エルディテ登場です!
「うっめぇ!」
風呂から出たあと、ジュードはチョコチップクッキーを食べていた。白亜の手から。
「師匠!あーん」
「どんだけ食べるつもりなんだよ」
そう言いながらも口の中に入れてやる白亜。
「こんなに美味しいモノがあったなんて!僕、人生後悔してたかも」
「そんなにか?どこにでも売ってたがな、俺の世界じゃ」
「そっち世界はグルメなんだ‥‥‥」
なぜここにチョコチップクッキーがあるかというと、白亜が作ったからである。どうやら口の中に入ってしまえば消えないらしい。消える消えないの基準が不明だ。
「さてと。もう帰るぞ」
「もっとほしい!」
「明日な」
「ヒャッホーイ!」
王族らしくない喜び方だ。
「ただいま」
「ただいま戻りました!」
「おかえり。その‥‥‥しゅ、修行でもしていたの?」
「そんなところです」
「そんなところです!」
「あ、師匠。荷ほどき手伝ってくれ」
「自分でやってくれ」
「もうそんなに仲良くなったの?」
「え、えーと。はい」
「ジュード。これなんだ?」
「?ワンドだぞ?」
「へー。バットみたいだな」
「バット?」
「こっちの世界にあったスポーツ用具だ」
白亜は野球をジュードに説明する。
「面白そうだな」
「まぁ、結構楽しいよ。ミスするとかなり痛いけど」
「大怪我か‥‥‥‥」
「そっちじゃない」
荷ほどきを結局手伝っている白亜。なんだかんだ言って優しい性格なのだ。
「いくつか見たこともないものがあるなー」
「前世にはこれなかったのか?」
ジュードの手にはマジッククリスタルと呼ばれる水晶があった。大体拳位の大きさだ。子供の。
「まず魔法が無いからな」
「どうやって生活してるのか知りたいな」
白亜は昔住んでいた一軒家の話をする。大学の寮に入るときに売ったが。
「あの風呂みたいな設備が大量にあるのか」
「もっと凄いところとかもあるけど」
「スゲー」
「で、これは?」
「マジッククリスタルだ。使い方はここに魔力を流すと魔力量や適正がわかる」
「そんなの持ち歩く必要なくない?」
「ここに流すのは魔力の練習になるんだ。王都の子供はこうやって魔力の使い方を学ぶ」
へー。と言いながらクリスタルを眺める白亜。
「そうだ!師匠も試してみたら?魔力量とか調べられるし」
「それ、俺の魔力量知りたいだけだろ‥‥‥」
とは言っていても白亜も自分の魔力量を知りたいのでやってみることにする。
「手から魔力を流せばいいのか?」
「そう」
白亜が魔力を流していくとぼんやりと水晶が光り始める。
「もっと一気に流しても問題ないぞ?」
「そうなのか?じゃあ遠慮なく」
一気に増やす。その瞬間カッととんでもない光が放たれる。
「わっ!」
「眩しくなったな」
「何でそんなに冷静なの!?」
「いや、魔眼持ちだし」
白亜は無意識に明視を発動している。もう完璧に魔眼を使いこなしている。
「なんか‥‥‥‥青って言うか、緑って言うか、白って言うか、そんな感じの色してる」
「想像しにくいんだけど‥‥‥‥」
ジュードの目は強い光に当てられて現在見えていない。なので、白亜が色を伝えようと必死である。
「属性って一個しか持てないの?」
「まぁ、普通は。精霊魔法みたいに例外はあるけど」
精霊魔法は属性は関係がないが、精霊と仲がいい人しか使えない魔法である。精霊に魔力を渡して精霊に魔法を打って貰うものである。
エルフはそのなかでも最も精霊に好かれる種である。なんでも、魔力が美味しいらしい。
「何て言うのかわかんない。これ何色?」
「見えないんだけど‥‥‥あ、もっと流す魔力少なくしてくれればいいじゃん!」
「あ、そっか」
白亜は魔力を吸い上げていく。これで流れる分は少なくなり、魔眼がないジュードでも見えるようになる。
「これは‥‥‥‥」
「属性はなんだ?」
「‥‥‥‥わからない」
「え?」
「こんな色、見たことがない!」
取り乱すジュードを死んだ目で見つめる白亜。
「そんなに驚くこと?」
「新種だよ、新種!」
「解らん。そんなに凄いのかどうかが解らん」
「今まではこんなことはなかったんだよ!?」
落ち着け。とジュードを宥める白亜だが、ジュードの興奮は収まることを知らない。
「歴史的な大発見ですよ!?」
「さぁ?」
「さぁ‥‥‥‥って」
冷めまくっている白亜を見て逆に落ち着きを取り戻したようだ。
その後、白亜は魔法のレクチャーを受けた。
属性は基本的に、
・火 赤色
・水 紺色
・土 茶色
・電気 橙色
・風 緑色
・特殊(無) 紫色
・闇 黒色
・光 黄色
だ。これ以外は無い。白亜は論外とする。
特殊(無)属性は絶対数が少ないが、その分、使える魔法は強力だ。なぜか全体的に色が濃い。
属性に関係なく使えるのは精霊魔法と召喚魔法だ。ただし、精霊魔法は精霊と仲がいい人限定しか使えない。召喚魔法はその属性の動物等しか呼び出せないので結局属性に縛られる。
「ジュードは?」
「僕はこれ」
ジュードが手をかざすと、ぼんやりとだが紫色に光る。
「特殊属性ってこと?」
「そういうこと」
「俺は?」
「知らない」
気力が関係しているのかとも考えたが、白亜は考えるのを止めた。どうせ考えても答えは出てこないだろうと分かっていたからだ。
「ご飯よー」
「あ、はーい!今行きます!」
取り合えず、この疑問は放っておくことにしたらしい。
「ねぇ俺さ、思うんだけど」
「何を?」
「もしかしたら魔法属性わかるかも知れない」
「はぁ!?」
翌日、訓練中に突然話を切り出す白亜にジュードはなぜ今?と思わずにはいられなかった。
「いやー。魔眼がさ、なーんか教えてくるんだよ」
「魔眼が?」
「何て言ったら良いのかな‥‥‥?まるで人工知能が入ってる見たいに」
「ジンコウチノウ?」
「あ、なんでもない」
白亜の右目の魔眼には現在、『博識者の特殊能力をつけますか? はい・いいえ』と見えている。先程から白亜は魔法の属性はなにか、と情報視に聞いていたらこんなメッセージが出てきた。まるでゲームである。
「博識者って、eruditeをローマ字読みしたのか。確か、博学って意味だっけ?あれ?やべぇ勉強したのに忘れた」
数年も経てば忘れるものも忘れる。
「さっきからなにぶつぶつ言ってるんだ?」
「いや、なんでもない」
(まぁいいか。魔眼が説明してくれてるのに無下にするのもな)
白亜は はい を選択する。
(あ!?もしかして特殊能力一個しか持てないとかないよね!?)
もしそうであっても後の祭りだ。もう既に選択してしまっているからである。
『その辺りは問題ありません』
「!???!?!」
「師匠?」
「だ、誰だ!?」
「え、誰かいるのか!?」
相手の姿も確認できていないのに臨戦態勢に入る二人。
『警戒をしても意味がありませんよ。貴方の体の一部なのですから』
「は!?」
「え!?」
白亜の出る声に一々反応するジュード。
『証拠をお見せ致しましょう』
「え?」
白亜の左腕が肩の方から何かの模様に覆われていく。
「えええ!なにこれめっちゃ怖い!」
「え!?師匠がなんかやってるんじゃないんですか?」
「違う!なんか嫌な予感がする!一旦俺から離れろ!」
白亜の焦りを感じたのだろう。ジュードが即座にその場を離れる。
『一時的に左腕のみ動かさせて頂きます』
「は!?うっわ!」
白亜が全く意識していないのに創造者が勝手に発動し、刀が生成される。
「なに!?何で!?」
『これでお分かりですか?私は貴方の一部なのです』
これでわかったら逆に凄い。しかし、白亜は作り出された刀を見て、
「ああ、わかった。お前は俺の一部みたいだな」
『分かっていただけて何よりです』
何故ならその刀は、白亜が剣道を習っていたときに師範が持っていた真剣にそっくりだったからだ。この世界で白亜以外にあの刀を知っている者はいない。




