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詩集②

oneself.

作者: 桜ノ夜月

悩み、足掻いて見つけるものこそが『自分自身』だと、誰かが言う。



誰かのお陰で見つけられるものこそ、『自分自身』だと、誰かが言う。



果たして、それはどちらが正しいのだろうか。



僕にはそれが解らない。



『自分は自分』。



だから、自分に誇りを持ちなさい。



先生は、そう言うけれど。



数式の答えを頑張って解いても、それは遥か昔に誰かが解いたもので。



『僕』という『存在』が生まれてくることも、もしかしたらすでに確定していたことなのかも知れなくて。



『自分自身』。




それは、その名があるからこそ見えてくるものである。


『自分』って何だろう。


『私』って何だろう。


『僕』って何だろう。



―…誰がそれを決めたんだろう。



『僕』という存在が、『社会』という大きな渦に呑み込まれた時に、皆に僕の名を呼んで貰うために、『僕』は『桜ノ夜月』という名前を自分自身に与えたのだろう。


不確かな存在全てを把握するために、『学年』は在るのだろう。『年齢』はあるのだろう。


僕は、桜ノ夜月。


…だけど、僕は本当は『誰』なんだろう?


家族は僕を違う名で呼ぶ。


僕の『居場所』では、僕は『桜ノ夜月』になる。



―…『僕』という存在は、酷くあやふやだ。



不透明で、不明瞭な声が集まって、


『僕』


と名を呼ぶ。



優しい声が集まって、


『桜ノ夜月』


と、僕の名を呼ぶ。



その声で僕は、自分の存在を初めて『認識』するんだ。



手を伸ばして、足掻いた理由は


『僕を忘れて欲しくない』から。


最初に自分の名を名乗るのは


『僕の名を、呼んで欲しいから』。


oneself.


きっと、これが本当の『自分自身』だ。


桜ノ夜月は、弱虫だ。


僕自身も、弱虫だ。


だけど、思う。



―それでもいいじゃないか。



自分の存在さえも信じられない僕が


他人を信じられるわけがないのだから。



oneself.



性格の悪い僕も僕自身だ。



oneself.



醜く、汚い僕も僕自身だ。



oneself.



嘘つきな僕も僕自身だ。



oneself.



僕は、僕だ。



oneself.



だから、思う。



自分自身と言う存在は酷く儚くて。


まるで、何処かで見たお伽噺のようだ。


手を伸ばすと、するりと逃げて行くその姿は。



―…まるで、何処かのお伽噺で見たガラスの靴を落としたお姫様のようで。



ならば、それを追いかける僕は王子様なのだろう。



だから今日も、僕はガラスの靴を片手に探している。



あの日、するり、と逃げて行ったお姫様に扮した僕自身を。


優しくて醜い『桜ノ夜月』を。



―…そして、『僕自身』を。



もしも、この答えが見つかったら。


あの物語のお姫様と王子様みたいに、僕は僕自身を愛せるだろうか。


もしも、この答えが見つかったら。


『桜ノ夜月』は、笑ってくれるだろうか。


もしも、この答えが見つかったら。



―…『僕』と『桜ノ夜月』は、笑いあえるだろうか?



それは、誰も知らない。


それは、神様も解らない。



―…だけど。



きっと、これが『自分自身』だと


今は素直に、そう思うよ。



oneself.




焦らずに、ゆっくりと。


僕は僕を見つけに行こう。



oneself.




進め、自分自身。





感想、アドバイス等頂けましたらとても嬉しいです。

ここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました。

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