってごめんねー」
パタパタと走って来るライム先生の胸に釘付けになるジュードにチョップを白亜が入れた。
「これで記録して後で確認しながら採点するからね。ズルはできないからそのつもりでね」




