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「ハクアは強くて格好いいから」

100部達成です!これからも精進していく所存です!

 白亜の笑みを見て顔を青ざめるビート。


「まさか、これをお前がやったのか!」


 白亜はふるふると横に首を振る。


「ならばなぜ笑っている」

「………」


 白亜は反応もせずにただただ不敵な笑みを浮かべている。こんな状況でよく笑えるものである。


「ちっ。命令だ。寝ろ」


 白亜の体に一瞬スパークが走り白亜が気絶した。寝るというより失神に近い。


「悪魔殿。ハクアを運んでくれ」

「了解した」


 未だに鎖でぐるぐる巻き状態の白亜を肩に担ぐようにして運ぶ。


「一体何が起こっている……」


 ビートは忌々しそうに音のする方とは逆の方向に走った。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







 少し時間は遡り、白亜が1年ぶりに起きた頃。


「これだけ探しても全然手掛かりがない……」


 レイゴットとラグァ、それにジュードとダイが机に突っ伏する。


「魔力も感じられませんよね……」

「どうしたものか」


 一年もたって大分全員打ち解けた。未だに玄武スターリは警戒しているが話す分には問題ない程ではある。


「だらしないですよ。ハクア様に叱られます」


 部屋にお盆を持ったキキョウが小言を言いながら入ってきた。


「そうは言ってもここまで手掛かりがないとは某少々不安が」

「へこたれてるんじゃないですよ」


 バゴン、とダイの頭にお盆を落とすキキョウ。


「キキョウ……容赦ないのう。妾は少しはダイに同情してやっていいと思うが」

「良いんです、これで」


 ルナも部屋に入ってきた。その後ろにはリンが居る。


「ジュード君、レイゴットさん。また同じです」

「同じかぁ……」


 同じというのは書類の中身の問題で引き続き調査すると言う単語が入っているかどうかと言うことである。


「後探していない所は―――!!」

「これ!この魔力!」


 レイゴットとダイが突然立ち上がった。机の上の紙がバサバサと落ちる。


「何やってるんですか。書類落ちてますよ」

「それどころではないのだ!」

「この魔力!ハクア君だよ!方向がわかる!」

「「「ええええぇぇえ!」」」


 突然二人が外に出ていくので書類全部放って全員後ろについていく。バルコニーに向かうようだ。そこには既に白亜の契約獣達が身を乗り出してある一定の方向を見ている。


玄武スターリ!感じたか?」

「ん。主の魔力。向こうの方。全員で向かう方がいい」


 スッと海の方を指差す玄武スターリ。既に白亜捜索組の何匹かは斥候に向かったらしい。


「見付かった‼」

「でもなんで今さら……?」

「若の事です。なるべく迷惑を掛けたくなかったんでしょう」

「逆に言えば師匠でも対処できない事が起こったのでしょうか」

「その可能性は極めて高いです。此方も場所さえわかればどうとでもなります。準備を優先しましょう」

「それでは私は日本の方々に伝えてきます!」


 白亜が部屋でビートに向けて放った魔力は実はこの為だった。気付いてもらってサラを逃がすために。








「判ったぞ!若旦那の居場所はここだ!」


 帰ってきた斥候の一人である白虎エスペーロが地図の一部分を指差す。


「ここは、甞ての炭坑付近ですね。確かにここは地図にも書かれていませんし、盲点でした」

「そうとなれば今すぐ行きましょう!」

「おい、少し落ち着け。準備を整えてからだ!」


 もうパニック状態である。それでも手は動いているのだから流石と言わざるを得ない。


「では、明日。明日全員で行きましょう。準備を今日中に済ましておいてください!」

「「「はい!」」」








 次の日、白亜配下一同が王城の庭に集まっていた。皆そわそわしていて落ち着きがない。


「まだ?まだか?」

「もう少し落ち着け!焦れば焦るほど危険だぞ!作戦なら一年前から練っている。それ通りに動けば何ら問題はない」


 纏めるほうも大変である。


「皆さん!準備はできましたか?」

「おお!」

「今まで探してくださって有り難うございます!今からが本番です。師匠奪還の為に力を尽くしましょう!」

「「「おおー!」」」


 なんと言うか、試合前に円陣を組むアスリートのようである。


「俺たちも行かせてくれないか?」

「ケントさん、何故?」

「こんなときに行かなくて何が生徒だって話だ。俺たちも行きたい。白亜さんを助けたいんだ」

「……いいでしょう。自己責任でお願いしますよ」

「勿論だ!」


 日本の戦闘組も行くことになった。逞しくなったものである。


「ははは!ハクア君、愛されてるねぇ」

「ハクアは強くて格好いいから」

「僕は?」

「レイゴットは性格が悪い」

「それは酷いなぁ。スピンちゃん」


 どうでもいいコントが始まりかけているが誰も反応しないのでもうこの際良いのだろう。


「それでは、飛べる方は誰かのせて飛んでください!作戦を、開始します!」

「「「おお!」」」


 このあと王城から大量の伝説級の魔物が大発生して皆同じ方に飛んでいったという王都七不思議が出来たのだが、これを知るのはもっと後の話である。








 ジュードがダイの横でハンドサインを送ると近くの配下組が一斉に大魔法を撃ち込んだ。


「なんだ!」

「侵入者か!」


 建物が大きく破壊されて抉れている。構わず魔法を撃ち込み続ける配下組。それに隠れてレイス(ウラノス)ヴァンパイア(グラキエス)等の気配を消すのに特化した配下組がこっそり中に入っていく。


 少し経ってからレイゴット、ジュード、リン、スピン、ラグァ、キキョウ、ルナ、ダイの主要メンバーが中に入る。


 今まででも連携の練習はしていたようで見事に近すぎず遠すぎずの距離を保っている。


「ハクア君はこっちかな」


 レイゴットは何となく白亜の居場所を感じ取れるのでそれに頼りながら進んでいく。


 すると、どうやら裏口から外に出たようで勝手口の外に気配が続いているらしい。ジュードがここ二年近くで開発した魔法具を作動させる。


 これは白亜の念話の応用で、対象の相手にのみ声を伝えられるものだ。


「皆さん。師匠はどうやら外にいるようです。裏口の方に回ってください。探索班はそのままサラさんを探してください」


 そう早口で言って扉の外に出る。


 そこには広い平地が広がっていた。少し遠くに何かを担いだ翼の生えた男と、異様としか言い様のないキメラの男が走っていた。


「待ちなさない!」


 相当苛立っているキキョウが地下の水を呼び出し、水のドーム型のフィールドを作り出す。


「不味いな。分が悪い」


 キメラの男がそう呟いたのをレイゴットは聞いた。もっともレイゴット以上に五感が優れているのはそれこそ白亜くらいなのでこれが聞こえたのはレイゴットのみである。


「あれ、ハクア君だね。気絶してるけど」

「どうにかして押さえられれば……」


 リンが鞄に入っているサクラちゃんを祈るように触る。


「どうだ。出来そうか」

「出来ないことはないな。まだ完全ではないが」

「それでいい。やってくれ、悪魔殿」

「了解した」


 レイゴットの耳にそんな会話が聞こえてくる。


「気を付けて。何かしてくるみたいだ」

「……」


 皆各々自分の武器を構える。すると、悪魔が白亜を突然地面に下ろした。


「何を……?」


 ジュードが動揺しながらも正面に剣を構える。段々と白亜の配下や日本組が集まってくる。押さえつけれるのも時間の問題だ。


「搾取」


 悪魔が白亜の胸の辺りに手を突っ込む。引っ張りあげたときには、葵透明なガラス玉の様なものが握られていた。ガラスの外側は美しく光を反射しているが、内側の部分にどす黒い煙のようなものが閉じ込められている。


 どす黒い煙の外側をガラスで固めた、と言うのが正しい表現だろう。


「師匠!」


 白亜は先程までほんの少し動いていたのだが、悪魔が手を入れた時からピクリとも動かなくなった。ジュードの声にも反応がない。


「さぁ、始めよう。どうなるか解らないがね」


 悪魔がガラスを地面に叩きつける。パキィイン!と甲高い音がして砕け散り、内側の煙が周囲に交わることなく段々と形をとっていく。いや、その表現は間違っているだろう。


「なんだ、あれ……」


 冷や汗をかきながらラグァが小さく口にする。そこには、輪郭がハッキリしない人の形をとった煙がぼんやりと浮かんでいた。

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