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幼馴染みはオネエになりました   作者: 桜井 沙羅
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四話目

ルームシェアをして同居することになった春樹と私は、いくつかの約束事をした。


それぞれの部屋には許可なく入らないこと。


ダイニングキッチンは一つしかなく共用スペースなのできれいに使うこと。


春樹にガサツと言われている私はここをしつこく言われた。


彼の中では私はいつまでも小学生時代のわんぱくで男勝りのガサツなイメージなんだろう…。


まあ、今もあんまり変わって無いかもしれないけどさっ。



それから、最初に話したように男女問わず友人は連れ込み禁止。


あとは、住みながら考えておこうということになった。


最初は、かわいい女の子と一緒に暮らす計画がぱあになってガッカリしていた春樹だけど、家の中でもバレないように気を使わなくてよくなったので、意外と悪くないわね、と言っていた。


確かに一緒に暮らしていて、性別をずっとごまかすのは無理がありそうだもんね…。


ってか、春樹は普段、かなり猫をかぶっているのでそれをしないで済むのが楽なんじゃないかと私はひそかに思っている。



この人、かなり毒舌で性悪なんですけど、かわいい女の子や、ヒエラルキーが高そうな男にはやたらにいい人だったりする。



私には昔からかなりひどかったけどね!




そんなこんなで、同居生活がはじまって1ヶ月が過ぎたけど、お互い忙しすぎてほとんど顔を合わせてもいない。


でも、まあ私としてはその方が助かる。


だってさ、恋人でもない長い間片思いしていた相手…。

しかも、相手はオネエでかなりかわいいときたもんだ。


私、全く気を抜けないじゃん!

すっぴんじゃ、とっても家の中なんて歩けないよ。


とてもじゃないけど、家の中でも毎日フルメイクなんてやってらんない。


せっかく一緒に住んでいるんだから、手料理でも作ってあげて見直してもらおうかな?なんて思ったけど、もちろん几帳面な春樹の事。


料理だってさっさと作って、さっさと一人で食べてるよ!


ちなみに、これも後から決めた約束事なんだけど、ご飯もそれぞれ自分の分だけ作ることってなってます。


分担とかにしちゃうと、急に食べれなあい!とかなっちゃうと良くないからねって事で。




「あら、利香、帰ってたの?

珍しいわね。」


私がダイニングキッチンでぼーっと紅茶を飲んでいるといつの間にか帰って来ていた春樹が声をかけてきた。


ストイックな春樹だったらこんな風にぼーっとしてることなんてまずないんだろうけどね。


「うん、やっと一区切りついたからさ。

寝ようと思ったけど、ちょっと一息ついてからにしようかなって。」


私はそういうと、春樹には温かいミルクティーを作って渡した。


中学生の頃と変わってなければ、春樹が大好きな飲み物だから。


「あら、ありがとう…。」


春樹はそう言って受け取ったものの、しばらく飲まずにミルクティーを見つめていた。


「どうしたの? 飲まないの?」


いつの間にか、ミルクティーは飲まなくなっちゃったのかな?と思いながら聞いてみるととんでもない答えが返ってきた。


「利香って、紅茶なんて入れられたのね。

でも、見た目は普通だけど、味は大丈夫かなって…。」



ひ、ひどい。

普通思ってもそんなにはっきりいいますか?!


「 実はこう見えて料理系は結構得意なんだよ。」


私がそう言うと、春樹は胡散臭そうな顔をして、ミルクティーを飲んだ。


「あら、美味しい。」


かなり意外そうな顔で春樹は言った。


「意外ね。昔からものすごく不器用でにぶかったのに、紅茶なんていれられるのね。」


春樹はにっこりと笑って言う。


誉めてるつもりなんでしょうね、きっとこの人。


「不器用でにぶいとかいうなー。」


と、一応言ってみたものの当然のようにスルー。


「で、料理も作れるわけ?」


「うん、食べるの好きだしね。結構自分でも得意だと思うよ?」


「ぷっ。 食べるの好きとかいかにも利香らしいわね。」


かなり意地悪そうな笑い方をして春樹は言った。


いちいち一言多いですよ!


この人の私へのイメージが手に取るようにわかる気がするよ。


「 利香の手料理食べるのが怖いから、食事は各自にしてたけど、それなら分担にしてもいいかもね。」


かわいらしい笑顔でそんなことを言う。


え、お互い忙しいから食事は各自

って言ってませんでしたっけ…。


そうか、あれは建前だったのか!


くそう、この女…じゃなかった男。


私、なんでこんな性悪な上にオネエな男が好きなんだろうか…。


「 春樹って…。モテないだろうな…。」


ぼそっとつぶやく。

私以外にはね!


「失礼ね、利香に比べたら人並みにはモテるわよ。」


私のつぶやきがしっかり聞こえていたらしい。


「え? その格好で?

男にモテるってこと?」


明らかに女の子の格好してる春樹に寄ってくる子なんてなかなか想像できないし。


「さっきから失礼ね、男にモテたって意味ないでしょ。

これでも、学校以外では男の格好してるのよ。」


「いや、ここ学校以外だけどばっちり女装してるじゃんかさ。」


家の中というめちゃめちゃプライベートな場所ですら女装してるんだもん、常にその格好だと思う方が普通かと思うんですが…。


「あら、だって家で男の格好してたら、誰かに見られたら利香ったら男と暮らしているように思われるわよ?」


「え? それって私のため?」


春樹ったらそんなこと考えててくれたんだ。

なんだかんだいっても付き合いだけは長い幼馴染みだもんね。

なんか、ちょっと嬉しくなっちゃう。


「 そーよ。そんな風に思われたら、ただでさえ男に縁がなくてモテない利香が困るでしょ?」


…。確かに私のためではあった…。

それは間違いない。

しかし、そんな風に思われてたなんて、かなり切ない…。


「 モテないモテないとそんな何回も言わなくても…。」


「あら、もしかして知らないうちにモテるようになってたの?

中学校までは、散々だったのに。」


ぐさっ。


もう泣いていいですか?


「 だって、高校女子校だし…。大学だって女子大だったんだもん…。

合コンとかも行ったことないし、出会いようがないじゃん。」


そもそもずっと春樹が好きだったんだから、男の人と出会いたいとか考えたこともなくて、探した事もなかったんだよね。


「やっぱりモテなかったわけね。」


「うわーん。」


ついに、泣いてみたりしたけど、全く動揺も気にもしない春樹。


こういうとき、漫画だったら、幼馴染みが泣いたりしたら、焦ったりオロオロしたり心配になったり、優しくしてくれたりだとかドラマがあるはずなんだけど、私たちには全くそんな気配はないようです。


「 ま、こんな男みたいな性格でも利香は一応お嬢だったものねえ。

合コンなんていっても騙されるのがオチよ。

行かなくて正解だったんじゃない?

中身は相変わらずだけど、見た目だけは普通にかわいくなったものね。」


そう言って春樹は微笑む。


かわいいなんて、春樹には今まで一度でも言われたことなんてなくて…。


もう、たったその一言だけでこの人にもっともっとはまっちゃうんだろうなあ。


もう、天にも登っちゃうくらい嬉しいよ!


「ありがと。」


私は少し照れながら言った。


「こんな事くらいで真っ赤になっちゃって…。普段よっぽど言われ慣れてないのね…。

かわいそうに…。」


そんな私に、心底気の毒そうな顔をして、春樹は言った。


こ、こいつほんとやな奴だな!

たった今もっともっと好きになっちゃった私を誰かひっぱたいて正気に戻してください!

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