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幼馴染みはオネエになりました   作者: 桜井 沙羅
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九話目

「え、は、はる…。」


はるきと言いそうになってかろうじて最後の一文字を飲み込んだ。


「利香?!

ちょっとあなた、今何時だと思ってるのよ!

家に帰っても人の気配が全然ないから何かあったと思ったわよ!」


春樹は私のところまで走ってきて、かなり怖い顔で言った。


「え、今何時?」


逆に聞き返したら物凄い顔で睨まれた。


あまりに怖いので黙って時計を自分で見ることにした。


「えっと、23時ですね…。」


春樹が睨むもんだからつい敬語になってしまった。


「あの…。利香、この人は?」


春樹の迫力に押されたのか、しばらく黙っていた大須賀さんがおそるおそる声をかけてきた。


その瞬間、はじめて大須賀さんが目に入ったらしい春樹が、今度は大須賀さんにつかみかかった。


「ちょっとあなた、今何時だと思っているの?

この子はこんな性格だけど、見た目は一応普通の女の子なのよ?!

こんな時間まで引き止めておくなんてどうゆうつもりなの?」


かなりの剣幕…。コワイ。

途中なんか失礼なセリフが聞こえたような気もするけど、突っ込む勇気はありません。


「いや、はる…か。

私が時間忘れてて没頭してたんだよ。

先輩は今さっき来たとこだから関係ないからさ。」


私は春樹の腕をつかんで言ったんだけど、あっさり振り払われた。

ちょっと悲しい。


「先輩?

先輩なら余計に帰るように注意してあげるべきでは?」


火に油だったようで、春樹はますます怒ってしまった…。


「ちょっと…。先輩は関係ないんだからは怒らないでよ。」


「関係ないですって?

あなた、家に全然帰ってないんじゃないの?

家に人の気配がなかったわよ。」


先輩から矛先を変えるのは成功したものの、またまた私に怒りが向いたようだ。


「えっと…なかなか終わらなくて、研究室に泊まりこんでたりしたんだあ。」


頭をポリポリ書きながら言うと、ぶん殴られるかと思うくらいの勢いで肩をつかまれた。


「泊まり込み…ですって?ここに?」


やばい、本気で完全に怒ってる…。


「う、うん」


「あなた、ほんとにバカじゃないの?

いくつになったと思ってるのよ。

まだ、自分の事を男の子のつもりでいるの?

例え、男みたいな中身であろうとあなたは若い女の子なのよ?

わかっているの?」


「え、私の事、女の子だと思ってたんだ…。」


思わず呟いてしまった。


「あんた、ほんとにぶっ飛ばすわよ?!」


そういって、ほんとにはたかれた。

痛い。


「今のは利香が悪いと思う…。」


大須賀さんにまで言われてしまった。


「ご、ごめんなさい…。」


私がしゅんとして言うと、やっと春樹は落ち着いたようだった。


「ちなみに、さっきから家がどうのとか言ってるけど、この子と一緒に住んでるの?」


大須賀さんがさらっと言ってきた。


し、しまった。


隣を見ると、春樹もしまったという顔をしてる。


怒ってて隠すの忘れていたのかなー。

冷静な春樹にしては珍しい。


「ええ、まあ…。

さっきは怒っていて失礼しました。」


諦めたのか、あっさり認めて春樹は言った。


「いやいや、それだけ心配していたんだよね、友達おもいなんだね。」


大須賀さんは優しく言ってくれた。


「すみません…。」


私も頭を下げた。


「友達といいますか…。

保護者みたいなものですね。

子供頃からの付き合いですので。」


春樹は微笑んで言った。


ほ、保護者なのかよ。


なんだか喜んでいいのかどうなのか。


「とりあえず、今日のところは帰らせていただいてよろしいかしら。

もう遅いですし。

ご挨拶は今度ゆっくりと。」


春樹は大須賀さんに言うと私の腕を取った。


「ほら、利香、帰るわよ。」


「うん。」




そうして、私と春樹ははじめて一緒に帰ることになった。


「それにしてもびっくりしたよ。

突然、春樹が飛び込んでくるんだもん。

しかも、フル装備の女装で。」


帰り道、そんな話をしながら春樹と歩いていた。


「びっくりしたのはこっちよ。

帰国して部屋に戻ってみれば夜遅いのに真っ暗だし、最近いた気配もないしなんかあったのかと思ったわよ。」


春樹はまたちょっと怖い顔をして言った。


「う、ごめん。

それにしても、春樹があんなに心配してくれるなんて意外だった。」


「あなたねえ…。

一体何年付き合ってると思ってるのよ。

いくらなんでも、利香が事件に巻き込まれても放置するほど冷たくはないわよ?」


春樹は呆れたように言った。



申し訳ないけど、私は春樹の気持ちがすごくすごく嬉しかった。


幼馴染みだけど、ただそれだけだと思ってた。


でも、ちゃんとこうして、怒るくらいまで真剣に心配してれるくらいには大事におもってくれてるんだなって。


「ありがと。」


私が言うと、春樹はしょうがないわね、という顔で微笑んだ。


その顔はどうみても、綺麗なお姉さんにしか見えなかったけど、私はまたまたときめいてしまった。

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