白亜は学園に入学します!
エピローグ的なものです。短いので今日は2話分更新しますね。
次の日、白亜達は馬車に荷物を乗せて王都に向かう準備をしていた。この馬車は借物で、馬はキキョウが変身している。水なので体の形は自由らしい。精霊形態の時は完全に水が人間の形している様にしか見えないのに馬になると色がつくのが不思議である。馬車は各村、各町にレンタル品があり、王都にある同じ貸し出し屋に持っていけばそこで返却が可能だ。よく考えられている。
「それでは行ってきます」
「行ってらっしゃい」
御者は白亜である。母親は出来ないし、王都に行くのにジュードを使うのも不味いし、博識者は白亜と手を繋ぐ必要があるし、キキョウがやったら馬が居なくなるしで。
子供が御者に座っているのも妙なのだが、それ以外の選択肢が無かったのである。
「師匠。辛くなったら代わりますので」
「多分大丈夫だから。馬はキキョウだし」
「ヒヒーン」
馬化したキキョウが鳴き声で答える。別に普通に喋れるが不自然きわまりないので白亜が強制した。
『白亜様。そろそろ村から出ます』
『流石にそれぐらいは判るよ』
何かあったら逐一報告しろと言ってあるため本当にどうでも良い情報まで博識者は教えてくる。
『そこの道を真っ直ぐです』
『判った。人を感知できたら教えてくれ』
『了解しました』
何があるか判らないので白亜も魔眼を発動しておく。
「師匠。暇です」
「俺に言うなよ‥‥‥はい」
そう言って白亜は気力で知恵の輪を作る。
「母様にもひとつ渡してくれ」
「これは?」
「知恵の輪。それを力業なしで外すんだ」
「へー」
白亜の後ろでカチャカチャと音が聞こえる。もうやり始めているらしい。
「全然外れないんですが」
「ファイト」
流石に永久に外れない物は渡していない。そこまでいったら完全にいじめである。
「あ、外れたわよ」
「え!?凄いです!本当に外れるんですね!」
「母様早いですねー。次はこれでどうです?」
そんなことをしているうちに半分くらいまで来た。キキョウがかなり早いペースで走っているので予定より一時間くらい早くつきそうだ。
この道は大体普通なら6時間くらい馬車でかかる。白亜の家は田舎だが以外とそこまで遠くないのだ。
「ご飯にしますか?半分まで来ましたよ」
「あら、夢中になっちゃってたわね。そうね、食べましょうか」
「師匠ー。全然外れません。僕のだけくっ付けてるんじゃないですか?」
「そんなことないぞ?」
白亜はジュードから知恵の輪を受け取り、手をかけずに一瞬全体を見た後、カチャン。と外した。
「ほら」
「何秒!?」
一行はサンドイッチを取り出してキキョウに出してもらった水と石鹸で手を洗ってから食べだす。
「後、二時間半くらいでしょうか」
「結構早く着きそうね」
「キキョウが頑張ってくれてるので」
「御役に立てて光栄です」
食べ終わって腹もふくれたので進もうと白亜が片付け始めると、
「僕がやります。師匠は休んでいてください」
「え、あ、ありがとう」
速攻で暇になった白亜。
「それではしゅっぱーつ」
そろそろ腰が痛くなってきた白亜である。
「師匠!取れましたよ!」
「おー。おめでとう。はい次これ」
「何でこんな複雑なんですかー」
「そういう玩具だし」
白亜達は盗賊に襲われたりなんかすることなく無事に王都に到着。国王から話は通っていたらしく、町にすんなり入れた。
「早速父上に会いに行きましょう!」
「だな。それにしてもあの城って広いよなー」
キキョウの引いていた馬車を城の馬車置き場に止めて歩いて謁見の間へ。白亜は道に迷いかけた。
「父上!」
「ジュード。元気だったか?」
「勿論です!」
親子の再会というより上司と部下の会話である。
『懐かしい、ですか?』
『まぁね。皆もあんな感じだったし』
皆とは、言わずもがな日本の警察官達である。
『元気してるかな』
「ハクア殿。今回のことはすまなかったな」
「いえ。此方も良い練習相手になっていただきました」
「そうか。で、後ろの精霊は?まさか水精霊か?」
「はい。キキョウと言います。契約はしてありますので」
水精霊のなかでも最も上位にあるのがウンディーネである。ただ、今は揉め事を避けたいので普通の下級精霊に化けている。
「それはそれは。その年で水精霊の契約をすますとは、流石と言うか」
「運が良かっただけです」
実際そうである。
「それで、これからもジュードとともに暮らしてもらいたんだが、良いだろうか?」
「はい。此方こそ、宜しくお願いします」
「師匠!その‥‥‥‥えっと」
「?」
「これからも、一緒ですよね?」
「勿論だ」
ジュードもジュードで心配だったのだろう。白亜と一緒に居られるのが今一番嬉しいらしい。
「今日は泊まっていって下さいね」
「んー‥‥‥俺は大丈夫だけど母様がな‥‥‥‥」
「問題ありましたか?」
「いやー。前に調度品を壊さないかどうかってビクビクしてたからな」
「あ、じゃあ使ってない書斎ならどうです?」
「じゃあそこで」
書斎には殆どものはなかったのでその日は母親も安心して眠れたらしい。
「それじゃあね」
「はい。母様もお気をつけて」
「さよならー」
母親は次の日に帰っていった。馬に乗って。馬は行きはキキョウが代役だったが、帰りは元々前から買うつもりだったらしく馬を買って帰った。御者はできないのに馬には乗れるらしい。
「さて、いくか」
「ですね」
いよいよ二人は進んでいく。王都内でもかなり有数の名門校、『ランバート学園』へ。




