序幕
段々と季節も変わり、セミが鳴いていた声が薄れて来ていた。
この間にもプレデター、Ν、Ξとの戦闘は続いていた。Νは迷いを棄てたように、Ξを激しく攻めるようになった。だがしかし、ここぞの一撃が出せないでいた。
一方人々は、プレデターやΝやΞの事を略記憶せずに時を過ごしていた。まるで現実から眼を逸らすように、報道機関は単なる事故や事件と報告。プレデターを初めとするあらゆる特殊事情は省かれた。無論、襲撃を受けている間は話も変わる。襲われている瞬間はきっと恐怖を感じているに違いない。それはプレデターだろうが巨人達だろうが話は変わらない。だが忘れてしまうのだ。人間の防御策とは良く出来た物である。そういう面では、メサイアの面々の方が欠陥が有るのかもしれない。
戸ヶ崎は戦いが終わるたびに、勝沼の姿を探していた。だが、勝沼と出会える事は無かった。夏が終わりを告げようとする中、戸ヶ崎は勝沼の身体を心配していた。Ξの攻撃は冷酷で、勝沼本人にも大きなダメージを与えたに違い無いと戸ヶ崎は案じていたのだった。
そんな中、戸ヶ崎の心の支えは、郷野とのメールでのやり取りだった。下諏訪グリーフサポートセンターは順調に稼働しているらしい。この前の岐阜羽島での大火事(勿論真実は、DANGARUZOAやΞとの戦いである)で家族を失った人が訪れたり、スタッフとして働きたいと申する者も現われたり、地方紙では有るものの新聞に取り上げられたりと良い傾向である。戸ヶ崎は、郷野に会いたいと思っていた。病気なんて言うのも嘘で、本当はこういう少し臭い仕事をしていると伝えたかった。
だが無論、そんな物は認められなかった。戸ヶ崎はそれを戦わせるつもりすら起きない自分が、メサイアの犬に成り下がった事実を認めざるを得なかった。




