白亜の属性は魔晶属性!
『では改めまして、博識者と申します』
「白亜だ」
「えっと、師匠?」
「ああ、すまない」
取り合えず、落ち着くところに落ち着いたらしい。
「なんかな、新しい能力っぽいのが手に入ったらしい」
「どんなの?」
「2重人格?」
「それ大丈夫なの!?」
なんと答えればいいのか白亜にも分かっていないのである。
「大丈夫だろ、多分」
「マジか‥‥‥‥‥」
適当すぎる白亜に呆れるジュード。
「あ、そうだ!幻想即興曲、人形使い!」
なにか思い付いたらしい白亜が作り上げたのは、人間にかなり近い人形だった。白亜の隠れ家の管理を完全に任せてあるヒカリがモデルである。
「こっちに移れない?」
『なるほど。‥‥‥‥‥聞こえますか?』
「人形が喋った!?」
『私はこの方の特殊能力の博識者です』
「え?えっと‥‥‥‥ジュード・フェル・リグラートです」
「ジュード。この人が今さっきできた俺の2重人格っぽい人だ」
「話が全く読めない!」
『よろしくお願いいたします』
「あ、よ、よろしく」
もう白亜はジュードが何に驚いているのかさえ分かっていない。少しは読めるようになったが、未だに空気が読めない絶滅種天然記念物なのだ。ここまで空気が読めないのは白亜位しかいない。
因みに、今は白亜とヒカリ似の人形は手を繋いでいて、白亜の右腕からヒカリ似の人形の左腕には先程白亜の右腕に浮かんでいた黒い幾何学模様が繋がるように浮かんでいる。
どうやら、博識者がどこかに移動したりするときはあの模様が浮かぶらしい。知らないと結構ホラーである。
「いつまで手、繋いでるの?」
「いや、離したくても離せないんだよね。博識者が帰ってきたら離れるんだろうけど」
『その通りです』
「あ、帰ってくる?」
『はい。失礼します』
その言葉が発されたと思ったらヒカリ似の人形の左腕から段々と模様が消えていく。白亜の右腕に浮かんでいた模様が全部消えたとき、白亜の手が人形から離れ、人形が消えた。
『白亜様。これから貴方のことをお話しします』
「助かる」
「え?」
『頭の中で会話できますので声に出す必要は御座いません』
「師匠?」
「ああ、すまない。素振りを再開しようか」
「はい」
『それでは、何からお聞きになりたいですか?』
『そうだな。俺の属性は?』
『貴方の属性は魔晶属性と言います』
『聞いたこと無いな』
『勿論です。貴方しか居ないのですから』
『チカオラートから貰ったチートか?』
現在ではなぜこの属性なのか検討もつかないので、これが一番有力な説ではある。
『違います。チカオラート様が白亜様に受け渡したチートは創造者と左目の魔眼のみです』
『?右目のは?それと、博識者は?』
『それは貴方の運です』
白亜は基本的にリアルラックが低い。何故かというと攻撃力や知力に知らないうちにステ極振りしてしまっているからだ。
ステータス何て基本的にそんなものはないが。
『俺、あんまり運は良くないけど?』
『はい。ですが、貴方の場合本当に運なので‥‥‥。私も実はよくわかっていません』
『そっか。まぁそのうちわかるか』
かなり楽観的である。
「よっし!この辺で良いだろう」
「ありがとう、ございました‥‥‥‥はぁ、はぁ」
相変わらず、白亜はスパルタ式の訓練だ。
『俺に魔法って使えるんだよな?』
『はい。しかし全て独学となります』
使える人間が白亜しかいないので当然と言えば当然である。
『どんな魔法だ?』
『自然を操る魔法です』
判りづらい返答だ。
『今、使える?』
『可能です。右目を見てください』
右目を見るというのはおかしな表現だが、白亜の場合両目魔眼な上に普段は発動されないタイプの物であるため、そう言う表現しか出来ないのである。
『ん?なんか出てきた‥‥‥‥』
『それを朗読してみてください』
「木々よ。その葉を撒き散らし、自分以外の物を排除せよ。汝は我の力を以て今この瞬間のみ力を使うことが許される。その力を解き放て。木の葉の舞い!」
「え?師匠?」
ジュードの事を半分無視して行われた白亜の木の葉の舞い。詠唱が終わった瞬間、地面が一瞬光り、周りの木々が自分の葉をとんでもないスピードで射出し始めた。これだけなら問題はないだろう。が。
その葉の危険度はかなりな物だ。何故なら、ただ葉が通過しただけで周囲の岩が滑らかに切断され、地面が削られて突き刺さる。もうこれはカッターでは無いだろう。
「「‥‥‥‥‥」」
白亜は作り出された目の前の惨状に言葉を発することができなかった。木の葉の舞いは広範囲魔法で、木があればどこでも使える。が、それの威力は単体魔法を凌駕していた。
攻撃魔法は大きく分けて
・単体魔法
・広範囲魔法
・設置魔法
の3種類に分けられる。
単体魔法は単体にしか効果はないが、その分一転集中出来るので攻撃魔法としてもとても優秀だ。
広範囲魔法は広範囲で魔法をぶっぱなせるので一対多数の戦闘でとても使える。その代わり、消費魔力も多いし威力もそんなに強くない。
設置魔法はそのままだが、罠なんかに使える魔法だ。種類はそんなに多くなく手間がかかる上、その場に相手がいかないと発動しないので人気は殆ど無い。
本当だったら白亜は単体魔法を使うつもりだったが、聞いたこともない魔法属性なので念には念をと広範囲魔法を範囲を狭くして使ったのだが。
「大惨事‥‥‥‥」
「うっわ‥‥‥‥」
もう、白亜が指定した広範囲魔法の範囲はちょっとヤバイことになっていた。岩は木の葉で切断されまくって風に吹かれてどこかに消えた。地面はまるで鋭利な隕石が堕ちたみたいにザックザクのボッロボロである。
木の葉を散らす木のみは影響を受けないのできれいに残っている。周りの草や岩や地面がズッタズタになっているのに何故か木だけ無傷。
ジュードがビビるのも仕方がない。
「これ‥‥‥‥師匠が?」
「うん‥‥‥‥やっちゃった」
もうどうしたらいいのか判らない二人。
「これ‥‥‥直せないかな?」
『直せます』
もうなんでもありである。白亜がいれば砂漠をまるごと森林に出来そうだ。
「大地よ、汝は我の意思なり。我の力を以て荒れた土地を修復し、竜脈を甦らせ、枯れた沢を再び水で癒せ。大地の癒し!」
白亜を中心に光の輪が広がる。それが触れていくと傷付いた草が再び生え、岩が元に戻り、地面が修復される。それが森一帯に広がった頃、ようやく光の輪が消えた。
「凄い‥‥‥‥流石師匠。っていうかここ一帯だけで良かったんじゃ?」
「そうだが、ここの森を一時的とはいえ傷付けたからな。せめてもの罪滅ぼしだ」
「やっぱり僕、師匠には敬語使います!」
「いや、なんで!?」
「師匠に追いついたら止めます!それでいいですよね?」
「なんだそれ」
『良いと思いますよ?師弟関係はきっちりしないと』
『そう言うもんなのかな‥‥‥‥』
「まぁ、いいか」
もう気にしないと決めたらしい。どうせあちらとこちらでは感覚が違うのだから。
「師匠、これは不味いことが判明しました」
「なにが?」
「もし師匠の魔法が特殊属性っぽかったらそれで学校に入ればよかったのですが、強力過ぎて誤魔化しが効きません」
「つまり?」
「その魔法属性じゃ学校に入れない危険があります」
「ええ!」
入れないどころか、研究材料になりそうである。
「なので速急に対応しましょう」
「つまり?」
「精霊魔法を覚えましょう」
「まじか」
精霊魔法なら精霊と仲良くさえなれば使えるので誰でも大丈夫だ。仲良くなれるかが一番の問題なのだが。
「精霊魔法か‥‥‥‥」
「僕も少しなら使えます」
「え?精霊いるの?」
「はい。そこら辺の精霊と一時契約しているだけですが。本契約はかなりの精霊魔法の使い手でないと難しいと思います」
精霊魔法では本契約か一時契約(仮契約とも言う)を精霊として使う魔法だ。本契約はその精霊と相当仲がよく、精霊がその人間に一生ついていく位の気持ちになってくれないと出来ない。一時契約(仮契約)はそんなに仲がよくなくても精霊が気に入れば使える。が勿論本契約の精霊より圧倒的に魔法の質は下がる上、そこら辺の精霊が突然契約破棄したり、魔力を沢山持っていくのに全然仕事してくれなかったり、かなりムラが出来る。
「普通なら、精霊と仲が良いエルフ位しか使わないんですよね」
「燃費も性格も運だからなー。ジュードはエルフだからか?」
「はい。基本的に下級精霊なら誰でも従ってくれます。中級以上だと、余程優しい精霊なら手伝ってくれます」
「下級精霊ならいっぱいいるのか?」
「ええ。直ぐ其処にもいますよ」
白亜はジュードが指差す場所をジーっと見つめる。
「わからん」
「人間には基本的に姿を見せないんですよ。怖い人や自然に悪影響をもたらすって考えられていますから」
まさしく白亜のイメージだ。自然を使って攻撃など、自然には悪影響だろう。先程の大地の癒しは判らないが。
「まぁ、そうだよな。俺なんて木で相手を攻撃するんだから」
尤もな意見だ。
魔晶の意味は大分後に出てきます!




