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幼馴染みはオネエになりました   作者: 桜井 沙羅
18/24

十八話目


「利香…。」


春樹は少し切なそうな顔で私を見ている…。


私は、動揺してしまって言葉が出てこなくて春樹を見つめた。


二人でしばらく見つめあった後、春樹は私をぎゅっと抱きしめてくれた。


ええ!!ここ、外ですけど…。

っていうかなにこの展開。


「かわいそうに…。そんなに思い詰めていたのね。」


ものすごく、かわいそうな子を見る目で私を見ている。


あ、あれ…?


「いくらモテないからって、やけになって諦めなくても大丈夫よ?

ね、利香。」


「……。」


こ、言葉が出てこない。

こんな玉砕の仕方があるんですね!


マジで凹むわー。

モテなすぎて、オネエで手を打とうとしたかわいそうな子だと思われてるわー。


このまま土にでも埋まってしまいたいわ…。


「利香、そんなに落ち込まなくても…。」


春樹が一生懸命なぐさめてくれる。

最初にルームシェアはじめた頃は落ち込んでてもスルーだったことを思えば優しくなったよね…。


そう思ってなんとか自分を慰めてみる。


「わかったわ。」


突然春樹は言った。


え?何がですか?


私はぽかーんとして春樹を見上げた。


「オネエでもいいなら彼女にしてあげる。」


えええええええええ?!

なにそれー。

まさかの突然の告白成功ですか?!


「え?え?」


驚きすぎて他に言葉が出てこない。


「よろしくね、利香。」


そう言って春樹は私ににっこり微笑んでくれた。


き、気絶してもいいですか?

もう、いっぱいいっぱいです!!







私が、動揺しすぎてまともに喋れなくなったのでとりあえず家に戻る事にした。


リビングのソファに座らせて、コーヒーをいれてくれたけど、いまだに私は呆然としている。


「大丈夫?落ち着いた?」


本当にこの人気が利くよねえ。

彼氏ってか、彼女にしたいタイプですよねー。

っていうか、春樹と付き合うとこの人彼女になるのか?彼氏でいいのか?!


…。なんて現実逃避してみた。


「人の顔ジロジロ見てなに考えてるの?」


突っ込まれてしまった…。

変なこと考えるとすぐばれちゃうんだよねー。


「いやさあ、春樹って彼女なのか彼氏なのかどっちなのかなーとか。」


正直にいってみた。


「…。相変わらずバカね…。」


思いっきりため息を突かれてしまった。


「いや、ってかさ、本気なの?」


「本気って何が?」


聞き返された。


「いや…だからその…彼女にしてくれるとか。」


うおー、恥ずかしい。

顔から火を吹きそうだ。


「冗談なの?」


だから聞き返さないでください。


「冗談じゃないけど…。」


私はモゴモゴと答えた。


「なら、そのつもりよ?」


あっさりと言われてしまった。

本当にあっさりすぎて逆に色気ナシ。


そもそもこの人私のこと異性だと思ってたのか?!


「えっと、今更なんですが、オッケーの理由をお聞かせいただきたく…。」


緊張のあまり敬語になってしまった。


私の言葉に春樹は吹き出した。

失礼だな…。


「理由ねえ…。

一緒に暮らしていても楽しいし、オネエなのも知ってるし、まあ理由をあげたらきりがないけど。」


春樹は言う。

嬉しいけど、そんな理由でいいのか??


「それに、私は女性に対して何とも思わないので、利香を傷つけたりする心配もないしね。」


「へ?」


なんか今、さらっとすごいセリフが聞こえたような??


「女性に対して何とも思わないって?」


私はびっくりして聞き返した。


「男が好きって訳じゃないんだけど、女の子に対しても何とも思わなくてね。

そうじゃなかったら、さすがに幼馴染みだって、二年以上も一緒に住める訳ないでしょ?」


春樹はさらっとすごい事をカミングアウトしてくれた…。


まあ、多分信用してくれてるからさらっと言ってくれたんだろうけどね。


「えっとつまり、女性に興味がないので、私に手を出したりする事もないから安心して付き合えるわよとそういうことでしょうか。」


またまた敬語になってしまった。


「そういうことね。

だから、利香にちゃんと好きな人が出来て、その人と付き合いたいと思うまではいいかなと思って。」


春樹は言った。


「わ、私は春樹が好きなんだよ?」


思わず言ってしまった。

この鈍いオネエな男、まっったく私の気持ちに気づいてないし!


「私も好きよ。」


あっさり言われてしまった。

通じてねぇぇぇ。


泣きたい。

オッケーもらってるのに泣きたい!!


「そもそもなんで女の子に興味がなくなったの?

中学生の頃、好きな子いたじゃん。」


気を取りなおして聞いてみる。


「え、なんで知ってるの?」


ちょっと驚いている。

そりゃずっと好きで見ていたからわかりますよ…。


「いや、なんでかはこの際良くない?」


かなり脱力しつつ答えた。


「まあ、そうね。

ちょっと高校時代にいろいろあってね…。

ダメになっちゃったのよ。」


少し困った顔をして言った。


そんなにダメになっちゃうくらいなんだからきっとよっぽど辛いことがあったんだろう…。


「そっか。

私に触られたりするのは嫌とかじゃない?」


私は言った。

何があったかなんかは聞く必要もない。

春樹も話したければ話すだろう。


でも、私がダメかどうかは知りたかった。


「利香のそういうところが好きよ。」


春樹は微笑んだ。


「どういうとこだ?

ってか質問の答えを言いなさい。」


「興味本意で踏み込まないところよ。」


ほうほうそうですか。


「いや、そっちはいいから質問に答えてよ。重要なことだよ?」


ちょっと怒った顔をして言ってみる。


「大丈夫よ。」


利香が言った途端、私は春樹を抱きしめた。


「利香?」


春樹の驚いた声が聞こえる。

でも、ちゃんと私を抱きしめてくれる。

異性と思ってくれてなくても本当に大事に思ってくれてる。


「春樹、辛いことがたくさんあったんだね。

その時もこうやってそばにいたかったよ。

こうやってぎゅーってして、守ってあげたかったよ。」


私は春樹を抱きしめたままいった。

言いながらこみ上げてきて、気付いたら泣いていた。


「守ってくれたの?

私より小さい利香が?」


春樹のクスクス笑う声が聞こえる。


「そうだよ?

春樹は女の子みたいだから、私が男の子みたいでちょうどいいでしょ?」


「そうねぇ。

あの頃、利香がいてくれたらよかったかもしれないわね。」


春樹はそう言ってくれた。

実際そばにいても何もしてあげれなかったかもしれないけど、それでもそばにいたかったよ。



こうな風に傷ついている春樹には、きっと私の気持ちは重すぎてまだ言えない。


きっと聞いたら気持ちには答えられないと離れていってしまうだろう…。


今はこうして、そばに寄り添って、春樹の心を少しでも癒せたらいいな。


よし、頑張るぞ!

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