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幼馴染みはオネエになりました   作者: 桜井 沙羅
12/24

十二話目

さてはて、学会が終わったので就活をはじめなければならない。


というか、少し出遅れた感…。



私は修士二年だけのつもりで、博士には進まない予定なので、一年ちょっと後には就職しなければならない。



うーん、春樹はどうするつもりなのかなー。


さすがに春樹と同じ会社を追いかけて行くのは無理そうだけどね。


それに、希望出してもお互いどこが受かるかわかんないしなー。


基本都内だろうから、都内の会社を探せばなんとかなるかな。


…はっ。

普通に追いかけて行くつもりで考えてたわ。


私ストーカー気質があるのか?!


やだなあ、怖いなあ。



とりあえずちゃんと卒業しないとね。

卒業論文地獄だー。





「利香は進路どうするの?」


なんて考えていたら逆に聞かれてしまった。


「えっと、このまま博士の方には進まないで就職するつもりだよ。」


もう自分の中で決めてた事なので答える。


「そうなのね。

私もこのまま就職の予定よ。」


「え?そうなの?

あんなに優秀なのに。」


ちょっと意外だった。

春樹は本当に優秀だから、なんだかもったいない気がした。


博士の方に進まれちゃうともう完全に追いかけてはいけなそうだけどね。


「さすがに博士まで進んじゃうと逆に就職先が限られちゃうのよね。」


「なるほど、確かに。」


博士まで行っちゃうと現役でも26歳。

若くなくなっちゃう。

しかも、そこまで極めてる人間は企業も使いにくそうだよねー。


「まあ、春樹なら余裕そうだね。

日本に就職するつもりあるの?」


さりげなく聞いてみる。

でかした、私!


「そうね。日本の企業に勤めるつもりよ。」


「そうなんだ?

春樹は海外行っちゃうのかと思った。」


その格好だと、日本より海外のがやりやそうだし…。


「日本食が食べれないのがつらいわ。」


えっと、そんな理由?

春樹ほど優秀な人間がそんな理由で進路決めるってなんかもったいないような…。


「利香こそ海外の方が仕事たくさんありそうよね。

多分引く手あまたかもしれないわよ?」


なんて、びっくりするようなことを言われてしまった。


「えええー?!

そんなことないよー!

英語もそんなにわかんないしね。

成績も必死に頑張ってもそこそこしかいかないからねー。」


私は手をふって言った。


「まわりの比べる相手がレベル高すぎるのよ。

あなたの論文見たりだとか、勉強の態度見てて思ったけど、かなり優秀で努力家なのね。

評価もかなり高いだろうから就職活動しなくても、声がかかるかもしれないわよ。」


ほ、褒めすぎ。

今日はなんの日だ。

でも、私は海外には行くつもりはないのだ。


「でも、海外に行っちゃうと春樹と一緒にいれなくなっちゃうし…。」


あまりに褒められたものだから、ついぽろっと言ってしまった。


「…。」


春樹は私の言葉に黙りこんでしまった。


深い意味はなく、普通に思った事言っちゃったけど引いちゃったかなあ。


大体そんなことで進路決めるなんて…。って怒られそうだし、なんで一緒にいたいの?とか思われそう。

自分のこと好きなわけ?とか思われちゃうかなー。


「バカじゃないの?

そんなことで大事な進路決めるなんて。」


やっぱり言われてしまった。


春樹はとっても努力家さん。

そして、頑張る人が大好き。


私みたいな考え方は嫌いだろう…。


でも、しょうがないじゃん?

小学生の頃からずっと、もう23歳を過ぎたと言うのに春樹だけなんだもん。


珍しく女の子みたいに涙が出そうになってしまった。


「何泣いてるの。

私別に女の涙に弱くないからね。」


普通だとここでびっくりして優しくしてくれたりして発展するとこかもしれないけど、私たちに関してはあり得ませんでした。


大体小学生の頃は泣いたりしてたから今更だしね。



そう思ったら、突然なんだか無性にもっともっと春樹に近づきたくなってしまった。


こんな風に一緒に暮らしていても、私たちは友達なんだ。


多分春樹は私がお互い、春樹のこと、女友達としてしか見てないと思ってる。


というか、もう心は女の子なのかもしれない。


私はそういう関係で満足していると思っていた。


でも、やっぱりそうじゃなかった。

私は春樹ともっと寄り添いたい。


自分で見ないふりしていた。


だって、私がずっと好きだなんてバレたら一緒になんて暮らしていけないもんね。


「利香、さすがに泣きすぎ。」


気づいたらポロポロと涙をこぼしていたらしい。

春樹がタオルを渡してくれた。


せめてふいてくれたらいいのに。


でも、私たちはそんな関係じゃないもんね…。


「一緒にいたら、ダメ?」


タオルでごしごし顔をふきながら聞いてみる。


「…。」


また黙ってしまった。

頑張って聞いてみたのに。


「利香、そういうのは男の前では言うものじゃないわ。

もっとも私のことは男だと思ってないのかもしれないけど。」


困ったような顔をして春樹は言った。


思ってないわけないし!

っていうか、春樹以外の前で言うかっちゅーの!


こいつこそ、バカじゃないのと言ってやりたい。


「ばーかばーか。」


おっと、口に出ていた。


私の言葉に春樹はかなりムッとした顔をした。


「ひっぱたくわよ?」


恐ろしい顔で言われてしまった…。


「それより、返事。」


そんな春樹をスルーして私は言った。


「今回は仕方なかったけれど、やっぱりこうやって一緒にいるのは良くないと思うわよ。

私は、卒業したら引っ越すつもりでいたけど…。」


春樹はかなり困ったように言う。


「何がよくないの?

今までだってうまくやってきたじゃん。」


私は春樹の態度に悲しくなった。

心配してくれているのはわかるけど、でも突き放されているようで。


「就職したら、女の子の格好しているわけにはいかないのよ。

男の格好に戻って暮らさないといけないのよ。」


諭すように言ってくる。


「それの何がダメなの?

春樹の迷惑になる?」


「私じゃなくて、利香が困る事になるの。

若い女の子が男と暮らしているなんて悪く思われるし、将来結婚も難しくなるわよ。」


なんであんたに結婚の心配されなきゃいけないんだ!


春樹の優しさなのはわかるけど、余計なお世話だよ。


「結婚なんてしなくていいの!

大体できないかもしれないし。

相手もいないもん。」


そもそも好きな相手がオネエだしね!

結婚できる可能性はかなり低そう…。


「そこまで力説しなくても…。」


春樹はちょっと笑いを噛み殺してる。

笑うとこですか?


「私のことは置いといて、春樹はなんか問題あるの?」


「うーん、そうねえ…。

私にも恋人できなくなるんじゃないの?」


笑ってます。

笑いを我慢出来なくなったらしい。


がーん、確かにそうですよね。

ちなみに恋人にしたい性別はどっちなんですか?!


聞きたいけど聞けない。


「あー、そうだったね。

それは考えてなかったよー。」


私は頭を抱えて言った。

ってか、女の私と住んでて出来ないってことは、やっぱり相手は女の子かな?

やったー!


でも、相手は私じゃないんですよねー。


そんな私に春樹はゲラゲラ笑ってます。


「あなたってほんと、面白いわよね。

子供の頃からそうだったけど、全然変わってないのね。」


か、変わってませんか?

私、さっきから結構切実なんですが、春樹はやたらに楽しそうだ。


これが惚れた女と、友達としか思っていない男との差ってやつですかね!


「た、多少は大人になったもん。」


ダメージを受けつつなんとか答えるとまたもや笑われてしまった。


「ああ、面白かった。」


笑いすぎて出た涙をぬぐいながら春樹は言うと私を見て微笑んだ。


「…。」


笑われすぎた私は春樹をぶすっとして見といてあげた。


全くダメージ受けてなさそうだけどね!


「そんな顔しないの。

本当に子供みたいね。」


嫌味みたいなセリフだけど、あんまりにも春樹が優しく笑うものだから怒りも飛んでいってしまった。


「利香は本当に何も聞かないのね。」


そして、春樹はぽつりとつぶやいた。


「聞くって?」


「この格好、驚いたでしょう?

なのに、利香は最初からすぐに私だと気づいて何も聞かず普通に接してくれたわよね。」


「そりゃ、春樹だもん。

気付くに決まってるじゃんねー。

態度だって、今更変えようがないじゃん?

しゃべると昔に戻っちゃうんだもん。」


春樹は春樹だもんね。

どんな姿だって、好きで仕方ないんだもん。


ま、これは言えないけどさ。


「子供の頃はわからなかったけど、大人になってあなたの素直さは貴重ね。」


そういって春樹は初めて私の頭をなでてくれた。


私、もう死んでもいいです!


いや、嘘だけど。


猛烈に照れました。


「卒業しても、勤務地がお互い近ければまた、一緒に暮らしましょ。

利香に好きな相手ができるまではそばにいるわ。」


春樹は優しく言ってくれた。


好きな人は昔からずっといるけどね!


「うわーん。」


私は泣きながら春樹に飛びつこうとした。


が、さっさと避けられた。


ここはバグしてくれてもよくない?!

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