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金髪の君  作者: 壱菜
第一章
7/11

編入*4



3-Cと印字してあるプレートと、白く塗られたドア。

その先からは西山先生が声を張り上げ、静かになった教室がある。

通常通りに進むSHRに、ヤンチャな誰かが先生の話にツッコミを入れて先生に注意され、教室内が笑いに包まれるのを廊下で聞いていた。

その胸中は、羨ましいとか楽しそうだなとかは全くなく、緊張してこのまま私の存在を忘れてくれと思っていた—…が、そんなに甘くはない。


ガラッと開いた扉から担任が顔を出し、笑顔で手招きをする。

その笑顔に微笑みを返し、味方がいると心に少し余裕が出来た。


先生に促され、教壇に上がるまでに感じた視線の数。

痛いほど見つめられ、視線は自然と俯く。



「せんせーいっ!その子誰ぇー!!」


「もしかして転校生ー!?」


一人が声を出せば、様子を見ていた周りの生徒も声をあげる。

みんなが我先にと疑問をぶつけるが、言葉が混ざり聞き取れない。



「はいはい、静かに。今から紹介します。」


ピタリと静まった教室。

そろりと顔を上げ、興味津々と瞳を輝かせる沢山の生徒と目が合い、どこを見ればいいのか分からずまた顔を伏せた。



「じゃぁ、高橋さん自己紹介お願いね。」


黒板に"高橋 葵"と書かれた文字に、もう自己紹介いらないでしょ、なんて思ってもこの状況が回避出来るはずもない。


肩をトントンと数回叩かれ、それに押されるように顔を上げた。



「今日、編入してきました高橋葵です。よろしくお願いします。」


たったこれだけ。

たったこれだけの自己紹介。

それに比べ相手の反応は大きかった。



「やべぇー!めっちゃカワイイ!!」

「どこの高校から来たのー?」

「彼氏いるのー?」


「……はっ、えっ、あのっ」


——何故!?

緊張を通り越しての混乱。

質問内容は頭に入ってきたが、思考と口が動かない。



「ストーップ!!一気に質問したらわからないでしょ!質問ある人は挙手しなさい!!」


「はい!どこから来たんですかー?」


「えーっと…、イギリスから…」


「イギリスー!!帰国子女!?」


「あっ、でも中学は隣の市の東第三中でした。」


戸惑いつつもポンポンと会話は続く。



「はいはーい!その薄い青色の瞳はカラコンですかー??!」


「いえ…これは自前です…」


「まーじーでー!羨ましい!!」


まだ終わらない会話。

教室内の一部以外は全て天井へと手が真っ直ぐ伸びている。



「彼氏はー?いんのー?」


この質問にはガヤガヤと騒がしかった教室が怖い程の静寂に包まれた。

直ぐそこでゴクリっと唾を飲む音さえも響いて聞こえる程。



「………い……い…ません。」


声が震えていた。


「ラッキー!じゃぁさ、俺と付き合わない!?」


「……えっ?」


軽いノリでの告白に驚き、声の主を見ると…


ぎっ…銀髪!!?


机の上に腕を乗せて枕にし、その上に顎を乗せ、空いた手を顔の横で小さく振る彼の髪は日が当たりキラキラと輝いている。



「はいはい、告白は後で個人的にやってください。じゃぁ、高橋さんは窓際の一番前ね。教科書は机の中に入れておいたから。」


「あっ、は、はい!ありがとうございますっ」


斑[まだら]になることなく綺麗に染まった髪を感心して見ている私は、先生に話しかけられ我に返る。

話が逸れたことに胸の中で安堵の溜め息を吐き、自分の席へと小走りで向かった。




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