まっ白いワンピース
まっ白いワンピースは、なんて怖いのかしら。
だって、知らない間に汚れやしないか、とても気になってしまうもの。
まっ白いワンピースに、染みがひとつ付くだけで、さあ大変。
そわそわ、そわそわ。そんなの嫌だわ。だから、わたし、まっ白いワンピースなんて、着ないの。
捨ててしまったわ。
わざと、生ごみの中に突っ込んで、汚して捨てたの。
まっ白いワンピースを。
チリひとつ落ちていない部屋なんて、我慢できないわ。
風呂釜の汚れひとつ浮いていない浴槽も、落ち着かないの。
汚れが見つかるまで、目を凝らしてしまう。見つかると、ほっとするわ。
つい最近、これ以上ないくらいに上手く仕上がった油絵も、太い刷毛で、大きく赤く、バッテンしたわ。
お向かいの家の紫陽花が、それはそれは可愛らしく咲いたの。いつ枯れるのかしら。
壊れやすいものは、先に壊したい。
無垢なものは、汚したい。
優しくされたら、傷つけたいの。
怖いのよ。
失望するのも、されるのも、怖いのよ
だからあなたを刺したの。殺したの。「きっと僕らうまくいく」なんて言うからよ。
待ってて。
あなたが繰り返し繰り返し「綺麗だね」と言ってくれたこの顔も、醜くなる前に、今、切り刻むから。
ただの身勝手な女ですね。
こんな詩(詩なのか?)ですが、作者は病んでるわけじゃないです。