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序幕
「Νはまた現れた。しかも私達の力では勝てなかったGRASERを打ち負かし、再度姿を消した」
本郷は、メサイアのブリーフィングルームで、ゆっくりと息を吐き出した。彼女の見る先のモニターに、メサイアの他の隊員達も集中していた。戸ヶ崎を除けば、それぞれ表情は複雑だった。その理由は明らかだ。
「Νは死んでいなかったんですね」
木元が切り出した。どこか悔しげな表情をしている。
「ええ、死んでいなかった。そしてまた現れた」
本郷は、ΝとGRASERの戦闘シーンを何度も見返した事を思い浮かべないまでに考え込んでいた。彼女の決断が、今後のメサイアの動きを決めるからだ。
そして、本郷は自分に集まっている隊員達のオーラのような物の中に、異色が混じっている事を悩んでいた。戸ヶ崎伸司である。
彼の主張は簡単である。Νを仲間だと信じ込んでいるのだ。
「本郷隊長、お困りのようですね」
ブリーフィングルームの扉が開き、それまでモニターを見ていた隊員達が一斉にそちらを振り向いた。
片桐がそこに立っていた。