ボールを蹴る遊び
「パパー!!私サッカーやりたい」
娘である岡本佳奈は突然そう告げてきた。
「そう!玉をけるやつ」
「分かってるよ、どうしてサッカーをやりたくなったの?」
「テレビでやってたの!!」
テレビを見ると試合を終えたばかりなのであろう、試合のハイライトが流れている。
「それに芳川のおじちゃんがテレビに映ってたんだよ!」
娘が言う「芳川のおじちゃん」とは俺の大学の後輩で俺の住んでいたアパートの隣に住んでいた芳川龍規のことだ。彼は大学を卒業してすぐにプロサッカーチームに入った。今もチームの守備の要として試合に出続けている。また、いまでも家族ぐるみの付き合いをさせていただいているのだ。
「じゃあ外で一緒にボールを蹴って遊ぶか」
「うん!」
「じゃあ車の鍵を取ってくるから佳奈はボールを持って玄関で待ってて」
「はーい」
俺は鍵を取りに行くついでに妻の悠に外へ行くことを告げた。ちなみに「悠」と書いて「はるか」と読む。悠はいま3歳の息子、奨太を寝かしつけてるところだ。
「佳奈と一緒に外で遊んでくるよ」
「そう、どこに行くの?」
「美空公園まで行ってくる。サッカーがやりたいんだって」
「それじゃあ5時半までに帰ってきてね。夕飯の支度をして待ってるから。」
俺は鍵を取り玄関に向かった。
美空公園には日曜日ということもあり、子供たちがたくさんいる。家族連れやカップルも多い。
「それじゃあ行くよ~」
佳奈は助走をとりこちらに向けて思いっきりボールを蹴る。しかしボールはまっすぐ行くことなく見当はずれな方に飛んでしまう。そのボールを一生懸命追いかけて足で押さえて佳奈に蹴って返す。その作業の繰り返しだが佳奈は喜んでいる。だが俺はもう若くなく今年で34歳になるおっさんだ。おっさんは普段走ることが無かったために20分もしないうちにくたくたになってしまった。
「佳奈さ~ん。そろそろ休憩しないか?」
そう聞くと佳奈はまだまだやり足りないらしく小さな頬を膨らませながら「まだ早いよ~」と言っている。若い子供のパワーは恐ろしいなとしみじみ感じてしまう。またそれと同時に自分が運動不足だということが身にしみて感じてしまった。
(昔はもっと走れたんでけどなぁ)
俺は高校まで陸上競技をしていた。専門は短距離で3年の時には高校総体にも出場したことがあるのだ。まあ、結果は予選敗退だったが。
「パパ~!!休憩終了だよー!!」
「はいは~い、今行くよ~」
さて、もうひと仕事しますか・・・はぁ。
この日を境に俺は運動することを決めたのであった。
この時の加奈ちゃんは小学1年生です