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幼馴染みはオネエになりました   作者: 桜井 沙羅
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プロローグ

「利香、利香じゃない?」


夏休みで帰省していて、地元の駅前でぶらぶらしていた私に後ろからそんな言葉がかけられた。



振り返った私の目に飛び込んで来たのは、色白で黒髪がキレイな清楚な女の子だった。


「 え? あなたは…。」


そんな彼女の姿を見て私は、そう言ったまましばらく次のセリフがでてこなかった 。







幼馴染みっていうとなんだか甘そうな響きがしたり、なんだかんだいっても仲がいいんでしょ?

なあんて思われがちだけど、私と春樹はそんなステキな関係ではなかったと思う。



春樹とは、小学校六年間たまたまクラスがずっと一緒だっただけで、親同士が仲良しだったわけでも、小さい頃お互いが好きだった。みたいな甘い設定もない。



本当にただの幼馴染み。



たまたま、中学時代もクラスが同じになり、たまに話すくらいの関係ではあったけど、決して仲良しって関係にはならないまま、卒業してあっさり会うこともなくなった。



春樹は頭が良かったので県でトップ高に。



私は、そこそこのレベルの女子校へ。



バカみたいにずっと同じクラスだった9年間がウソみたいに、全く会わなくなった。



ところで、なんで私がこんな大して仲良くもないたんなる幼馴染みの一人である春樹についてくどくどと説明しているかというと…。



それは、私がどうしようもなく、なんの理由もなく、ただ、ただ彼が好きで好きでどうしようもなかったから。



だからこそ、他の同級生の誰もがすぐには絶対わからないだろう彼女の正体が私には決して間違いようがない。


「は、春樹…。 春樹だよね?」


目を丸くしてつぶやく私に、少し驚いた顔をして、彼女…彼はに言った。


「久し振りね、利香。懐かしくてつい声をかけちゃったわ。」


なあんて、私より遥かに女性らしい顔で微笑んで。





結局、あのあとドラマや漫画みたいにお茶に行ったりだとか、飲みに行ったりなんてあるはずもなく、数分立ち話をして別れた。



もちろんLINEの交換やらなんてものもなく…。






「うわーーん。せっかく最近ようやく薄れてきてたのにーーー!!」


実家の自分の部屋に戻ると私は、大声でなげいた。


中学を卒業して5年。

その間一度も会うこともなく、でも、なかなか忘れられなくて、二十歳になろうと言うのに彼氏どころか、彼以外の人を好きになったこともないという有り様。


やっと最近、彼を想う日が減ってきたところだったのに、会ってしまった。


とんでもない格好をしていた彼に。


というか、完全に女性にしか見えない格好で、女性らしい話し方。


普通、冷めるよね?

冷めるないにしても、多少引いたりだとか、ちょっと見る目が変わったりだとかすると思うんだ…。



なのに…なのに私ったら、ふっつーーにときめいてしまった!


別に百合でもなんでもない、ちゃんと男の人が好きな私が、どうみても私より女子力の高い彼にめちゃめちゃときめいてしまったのである。



最近、少しずつ落ち着いてきていた彼への想いがものすごい勢いで私の心をいっぱいにする。



彼を好きになって10年。

どんな姿だって、どんな話し方だって、私は彼という人そのものが好きなんだと気づく。


それは、私にとってかなり衝撃的でツライ事だった…。



だって、彼は、明らかにオネエだったから…。


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