十三話目
春樹とまた一緒にいれることになったけど、そのためには就職を決めて無事修了しなきゃいけない。
春樹の言った通り、就職はありがたいことにたくさんの内定を頂いた。
あとは論文だけなんだけど、これが半端ない…。
毎日地獄のようです、マジで。
ちなみに私が博士の方に進まない事にはかなり驚かれひき止められた。
親しい人達はみんなこのまま進むようだ。
さすがだよね。
ちなみに、大須賀さんは相変わらず時々送ってくれたりするけどとくになんも進展なし!
さすが私。
普通なら彼に迫られ、焦った春樹が自分の気持ちに気付く!
ってのが王道だと思うんだけどねー。
いや、もしかしたら大須賀さんは春香さんを狙っているというパターンもあるな。
なんというか、女として負けてる感が…。
そんなこんなで私は二年生になり、季節はそろそろ春を迎えようとしていた。
もうすぐ学生生活も終わりなんだなあ。
春樹と私は、都内の企業に勤務することになり少し広めの家に引っ越す予定だ。
ご近所さんも突然春樹が男になったらびっくりするしね。
やっぱり同じ家には住めないよね。
ちなみに違う会社なんだけど、お互い品川に勤務することになったので、その近辺にしようかと思っている。
家賃が高い地域だけど、二人で分割するので結構いいところに住めたりするのだ。
2LDKで17万くらいなので、一人ではとても払えないけど二人なら楽ちん。
春樹と一緒にいられる上に安くなるのでいいことづくめ!
ちなみに春樹がうるさいの古くてもいいから、オートロックで駅から徒歩5分以内らしい。
すっかり過保護になり、まるでお母さんのようだ。
これが同棲だったら嬉しいのになあ!
最近はまるで姉妹!
兄と妹設定ならまだいけそうなんだけど、姉妹は無理すぎるー。
ま、そんな訳で私たちは物件探しに不動産に来ていた。
うん、実は初めての二人でのお出かけなんだ。
でも、全くデート感がないのは横にいるのが女装の春樹だからですかね…。
でも、一緒に家探しなんて新婚さんみたいじゃない?
なんてルンルンしていたのは最初だけ…。
「うーん、この辺は人通りが少なくて夜物騒ね、やめましょ。」
ネットで探して、実際に物件を見学に来ているんだけど、春樹はさっきからこんな感じだ。
家の間取りは気に入ったけど実際に見てみると環境が気に入らないらしい。
最初は、綺麗な春樹にニコニコしていた営業さんも、だんだん顔がひきつってきている。
春樹が厳しいせいで家賃は少しずつ上がっていき20万までいってしまった。
あの…私毎月10万も払えませんが…。
そして、最後に見せてもらった物件が品川駅から徒歩6分で駅からスロープでつながっているという素敵物件だった。
「ここなら、帰り道も安心ね。」
やっと春樹も満足したようだ。
営業さんも、ほっとしたように汗を拭いている。
「でも、中を見てみないとまだわからないわね。」
ごもっともですが、私も営業さんも、ぐったりです。
なんとか春樹についていくと、なんとまあエントランスにはコンシェルジュさんはいるし、お部屋もめっちゃオシャレ。
広いリビングを挟んで洋室があるのでプライバシーもバッチリだ。
「利香、ここいいんじゃない?」
春樹が笑顔で聞いてくる。
「確かに素敵だよなあ。
でも、やち…。」
「そうよね、ここにしましょ。」
でも、家賃が…と言おうとした途中でさえぎられ春樹はさっさと決めてしまった。
営業さんはやっと決まって安心しているが、私は安心できません。
ちなみに、礼金が40万とか学生に払えるかっちゅーの!
「あ、あの春樹さん?
敷金礼金がかなりの金額なんですが…。
それに、家賃も予算オーバーだよ。」
恐る恐る春樹に言う。
ちなみに偽名で家は借りられないから、ちゃんと本名を名乗っている。
まあ春樹っていう名前の女性だと思われてるっぽいけど…。
「大丈夫よ、アルバイトしたお金があるし。」
春樹はにこっと笑って言った。
えええ?!
払ってくれるの?
「利香は優秀だからそのくらいすぐに稼げるようになるわよ。
出世払いでいいからね。
お互いバリバリ働きましょ。」
信頼感たっぷりの笑顔。
信頼してくれるのは嬉しいけどなんか違う…。
まあ、そんなことだろうと思ったけどさ。
馬車馬のように働けってか。
まあ、頑張るつもりだったけどさ。
院まで行ったって、初任給なんて大したことないんですよ?
春樹はかなりの企業に行くのでやっぱり多いんだねー。
「は、はい、頑張ります…。」
そんなわけで私たちは、社会人一年目だというのに、かなり豪華な家に住むことになった。
洋服買ったり遊びに行くお金残らないだろうな…。
まあ、学生時代も毎日勉強ばかりでほとんど遊ぶ事なんてなかったな…。
社会人になったら、ちょっとオシャレして、リア充しようかと思ってたのに!
くそう、春樹め。
まあ、家は素敵だけどね!