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異世界でのこぼれ話 ② 母への手紙 ~ 薬について~





お母さんへ





そろそろ季節の変わり目となり、気温の変化も激しくなっている今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。




この世界に何の因果か、来てしまってからはや四日。


今まで日本を愛し、温泉を愛し、いくら同年代の友だちから枯れているといわれようともまったりゆったりを愛していた私に、サバイバル満点のこの生活は正直言って、心の休まる暇がありません。


今でもこれが夢なんじゃないかと甘い期待をしている次第です。


たまに小説を読みながら、または読んですぐに寝たときに、今まで読んでいた小説の世界が、脳の記憶整理という夢のかけらも無い世界に繁栄される時、眼が覚める直前であれば、多少自分の願いが反映されるようには行きません。

何より、読んだことも見たことも無い出来事が万歳過ぎて、もう若くない体はついていけそうに無いです。



軽く書いていますが、事態は深刻で、あなたの娘は今後どうなってしまうのか不安でいっぱいです。



もし夢なら、いつものように早く起こしてください。


今ならどんな起こし方をされても、感謝感激雨霰かんしゃかんげきあめあられです。



食事もおごりますし、親孝行もいたします。



何なら、百歩譲ってお見合いだって致しましょう。



あくまで致すだけですが・・・・。







この世界・・・めんどくさいんで『ここ』と言わせてもらいますが、ここは信じられないことばかりです。

自分の世界を正しいと盲目的に思っているわけではありません。


ただ、薬に虫を使用するのだけはいただけないと思うのです。

マムシ酒、イナゴの佃煮等々、確かにそちらにも虫を利用したものはありました。


ですが、虫をすりつぶしたものをひとの傷口に塗るのだけはどうしても抵抗があるのです。

もちろん経口薬として飲むのもごめんこうむりたいです。


始めは薬になった後のものを渡されており気づかなかったのですが、けが人が増えていくにつれ、在庫が無くなったのでしょう。

今では材料のみ渡され、作成からすることもしばしば。


手に残った虫をつぶす感触が気持ち悪くて、鳥肌が今も立っています。

ゴキブリを見ては悲鳴をあげ、赤とんぼがいれば和んでいた日々が懐かしいです。

繰り返しますが、ここに来てから4日目です。



そもそも、虫は突然の出現に悲鳴は上げますが、決して嫌いではありません。

好きでもないですが、眺められるくらいには関心もあります。



積極的に係わろうとは思いませんが・・・・。



自分が使っている肩の傷への軟膏に虫が使用されていないことを祈るばかりです。

早く怪我が治りますように。




最後に、この文章だけ読むと誤解をされそうなので書きますが、薬のすべてが虫ではありません。



ほとんどは薬草でできているようですが、何しろ使用量が多い上に、補充もままならないということで手に入りやすい虫で代用しているとのことでした。


まあ、なんにせよ薬が手に入るだけでありがたいことですね。



比べて日本は本当に恵まれています!!




なんだか変な話に終始してしまいましたが、今回はこの辺にしておきます。


そろそろ殿下の天幕へ行く時間になってきましたので。



では、体をご自愛して、長生きされてください。








                      決して書けない闇を抱えつつある娘より。

                         絶対に届かない手紙に希望を寄せて。






実際には書く余裕は無いので、時間が空いたときに、日本を偲ぶよすがとして、エミは呟きを手紙という形に言い直しているのだと思います。



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